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お供えものの決まり事

 皆さん、こんにちは。本日はお彼岸の入りということで皆さんのご自宅のご仏壇にも沢山のお供え物があげられていることと思います。そんなお彼岸のお供え物と言えば、真っ先にぼた餅が思い浮かびます。改めて考えますと、一つの食べ物を春には「牡丹餅(ぼた餅)」、秋には「御萩(おはぎ)」とその季節の花に見立てて、呼び方を変えるというのは大変風情がありますね。この辺りは日本人の情緒が表れているのだろうと思いますので、大切にしていきたいものです。

お供えものの共通点

 さて、このようにご仏壇には、ぼた餅を筆頭にお花、果物、精進料理のお膳とお供えされます。それぞれ別々の種類のものに見えますが、この中に一つ共通点があるのをお気づきでしょうか。それは、お供えされているものは

「生き物ではない」

という点です。なぜ、そのようになっているのか。そこにはお釈迦様の信念、モットーがあります。
 

仏教はインド発

 仏教が日本に伝わったのは飛鳥時代のことで、かれこれ1500年ほど経つことになります。長い時間をかけて仏教は日本に馴染み、私たちの習俗に深く入り込んでいきました。その証拠に私たちが話す日本語には、「四苦八苦」、「挨拶」、「縁起」、「玄関」など仏教に由来を持つ言葉が数えられないほどあります。あまりに馴染んでいるので、日本人の私たちはついつい忘れてしまうのですが、仏教はそもそもインドで始まりました。そのため、仏教やお釈迦様の考え方には当時のインドを背景にしたものが多くあるのです。

インド人の常識 

 お釈迦様が生まれた当時のインドにはバラモン教という宗教があり、これは現在のヒンズー教の基になる宗教です。日本人にとっての宗教は、「一部の人々のみが信じているもの」が連想されると思いますが、バラモン教の教えは当時のインド人みんなが信じていました。言い換えると、みんなが承認していたという事で、それを私たちは「常識」と呼びます。つまり、バラモン教の教えは、そのままインド人の「常識」だったという事です。

 例えば、現代の科学では、「宇宙はビックバンという現象が起こって誕生した」というのが定説です。一方、バラモン教では、「宇宙は梵天という神様が作ったのだ」と考え、インド人にとってはそれが常識でした。鼻で笑う方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの現代人だってビックバンを観測したわけでもないし、計算したわけでもないですよね。偉い科学者の先生たちがそう言って、教科書でそのように習ったから、「なるほど。」と納得しているに過ぎません。それと同じで当時の偉いバラモン教のお坊さんたちが、「宇宙は梵天様が作ったのだ。」というと、みんな「なるほど。梵天さんは偉いんだな。」と思ったわけです。

動物供犠に対する批判

 このように、インドにはバラモン教の教えに基づいた独特な(現代の日本人から見れば)常識が数多く残されていました。ただ、中にはどう見ても不当なものも含まれていました。そういうものに対して、「それは違うのではないか。」と疑義を呈したのがお釈迦様であります。その一つが行事の度に動物を殺して神様にお供えとして捧げる「動物供犠」という習慣に対する批判です。経典には次のようなエピソードが記されます。

 あるとき、コーサラ国のパセーナディ王が行事のために、二千もの動物を供犠のために用意していました。それを聞いたお釈迦様は下記のような偈を唱えて王を諫めます。

献馬祭に、献人祭 棒擲げ祭に、ソーマ祭 さては無遮会とくさぐさの供犠はあれども利益はない 山羊だ、羊だ、また牛と ただ殺戮をこととして犠牲をそなえる祭には 正道をゆく大聖はゆかない 山羊も、羊も、また牛も 殺さるることあらずして つねに行なう供犠にこそ 正道をゆく大聖はゆけ かかる供犠には大果あり その司祭者もめぐまれて これぞすぐれた供犠なれと 諸天も賞賛するならん 【出典:阿含経典 増谷文雄】

このように、動物を殺してお供えすることを戒める文はお経の中に繰り返し出てきます。つまり、これはお釈迦様にとって譲ることのできない一線だったのです。これをご覧頂ければ、仏教が花など生き物でないものをお供えする理由がお分かり頂けるかと思います。稀に、それをご存知ないがために法事などの際にお刺身の入った折箱などがお供えしてあることがありますが、これはお釈迦様のモットーからすると逸れてしまいますのでお控え頂ければと思います。

最後に

 供養は形ではなく、「気持ちが大事」だと言われます。それはとてもよく分かります。ただ、一方で、私たちは心で思ったこと(気持ち)を言葉と行いで表します。つまり、お釈迦様や亡くなった方々に対する私たちの気持ちがお供えものという形で表されているということです。是非、折に触れて、皆さんのお気持ちを内に秘めたままでなく、形として表して頂きたいと思います。

#仏教 #彼岸 #お供え

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臨済宗妙心寺派長寿寺住職。仏教に興味がある方や初心の方に向けて「仏教のいろは」を発信していきます。