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ひりつく胸の奥で響く声 『さらざんまい』

軽い気持ちで観始めたら、空が白んでいた。
前情報は全くなしに、Twitterが警官2人の呟きにざわついた時に目にはしていたけど、さほど気にしていなかった。たまたま長い移動時間があったから、Netflixに上がっていたから、舞台が台東区だったから、観た。

いわゆる「イクニ作品」には触れたことが無かったから、すべてが新鮮だった。戸惑いの1話目。電車の中で観てしまった。うっかりしたな。マスクほしい。謎の疾走感。うん、多分これハマっちゃう。
わからなくて、わかりたくて追い求めるように2話3話と観進めていく。
あー最後まで観ちゃった。なにこれ、いいじゃん。

面白さがどこにあるのか、目の前で何が繰り広げられているのか、わかりそうでわからない。みんなきっとわかってないかもしれないし、わかることはそんなに重要でもないのかも。

ふとした思いつきで世田谷から自転車と自分の足だけで、新宿へ向かったあの夜。何するでもなくわたしたちは、歩いた。歌舞伎町を。西新宿を。
熱心に何かを話してたはずなのに、何もかも空っぽ。無意味に笑いたててもこの街ではすぐに溶けていく。電車はもうとっくに終わってる時間なのに。
わたしたちはあのときお互いに一人ぼっちだった。あなたは誰にもつながれなくて、わたしはあなたにつながれなくて。

つながることを強く強く求めているのに。つながれば、窮屈で泣きたくなる。

つながりたくて、ひりひりする。
つながれなくて、ひりひりする。

ある夏の夜には缶チューハイ片手に上野から浅草まで散歩をした。新しいも古めかしいも雑多な街並みをするすると通り抜けていく。
もし、あの道からゾンビが出てきたらどうする?なに使って戦う?どこに逃げる?
夏の暑さと喉に張り付くアルコールの熱さで答えなんてろくに聞かずに歩く。
おんぶしてもらったり、おんぶさせられたり戯れあいながら、かっぱ橋道具街通りを闊歩した。

いつもベッドの上でろくに会話すらしないか、ありふれたサラリーマンのように居酒屋で熱っぽく語るのをビールで流し込むかだったから、こんな無為な時間、泣きたくなる。

つながってられればそれでよかったのに。
結局わたしとあなたはつながらなかったみたい。

つながりたいって?どこがつながればよかったんだろう。

わたしの欲望は?
あなたたちを近くに感じていたかった。わたしを近くに感じてほしかった。理解したかった。理解してほしかった。

わたしは欲しいものを欲しい時にちゃんと手を伸ばさなかったから、つながれなかった。
ほんとうは誰もわかってくれなくても、あなたたちがよかった。

わかったよ。僕が選ぶんだ。僕は僕の選んだものを信じるよ。大切な人がいるから悲しくなったり嬉しくなったりするんだね。そうやって僕たちは繋がっているんだね。

春河の言うことやっとわかるかも。
やっとわたしが選ぶものを大切につなげたい。

「それでも愛してた。」あの頃のことはそれでいい。またね。


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