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僕のコロナ記 3/31 現実に戻る 長野の桜

 3月29日に長野に戻ってから2日が経つ。4月2日に始まる予定の大学に少し気分が憂鬱になりながらも何もすることのない日々を静かに過ごしていた。こんな状況で本当に4月から、それも2日から学校が始まるのか。
 この日、あつまれどうぶつの森が届いた。どうぶつの森シリーズはやったことがなかったので最悪売り払えるようにパッケージ版を買ったのだが、その心配はなさそうだ。やってみてはじめて知ったがこのゲームは現実の世界と同じ時間を共有している。つまり遊んだ分だけ現実の時間をゲームの時間と置換しているようなもので、ここ数日でいえば僕はどうぶつの森に生きている。
 どうぶつの森に生きている自分にも現実があって腹は減り、眠くなるが現実はそれだけではなくコロナも少しずつ日常に近づいていた。
 ついに大学からメールが届く。件名に[重要]とついているメールはもれなく重要だが今回は特にそうだった。5月半ばまで授業の開始を延期するとのこと。僕がぎりぎりまで長野に戻らず、沖縄にいたのはこの授業開始延期を恐れていたからで、だからこそこの急な決定に戸惑うが、この急な決定が緊急性の証明でこの現実がリアルであると感ぜられた。
 父親と母親に大学の開始が遅れたことを電話で伝え、大学の友達とも少し話した。母親は案の定、沖縄に戻って来いというが長野から沖縄はあまりにも遠いうえに東京か名古屋か経由しないと帰ることはできない。できることなら僕も帰りたいがそれ以上にコロナを誰かにうつしてしまうことがこわくて決断できなかった。母親とは子を心配するもので、僕には単純にそれが嬉しかった。父方のいとこはイギリスで医療に携わっているのだがしばらく前に働いている病院でコロナによる死者が出たという。マスクをして顔の前を透明なフィルムで覆ういとこの写真をみて文字通り他人事ではないと感じる。友達の知り合いの働く居酒屋では経営が危うく、バイト代も7万円ほど滞納されていると聞いた。こんなにも日常のステージの上で、ダイレクトに影響が出るものかと少し怖くなった。
 長野でも少し寒さが和らぎ、桜も咲き始めていた。僕の住むアパートの窓から見るアルプスの雪も気づけば少なくなっている。季節は完全に春になるが世間は騒がしくも街はいつも以上に静かだった。

写真は去年の桜

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