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短歌

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#挽歌

短歌 #37 散る

短歌 #37 散る

悲しいことがあっても開かないし雲散霧消したし卒アルは

この夏の記憶は散ったキンカンも灼けるアスファルトの匂いもなし

体から立ち上る湯気冷ましつつ目蓋の皮膚の薄さを思う

散逸と散会と散る花びらとどれがいちばんこよないものか

さいはての前人未踏の場所に咲く見たこともない百合が満開

Kくんのこと

Kくんのこと

白き顔埋める花は降り積もる雪になりけり君の記憶も

大学1年の5月。初めてのクラスコンパで仲良くなったKくん。眼鏡男子で色白で細くて吹奏楽部でドラムを叩いていた。私と誕生日が近かった。私がフュージョンを聴くよって言ったら、その日コンパの帰りすぐにCDを自宅アパートに取りに行ってくれて、即座に貸してくれた。T-SQUAREだった……と思う。

素朴な話ぶりの彼は山形出身だった。
誕生日が近い人達で合

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