見出し画像

平和を奏でたチェリストの、未だ揺れる祖国


12月29日。偉大なるチェロ奏者 パブロ・カザルスの生誕日に寄せて、今年一年の自分、チェロ奏者としての自分を振り返っている。

思いを馳せる相手が偉大過ぎる故か。
自身に対し、「ふがいない」という言葉ばかりが次々に溢れ出てくる……

ただ、ひとつ。
未だ安定とは無縁であるわが岐路の、その迷いや不安の中で。
今までの自分では抱いたことのなかった感情を知ることもあった。

それが音楽に活きるかは、これからの私次第ではあるが……。演奏に心をのせてゆくかぎり、なにかしらの糧とはなるだろう。


その、カザルスについて。
この文章を執筆してから、もう2年が経った。


彼の故郷、カタルーニャに現在もおこる独立運動。
先の文に記した2017年10月の「独立宣言」は、署名まで至ったものの宣言は保留とされ、同月の末日にスペイン高等裁判所により無効を宣言されている。


意見は様々だ。

彼ら民族が独自に持つ、言語や文化への弾圧の歴史。
近年に起こる、中央政府によるカタルーニャへの軽視的発言と税金問題。
独立運動が2010年代に再び盛んとなった起因は、このことが関係している。

しかしその反面、独立によって余儀なくされるEU離脱への示唆により、銀行や企業は次々と州外へと移転を続け、国際社会からの反応も冷ややかである。

この一連の運動は、遡れば数百年にわたる。
そして2019年も終わりを迎えんとするこの、たった今現在でも。
彼の祖国では、独立に向けた幾度にもわたる投票とデモ行進が行われ
「亡命」や「反逆罪」という言葉が飛び交っている。


私の故郷カタルーニャの鳥は
"Peace, Peace" (平和、平和) と鳴くのです


カザルスの残したこの言葉の深さと重みを、改めておもう。


画像1


P.S.
朝からずっと、カザルスの残した名演の数々を流し続けている。

彼の演奏で有名なのは、やはり国連やホワイトハウスで演奏した「鳥の歌」

そして、カザルス自身が楽譜店で埋もれていた譜面を発掘し、繰り返し演奏することで再び光を当てた曲ーー「バッハ作曲 無伴奏チェロ組曲」だろう。後の世、この楽曲はチェリストたちの聖書とまで言わ占める存在となり、その事はカザルスの功績の一つとなっている。

しかし私のお気に入りは、カザルスの唸り声からはじまる「シューマン作曲 チェロ協奏曲」である。

まだ聴いたことのない方は、ぜひ、この機会に御一聴を。

最後までお読みいただきありがとうございます! 自分の文章や演奏に反応いただけることは最上の喜びです。 気に入っていただけましたら、ぜひ『サポート』を宜しくお願い致します。頂いたサポートは、今後の活動費用に使わせていただきたいと思っております。 フォローやコメントも大歓迎です!