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海辺にて

大きな音がする。波の音、空の音、大気の音。

小さな音もする。波に隠れた、しぶきの一つひとつ。空にとけこむ風の音。大気に紛れた、息の音。

光を宿した太陽の音。海はそれをうつす静かな鏡。ゆらゆら揺れて、光も一緒に瞬いている。

海と空と、大気の間に立っている、私は苦しい。

大きな音が群がって、まるで四面楚歌だ。

小さな音を聞き逃してしまう、私は無力だ。

呼吸ばかりが絶え間なく満ちている、この世界は息苦しい。

陽の光と海だけが自由に見える。

伊豆半島の山々は、もう少しで雲に触れそうだ。

海辺に立った私の不自由は、砂ばかりを弄んでいる。


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