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修論プレゼン道場(オンライン版)

はじめに

WBSでは、修士論文を提出した後は、審査会があります。夜間主総合の場合は公開審査会なので、多くの聴衆の前で自分の研究を発表します。一般的に、日本の人はプレゼンテーションが本当に下手で、プレゼンテーションを聞くのは、忍耐力を養う苦行のように思うことが多々あります。

MBAの学生には、ぜひ優れたプレゼンテーションとは何かをしっかり学んで欲しい。そのために、この修士論文を提出してから、公開審査会までに間に真剣に良いプレゼンとは何か、を身につけて欲しいと思っています。

僕がWBSに赴任してから教員のロールモデルのお一人は入山さんなのですが、入山ゼミのプレゼンのレベルはとても高くて、さすが入山さん、と思ったのです。なので、ゼミの1期生のときに、入山さんに、ぜひ入山さんのプレゼン重視の方針パクらせてください、とお伝えして、うちのゼミでもしっかりやることにしました。

どんな研究もdeliverして、相手に伝えないと価値がないんです。そしてどうやったらそれがうまく伝えられるかを考えるのは、聞く側ではなく、話す側の責任です。少なくとも、米国のアカデミアはこのことに徹底的にこだわる。その米国で学んできた手法をしっかり身につけてもらいたいと思うのです。

特に今年は、COVID-19の影響で、オンラインでの公開審査会。でも、これは、これからの新しい形として、プレゼンテーションのやり方を学ぶとても良いチャンスだとも思っています。

毎年同じことをいうのも効率が良くないので、ゼミでのプログラムをもう少しシステム化しようと思っていて、なるべくコア・コンテンツをまとめておくようにしています。

ということで、このプレゼンテーションの準備のための事前課題は、ゼミ生へ向けたものなのですが、せっかくなのでその内容自体を公開して、WBS全体のプレゼンレベルがあがるように、参考にしてみていただければと思っています。そして、今の日本のCOVID-19の状況を考えれば、アカデミックな場でのプレゼンテーションのtipsは、この時期、結構ニーズが高いのではないかと思ったのです。

プレゼンテーションの基礎

イノベーションに関わっている人たちにとって、今やNarrativeやStorytellingは必須のツールになっていると思います。Narrativeをきちんと伝えるためのプレゼンテーション、この分野の第一人者を探していると行き着くのは、Nancy Duarteです。彼女は、アルゴアの「不都合な真実」を監修していたことでも知られ、シリコンバレーでも、主要な企業が彼女にコンサルを頼んでいます。

https://en.wikipedia.org/wiki/Nancy_Duarte

まずは彼女のTED Talkを観て、プレゼンテーションをデザインするにあたって考えないといけない要素をつかんで下さい。

その上で、以下のTED Talkを観て、なぜこのTED Talkは優れているのか、自分の修士論文に活用できそうなtipsのリストを作ってみて下さい。その上で、自分のプレゼンテーションの構成を考えてみて下さい。

オンライン化の準備

プレゼンテーションをオンラインで行うためにはいくつかのtipsがあります。まず、以下のコラムを参考に、プレゼンテーションの準備を行って下さい。このコラムは、春クオーターの「科学技術とアントレプレナーシップ」の授業における履修者間のノウハウをベースに、石倉さんがまとめて下さったものです。

もっと具体的には、以下のことを1回目のプレゼン練習までに準備しておいて下さい。

・オンラインのプレゼンでも抑揚は大事です。そのためには、座っていてはできません。必ず立って、プレゼンテーションができるように、机の配置などを準備して下さい。机の上に段ボールをおいて、その上にPCを置く、といったことで構いません。
・インタラクティブにするには、プレゼンテーションのスライドと、Zoomのギャラリービューが両方見えるように2画面がないといけません。安物でも良いので、二つ目のディスプレイを購入しておいて下さい。ギャラリービューで視聴者の顔を観て、反応をみながら、プレゼンテーションを行うことはマストです。Zoomのいくつかのウィンドウについて、ベストポジションが何かを考えて、画面のスクリーンショットをとって、必ずその配置で良いかを指導教員に確認して下さい。
・ディスプレイが二つある場合、パワーポイントとZoom本体のウィンドウが置かれている場所によって、パワーポイントのページめくりが反映されない、ということがおきがちなので、必ず事前にチェックをしましょう。
・カメラ目線になるように、カメラの位置を調整して、ベストポジションを探して下さい。また、顔だけではなく、上半身がうつるようにして、ジェスチャーなどが伝わるような配置に。
・バーチャル背景は、きちんと選ばないと、プレゼンターの顔が暗く見えてしまいます。自分の顔がもっともはっきり映る背景を選んで下さい。バーチャル背景は使わない方が、良い場合も多いです。
・Zoomでの画面は、教室のスクリーンよりも小さいので、小さな文字が観づらくなります。文字のサイズを30ポイント以上にしましょう。
・Zoomは視聴者によっては、スライドの右上に、顔の画像が表示されるので、右上には大事な情報を配置しないようにします。
・ネットが不安定になったときのために、予備にスマートフォンからもログインしておき、いざ回線がきれたときはスマフォからプレゼンを続けられるようなバックアップ体制を用意しておきましょう。予備機は自分のパワーポイントが適切に表示されているかを確認する上でも有益です。またいざネット自体が落ちたときのために、携帯からダイアルインで入れるように、ダイアルインアクセス用の電話番号を、紙に書いて手元においておきましょう。

