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「たぶん、私たちは、インターネットを、信じているのだ」 Code for Japan代表・関治之さんに、自由人博覧会前夜インタビュー。

モトヤフ(※元Yahoo! JAPAN)という共通点がある関さんとは、出会ってぽちぽち話して、5年くらい。兵庫県や神戸市の、データやインターネット関連プロジェクトで、よく一緒に委員や審査員になる。共通の友人たちとごはんを食べることもあるし、いろいろ相談をすることもある。

そんな関さんは、いま、東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトの立ち上げなどで、めっちゃ「時の人」だ。「日本のオードリー・タン」と言われることもある。それらの評価は、至極まっとうだと思う。一方で、関さんのひょうひょうとした身軽さや、明るさや、どこにも忖度しないラディカルさがいまいち伝わらないまま、単なる「ソーシャルで、デジタルな人」と思われていないかな? と、物足りなさも感じていた。

というわけで、来ていただくことにしました! 「自由人博覧会」に。時の人・関治之さんを丸裸にしちゃいます。で、すでに半裸にしてしまった? 事前インタビュー、よろしければどぞ!

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▶日本のオードリー・タン。SFとパンクのエンジニア。

いま“日本のオードリー・タン(※1)”と言われる、関治之さん。東京生まれの東京育ち。とくに貧乏でも金持ちでもなかった。ぼんやり、のんびり、育った……かもしれない。やりたいことも、なかった。将来の夢は、会社員。
「自分には特別なものがないこと」は、一時期、「逆コンプレックス」だった気がする。

・小学校時代、小説を読むのは好きだった、とくにSF。わけても、アシモフや星新一など古典やオリジナル。

・中学校時代、父にPCを買い与えられた。「つくる」喜びを知った。「何度も失敗するけど、やり直しも簡単にきく」エンジニアリングの世界を知った。

・高校時代、パンクにはまった。とくに、Nirvana。「あ、こんな下手くそでいいんだ」 衝撃だった。でも、聴けば聴くほど、すげえ。バンド活動にのめりこんだ……大学受験も忘れるほどに。

・滑り込んだ大学時代、エンジニアとしてアルバイトをしていたら、そちらが忙しくなったので、大学を辞めた。


そして、関治之の人生に、インターネットがやってくる。
エンジニアをしていた2000年頃から、本格的に、諸外国を含めたオープンソース開発プロジェクト(※2)にコミットしはじめた。インターネットに国境はない。
顔を見たこともない全世界にひろがる有志たちの試行錯誤で、大手企業が何千万円かかって開発して偉そうに売っているのと同じようなものが、まるでおもちゃを作るような楽しさのなかで、どんどんつくられていく。

見てみろ!ぼくたちは、つくることができる。
それはちょうど、SFみたいで、パンクみたいだった……のかもしれない。


▶それは、権力でなく自由。争いでなく平和。

そんな関さんと私の共通点はモトヤフ(※Yahoo! JAPAN元社員)ということ。……というのは半分冗談で、半分本気。そのせいかもしれないけど、私たちは、たぶん、インターネットを深く信じている。

1996年4月、私は、日本でヤフー・ジャパンが立ち上がる現場にいた(カウントダウンしたなあ)。その頃にはとっくにピーガラガラな通信(※3)をしていた関さんもまた、その後オープンソースのプロジェクトにかかわるという王道を経ながら、日本のインターネット界隈のフロントを歩み続けている。

そんな私たちが血肉化してしまったインターネットの本質。それは、「自律・分散・協調」だ。これまでの中央集権型とはまったく違う、自律分散型の社会。それは、権力でなくて自由。これまでの競争型とはまったく違う、協調型。それは、争いでなくて平和。


中央集権的なものは、もういいんじゃない?
誰かに言われたことに従って、わけわかんないことをやらされるのって、もうよくね?

みんなさ、好きなことやりゃいいじゃん。
人間がより幸せになる、新しい時代が始まったんだぜ!

