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「本当に好きなことを仕事にしない方がいい」という言葉をもう一度考え直してみる

少し前までのわたしは、「本当に好きなことを仕事にしない方がいい」という言葉に反発していた。そんなことない。好きなことは仕事にしたほうがどっぷりと携われて幸せだし、何をやっても仕事というのはしんどいのだから好きなことじゃないと続かないし、何よりわたしは好きなこと=文章を書くことを仕事にできて幸せだ。

と、思っていた。

でも「好きなこと」をもう少し細かく見ていくと、書くことという大きなくくりでは何とか食べていける仕事になっているけれど、物語を紡ぐことというもっと細かいくくりでは、生活を成り立たせることはできていない。小説だけで生計を立てるなんて、芸能人としてテレビに出るなみに一部のトップレベルの人たちにしかありえないと思っている。つまりそこまでいかないと、自分の中で「仕事」として誇ることができない。

だから、このnoteをずっと読んでくれている奇特な方がいたら、うっすらおわかりかもしれないけれど、わたしはずっと、食えない小説家であることにうじうじコンプレックスを抱いているし、お仕事をいただいても他の仕事に比べて圧倒的に割に合わない(20倍くらい大変なのに)とグチグチ言っていたりする。

生活を支えるための仕事は、やりがいだけでは成り立たない。生活をするためには「自分の能力を効率よく使ってお金をたくさん稼げるか」という基準が必要で、それにやりがいとか倫理観とか人のつながりとかいろいろ加味しながら、仕事を取捨選択していく。その基準を適用すると、小説なんてもう落ちこぼれもいいとこ。一列に並べたら、姿が見えないくらい後ろのほうにいってしまう。それなのに、小説をそれらと同じ「仕事」の枠に入れて、横に置いといて、それだけならいいけど、今までのわたしは、ときどき「お前は稼がないなあ」とか「効率が悪いなあ」とか文句を言ったりため息をついたりしていたわけで。もしくは、なぜ小説はお金にならないんだろうと世の中を恨んでみたりして。

かわいそう!これってDVじゃない?不幸な家庭じゃない?小説を書くことは、わたしの生命の源なのに!何ならいま仕事ができているのは、ずっと小説を書いてきて文章力を磨いてきたおかげなのに!

最近わたしは「小説を書く」ことを仕事場からひょいとつまみ出して、遊び場に移動させてみた。つまり仕事ではなく趣味とカテゴライズすることにした。かっこよく言うと、ライスワークではなくライフワークなんだけど、それだと身構えてしまうから、趣味の方がいいのではないか。わたしの人生に必要だから、効率とかお金とか気にせず、好きなだけやればいいよと思った。

一生懸命やっていたら対価をくれる人もいるかもしれない。依頼をくれる人もいるかもしれない。もちろん、買って読んでくれる人もいる。でもそこでいただくお金は、仕事のお金と質が違う。お金ってすべてを均質にしてしまうけれど、4万円で記事を発注されるのに比べて、400円で電子書籍を買ってくれて読んでくれるのが、100分の1の価値しかないかといったら、絶対そんなことはない。わたしの魂にとっては、後者のほうが価値が高かったりする。

「本当に好きなこと」は誰に言われなくても、金銭的な見返りがなくても、勝手にどんどんやってしまうことなのだと思う。それって、わたしは小説を書くことだ。「仕事にしないほうがいい」というのは、たぶん言葉足らずで、仕事と同じ基準で考えない方がいいということなのかもしれない。どれだけ稼げるか基準にうっかりはまってしまって、その本当の価値――人生や自分にとって欠かせない大事な源泉であるということを見失ってしまうからかもしれない。

わたしはそうなっていた。小説家としてのわたしは、とてもみすぼらしくて価値が低くて社会のお荷物で、存在する意味なんてないんじゃないか、と、思っていた。

そこから解放してあげようと思った。好きなだけのびのびやったらいいし。できるわけないっていう人なんて気にせず、どれだけ稼げるかも気にしないで。

なんかね、人生100年時代でしょ。どれだけ稼ぐかという技術は65歳くらいまでしか通用しなくて、そこから先は自分の魂を喜ばせる技術を持っているかどうかが、大事になってくる気がするんだ。お金だけでなく人のつながりも大事になってくる。最後は助けられながら生きていくしかないから。

GoTo滑り込みというわけではないのだけど、先週、白浜旅行に行ってきました。スポーツバイクを輪行して現地は自転車移動。旅をしたらまた旅をしたくなる。旅とか買い物とか人に会うこととかおいしいものを食べるとか可愛い服を買うとか、楽しいことを我慢することはできるけど、我慢していると楽しいという記憶も消えていくのだと思った。

来年は仕事だけでなく、自分を楽しませることもたくさんしていきたいです。

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京都在住の小説家です。医学博士(京都大学)です。理系ライターもやっています。 お仕事や活動履歴などはHPにあります。 https://kanchikuizumi.amebaownd.com/