例えば、外付けディスプレイとして、以下のようなものを購入しておくと便利です。

https://amzn.to/3s6wHhy

プレゼン準備にあたってのTips

以下の点については、第1回目の練習で対応できるように、可能な限り準備をしておいて下さい。

・プレゼンテーションの最初の10秒はめちゃくちゃ大切です。最初の10秒だけはオーディエンスはみんな聞いてくれていますが、その10秒がつまらなければ、それ以降は聞いてもらえなくなります。最初の10秒で、聴衆全員に興味を持ってもらう一言を考えて、それからプレゼンをスタートして下さい。最悪のスタートは、「これからプレゼンをはじめます」、「私は◯◯と申します」。聴衆は、これからプレゼンが始まることは知っているから情報量ゼロだし、発表者の名前になんて興味はない。全員が聞いてくれるもっとも大事な10秒をそんな形で無駄遣いしないように。
・同様に最後の一言もとても重要です。インパクトに残る、キラー・エンディングの一言は何かを考えて下さい。
・プレゼンテーションの順番は、最初に結論から入った方が分かりやすい場合もあります。日本人は結論は最後に言わないといけないと思っていることが多いですが、「古畑任三郎方式」のプレゼンもありえます。つまり、最初に結論をいって、そのメカニズムを話していくような形です。定量研究はその方が分かりやすいことが多いです。
・最後のスライドは、「ご静聴ありがとうございました」など、本論と関係ない内容にしない方が良いです。なぜならば、最後のスライドは、プレゼンテーションが終わっても、そのまま表示されている、聴衆にもっとも長い時間観てもらえるスライドだからです。ここにまとめなどを書いておくと良いです。またコメンテータも、質問が思いつかないときなどは、この最後のスライドを観ながら質問考えることが多いので、まとめのスライドを入れておくことで、より良い質問を受けられる可能性があがります。
・スライドにはページ番号を必ず入れておいて下さい。コメンテーターが質問するときに、どのページにいって欲しいかの指示が出しやすくなり、時間が有効に使えます。ちなみに、パワーポイントは、プレゼンテーション表示のときに、「10 + リターンキー」と押すと自動的に10ページに移動しますから、ページ移動の時間を節約できます。
・定量研究の場合、回帰分析の結果の表は全てを載せないように。細かい表を短期間でオーディエンスが読み取ることは不可能です。有意差が出た項目、自分が言葉で説明する重要な変数の行だけを選んでスライドに入れましょう。細かいテーブルなどは、配布用のスライドに入れて、事前に配りましょう。
・発表資料を事前に配っておくと、聴衆により理解してもらえますが、プレゼンテーションで使う資料と入れるべき内容は異なります。特に、回帰分析の図表などは、事前配布の発表資料には入れて、配布しておくと良いですが、プレゼン資料では要約のみを入れた方が良いです。
・15分のプレゼンでは、聴衆は、今全体の中でどの位置について話しているのかを見失いがちです。最初に全体の流れを説明して、プレゼンの中でも、今どこを話しているかをスライドでわかるように工夫した方が良いです。特にあとどのくらいで終わるのか、ということがわかるようにした方が集中力持って聞いてもらえます。
・抑揚や間の取り方はとても重要です。どのスライドのどの内容で、抑揚をつけたり、間を入れたりするのか、事前に考えておいて下さい。
・最初の1ページが、タイトルページである必要はありません。最初の1ページはプレゼンを始まる前の時間を含めて比較的長く表示されています。タイトルや名前ではなく、インパクトのある写真や図表などを入れて、プレゼンテーションに興味を持ってもらうようなスライドにする方法もあります。
・聴衆には色々な属性の人がいます。その中でもプライマリーなオーディエンスが誰かを考えておきましょう。なお、修士論文の公開審査会においては、プライマリーな・オーディエンスは主査ではなく、副査です。副査にしっかり伝わるプレゼンテーションになることを最優先にしましょう。

アカデミックなプレゼンテーションでの心構え

アカデミックな場のプレゼンテーションであっても、退屈では聞いてもらえませんから、聴衆を魅了する工夫は極めて重要です。でも、プレゼンテーションは研究の中身を説明することが目的であって、プレゼンテーションのスキルで誤魔化すものではありません。自分のやったことをきちんと時間の範囲内でしっかり話すことを最優先にして下さい。

以下のTED Talkを観て、自分のプレゼンテーションが、パフォーマンスに走ってないか、自省してみましょう。中身がなくても、もっともらしく見えるプレゼンはできてしまうのですが、それは大学でのプレゼンテーションで目指すべきものではないはずです。

プレゼンテーションを継続的にブラッシュアップしていくために

1回目のプレゼンテーションの準備が終わったら、「プレゼンテーション・パターン: 創造を誘発する表現のヒント」を良く読んで、自省してみましょう。また相互に発表練習するときは、この「プレパタ」を活用して、相互に批評してみましょう。この「パターン・ランゲージ」を活用することで、より改善点が明確になり、また批判的なことも言いやすくなります。ゼミでは、この「プレパタ」を活用して、相互にプレゼンを批評しますので、1回目の発表の前に、この33のルールに目を通しておいて下さい。

更に学習したい人のために

プレゼンテーションを更に学びたいと思う人におすすめの本をご紹介しておきます。



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