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ワイナミョイネンの仮想工房

 思ったよりも重たい反動を感じながら、僕は拳銃を握りしめた。手元から放たれた弾は、魔法のように目の前の化け物の眉間を貫く。

 「どうじゃ。わしの鍛えた武器は」口調に似合わぬ可愛らしい声が、僕の後ろから聞こえてきた。声の主は、黒いドレスを着た小さな女の子。「悪性思考を仕留めるのは、同じく思考から産み出された力のみ」

 少女が「悪性思考」だという、その四足歩行の人面の怪物は、どこか見覚えのある顔立ちをしていた。僕は、小学校時代の教師の、その冷たいグレーの瞳を思い出し、そしてすぐに記憶から振り払った。なおも起き上がろうとする化け物は、少女の援護射撃に倒れ、そのまま動かなくなった。

 「ここはおぬしの心の中の世界。その武器はお前の心を守る杖じゃ。ゆめゆめ鍛錬を忘れるでないぞ」僕はまだ手の中の拳銃を握りしめていた。少女の輪郭がぼやける。視界が光に包まれてゆく……

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 僕は、病室の白いベッドで目を覚ました。

【続く】

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