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0円の記〜沈没家族という映画を見た

 来年は台湾や韓国に行ってみたい。まだ私は海外へ行ったことがなくて、仕事の連休も取れなさそうなだから、たぶん行けてもせいぜい沖縄くらいで、なんやかんや云いながら海外旅行せぬまま死ぬんだろうなとずっと考えてたのだけど、関空から沖縄も関空から台湾も大して距離は変らなくて、仕事も頼めば3連休くらいはとれるかもで、ネットで飛行機の値段とか調べると国内便よりぜんぜん安くて便数も多く、職場のパートさんに聞いたら台湾だったら日帰りとかでも充分もと取れた感じするよとのこと。3~4万くらいあったら2泊3日行けそうなので、じゃあもう誰も止める人いないし、年明けて直ぐにでも台湾に行ってみようと勢いついて、まずはパスポート!と思い申請に必要な戸籍謄本を加古川市民センターへ貰いに行ったら、本籍地が大阪市のままだった。なぜ本籍が大阪なのかというと16年前に婚姻届を大阪で出したからで、頼めば郵送で取り寄せることも出来るらしいけど、また近いうちに大阪へ出る機会もあるかなと思って、なにかついでの用事が出来るのを待つことにした。ていうかなんか婚姻届出したんだなってことを今改めて振り返ると懐かしく感じる。そんな時代もあったのだ。

 ツイッターを観てると吹田の男女共同参画センターで「沈没家族」と云うドキュメンタリー映画の無料上映会のお知らせが流れてて、丁度仕事休みの日やし、沈没てなんやろ?と面白く思ってメールで参加希望を申し込んだ。この前わたしも家族を沈没させてまいそうだったというか、一人逸れて勝手に溺れ死にしそうだったので、映画の中でどこかの知らない家族が沈没するシーンが見れたら、ちょっと愉快かもねのついでに扇町の区役所に戸籍謄本取りにいけそう。

 JR吹田駅で下りるのは初めてで、駅からすぐ目の前にアサヒビールの大きな工場があって、少し先の丘の上には大阪大学のデカい建物も見える。アサヒビールみたいな大きな会社の工場で働くってどんな感じなんだろう。大きなものに守られてる感じするのかな。自分が働く場所が自分に安心をもたらしてくれるなんて実は素晴らしいことだと思う。アサヒビール、永遠に。

 参画センター2階の視聴覚室に到着。係の人も合わせて50人くらいと一緒に沈没家族を鑑賞する。映画はプロジェクター使っての上映だったので画面が小さかったり、部屋も薄明かるいままだったので映像が薄く、最初はそんな些細なことも気になってたけど、映画が面白かったのですぐ集中できた。

 映画は加納土さんと云う男の子が大学の卒業制作で監督したドキュメンタリーで、監督が子供時代を過ごした「沈没家族」という共同保育のグループに関わった人や母親へのインタビューとか交えて振り返る内容だった。監督のお母さんは加納穂子さんという方で見ためのインパクトがよかった。観た瞬間に原一男監督の「極私的エロス・恋歌1974」の武田美由紀さんに似てるなと思った。「極私的エロス~」の武田美由紀さんがどんなキャラクターかを簡単に説明する文章力が自分にはないのだけど、重信房子と瀬戸内寂聴と森三中の大島さん足して割ったような感じで、沖縄に駐留してる黒人米兵の赤ちゃんを自力出産するから原監督に撮影頼むわなみたいな革命家気質が姿や立ち振る舞いにも表れてる感じで、映画「沈没家族」中で振り返る20代の加納穂子さんも結構革命家っぽい面構えをしておられた。加納穂子さんは面構えだけじゃなく子育ても革命的で、22才のとき生後8ヶ月の息子(土さん)を連れて離婚し、シングルマザーになってからビラとか蒔いて一緒に保育してくれる人を募り、何十人の若者を巻き込んで皆で子育てするみたいな感じで、その集まりを「沈没家族」と名付けた。「沈没」は自虐的な意味なのかと思ってたら、当時のテレビで「夫婦別姓になったら日本も終わり」と政治家が言うてうのを聞いて、じゃあ沈没すればいいじゃんという意味で付けたらしく、好感もてた。

 沈没家族が活動を始めたのが90年代中頃の東中野で、ちょうど自分もその時期に東中野のアパートに下宿してたので、見覚えのある風景が映画の中で結構出てきて懐かしかった。たまに行ってた「森林」ていうラーメン屋も出てきた。沈没家族に集まってた若者の写真とか見てると、なんかあんな格好した若者がよーけおったような気がした。私は捻くれて孤独な下宿生だったので、群れてる大学生とかフーテンみたいなノリの若者にかなり反感持っていた。その名残もあってか映画でかつての沈没家族メンバーのインタビューを聞いてると、なんか寒い喋り方する人らやなと途中からだんだん面白く無くなってきた。昔からなぜか芋煮会みたいなノリがスゲい嫌いで、なんでそんなに嫌いかっていうと寄せてもらえなかったのが一番の原因なのだけど、田舎から出てきて中央線沿線で愚図愚図しながら貧乏と寂しさ寄せ合って風呂も入らんとセックスしてるような連中ロクでもネェ、群れるやつは何やったってアナーキーとは認めんぞ、わしゃ、って大学の校舎の隅で一人怒っていたように思い返すが、やっぱただの童貞の妬みかな。大学何年かの時にユーロスペースで見た「鬼畜大宴会」で、私の嫌いな芋煮会が全員自滅していく姿を見て、スゲい爽快な気分だったけど、かなりグロく肉片飛び散るので、しばらく豚肉が食えんかった。

 映画が終盤に差し掛かり、なんかなぁ、若気のいたりを振り返る映画かなぁ、思ってたら離婚したお父さんが出てきて、そこから一気に内容が立体的になり面白くなった。お父さんが出てきてやっとテーマが「家族」になった。芋煮会のメンバーからすると、お父さんがすごくまともに見えた。お父さんは山くんという方で、山くんは芋煮会の人らと比べれば古い日本の神経質なお父さんぽくもあり、しかし離婚とそれはあまり関係ないような感じで、やっぱお母さんがあまりに先進的でお父さんにはついていけなかったんだろうなと思った。ていうか誰もあんな嫁さんについていけんわと男なら大体思うと思う。で、その「ついていけん感」が大体のお父さんの未熟さなんだと思う。山くんは嫁さんと息子と自分と三人で昔ながらの、けどちょっとパンクで楽しい家庭を築くつもるつもりでいたんだろう。しかしお母さんは革命家だし、ほとんどの家庭で子供が生まれると家族の主導権はお母さんと子供なので、大体お父さんはハブられてしまうことが多く、私も波に乗れないままのお父さんだし、身の回りの同年代のお父さんもみんな似たようなことを話す。まあ自分に関しては被害者っぽくイジケてないで、己から波にぶち当たって行けよ!とも思うんですが、頑張ります。

 山くんのおかげで吹田まで映画見に来てよかったなと思った。映画に限っていえば愛情表現が不器用な方が感動を呼ぶのだ。映画見終わったあと電車で扇町まで行き、役所で戸籍謄本をもらう。結婚記念日がいつなのかずっとあいまいなままだったけど戸籍謄本を見ると2月6日だった。

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播州スラッジフォークと銘打って自分探しのグレイトジャーニー https://www.kanikoosen.com/
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