20世紀末の日本にあった、あの高揚感、期待感。そして、実際に社会が大きく大きく変わっていくかんじ。そんなインターネットの可能性を、私たちは、まだまだ信じている。


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▶東日本大震災、新型コロナウイルス感染症。市民が力を合わせる場をつくる。

関さんは、東日本大震災を機に、日本でのオープンソースコミュニティづくりに立ち上がる。最初に手掛けたのは、被災地周辺の情報を収集して公開するプラットフォーム「sinsai.info」。未曽有の事態に情報が錯綜し、あらゆる現場が混乱するなかで、大きな話題を集めた。

その経験から、エンジニアがテクノロジーの力で地域課題を解決する市民参加型コミュニティ「Code for Japan」を立ち上げる。まさに自律・分散。なので、いまや全国に、その地域の名を関した「Code for ××」がある。

最近では、新型コロナウィルスという現場に直面するや、こちらもモトヤフの宮坂東京副知事とタッグを組んで「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」を立ち上げた。このサイトは、どの地域でも、有志がいれば、コピーして自分の地元バージョンを立ち上げることができる。今回は全国で、有志の中学生・高校生・高専生・大学生たちも立ち上がり、それぞれチームの中心となって、地域へ大きく貢献した。


関さんは、かつて自分が喜びと勇気と希望をもらった「オープンソース」を、日本中の地域に届け続けている。あらゆるところの人々に、「素材」と「やり方」を、「力」を提供する。

なんで?
だって、楽しいから。自分たちで、自分たちの人生を、くらしを、まちを、つくりあげていくことが。偉そうな奴らの言うこと、がまんしてきいてて、楽しい?


▶消費者に甘んじているだけでは、幸福度は上がらない。

いま、関さんがイヤーな気配がしているのは、「スマートシティ」という言葉。ドローン活用、自動運転、遠隔医療、まるでドラえもんの世界が実現する! なんて便利な世の中に!!

オケオケ、たしかに nice to have、あってもいいんじゃない?
でもそこに、幸せはある??

エンジニアは知っている。消費者に甘んじているだけでは、幸福度は上がらないことを。なぜなら消費者というのは、構造的にスポイルされるから。


まずは、自分たちのまちを、自分たちがどうしたいか、だ。歴史を振り返ってみたら、こういう文化がある。じゃあ自分たちはどういう役割を担っているから、そこからどういう未来をつくっていきたいよね。そういう、本当に大事なことを無視して「便利なまち」をつくったって、日本中が同じまちになってしまうだけだ。

ね、それって、幸せ? ね、そんなとこに、住みたい? ね、あなたは、楽しい? 


ちなみに、いまやIT界のカリスマとなった関治之だが、誰よりも関さんが「カリスマ」を否定する。個人に依存するのは、市民のリテラシー向上の妨げとなるから。多様性のなかで、誰もが「自分が楽しいと思うこと、幸せになること」をどんどんやっていく、主体的なクリエイターになるのが、関さんの夢。それはもう、SFではない時代になった。

次回の「自由人博覧会」では、これからのインターネットの可能性、何よりインターネットと共に生きる私たちの可能性を、関さんに伺います。withコロナの、いまだから、こそ。


※1 オードリー・タン:「天才プログラマとして知られる、台湾のデジタル担当大臣。
※2 オープンソース:著作権フリーで、みんなでつくりあげるプログラム。イメージでいうと、wikipediaのようなかんじ。
※3 ピーガラガラ:昔、電話回線と同じアナログ回線というものでネット接続していた時の音。たしか平日23時以降と土日祝日が接続し放題になったので、23時には全国のネットユーザーがピーガラガラやっていた。


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《2020年10月24日》「IT」からの自由/自由人博覧会 関治之さん(コード・フォー・ジャパン代表)

<日時> 2020年10月24日(土) 15:00~17:00
(※おやつタイムにつき、お酒やお茶などを楽しみながらやりましょう)
<参加費> 1,650円(税込み)
<お申し込み> https://coubic.com/lgaku/806939

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