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「好き」と「仕事」と「片思い」ー西表島で「あきない」を考えた。

(※リベルタ学舎のメルマガ「リベルタ自由つうしん」2019/12/30号に加筆)

2019年末、はじめて西表島へ行ってきました。人口約2,400。島の9割は亜熱帯のジャングル。そこは、タクシーがない、コンビニがない、生ごみの回収もない島でした。


▶魚を食べられる店が意外と少ない。

長崎生まれの私は、無類の魚好きです。西表でも、地元の方が薦める寿司店「初枝」へ、(ハブが出るという真っ暗な夜道を駆け抜けて)行き、たしかにむちゃくちゃ美味しい島魚のお刺身や島マース煮(塩味の煮つけ)をいただきました。そこで、板前さんが教えてくれたこと。

「これは全部、父が釣ってきた魚です。魚屋というのが、西表島にはないんです。なので、仕入れるということができない。だから魚はいっぱいいるんですが、魚を食べられる店が意外と少ないんですよね」

ガーン! ショックを受けました。そうか! これまで行っていた料理店って、食材はほとんど仕入れてる店だったんだ!! 
どちらかが良いとか間違っているとかではなく、「なるほどなぁ」。その場所、その環境に合わせた、「なりわい」の作り方があるんだ、と、あらためて気づかされました。


▶そんな寿司屋やガイドは、私、ぜったいに嫌だ。

西表島のツアーガイドさんたちとの話でも、それぞれ、島の豊かな自然という環境をバックグラウンドに、自分の「好き」を軸にして、仕事を組み立てられていることがわかりました。

シュノーケリングのガイドさんに「毎日同じ海を案内して飽きないですか?」と聞いたら「あきないですね~。僕は写真も好きなので」(※このページの写真です)。ジャングルトレッキングのガイドさんも「毎日同じルートでも、あきないですよ。自然は毎日姿を変えるので」。

おふたりとも、毎日大好きな島で、大好きなことをしている」感が、もりもり溢れていました。それが、まさに「あきない」になっている。
というか、本来、好きでもないことを、続けられないよね。仕事として「やらなきゃいけない」のだから、なおさら。誰だ? まだ「給料=我慢料」だと思ってるひと。そんな寿司屋やガイドは、私、ぜったいに嫌だ。


▶個人事業主の1年後廃業率は約6割。

ちなみに西表島には、毎年100人くらいが移住し、同じくらいが去っていくので、全体の人数はあまり変わらないそう。タイミングやいろいろで、島が住む人を選ぶ。1年後の定住率は50%以下ではないか、ということ。

実はこれ、「島」を「市場(マーケット)」と置き換えても同じかもしれません。個人事業主の1年後廃業率は約6割だそう。何か事業を始めて、それがいきなり大成功するとは限らない。でもそれは「負け」じゃない。

一歩踏み出して、現場に行って、初めて見えることがたくさんある。そしてその経験は、それはきっとあなたの人生を豊かにする(ただし経験上、借金だけはあまりすすめません。お金の問題はしんどいっす)。

「好きなことが、仕事になる」のは、いわば「私と市場の両想い」。これは奇跡かもしれないし、成立しても時間が経過すると関係が崩れてしまうかもしれない。でも、それでも、まずは「好きなことを、仕事にする!」という片思いからスタートしないと、両想いにはならない


▶何億円かを手放しちゃったじゃん。

「好きなことを仕事にする」のは、なかなかハードなこと。いちばん好きな人に告白するのと同じで、「フラれる」という事実を突きつけられる可能性も、もちろんある。だから、好きなことは趣味にしておく、というのも、選択肢のひとつ。ぜんぜんOK。

島で、中1ムスメに、初めて話しました。「おかーさんはね、ヤフーやめたときに、何億円かを手放しちゃったじゃん。もうそんだけ損しちゃったのなら、本当にいちばん好きなこと、それまで諦めてきたことをやってみようって、文章を書き始めたんだよ。小6の時の夢は、童話作家だったんだ」

失敗しても恥をかいてもいい。そう覚悟を決めて、24歳の私は、いちばん好きなことを仕事にしてみようとする「片思い」をスタートさせたのでした。最初に、自分の名前が活字になったとき、嬉しかったなあ。
そしていまだに、文章を書くことはいちばん大好きだし、止められてもやりたい……うん、たしかに、「あきない」だ。


▶「あなたにしかできない仕事」をつくる(しかない)。

いろんなものがない西表島は、でも「この豊かな自然で、自分の『好き』でなりわいをつくりたい」というひとたちの工夫に溢れていました。シュノーケルのガイドさんは大阪出身、トレッキングのガイドさんは滋賀出身、船浮集落のガイドさんは地元だけどモスクワに7年いて戻ってきた方。

西表島に行って元気になったのは、もちろん自然もあるけれど、「自分の仕事が好きでたまらない」ひとたちと、たくさん会えたからかもしれない。

すでにAIによる第4次産業革命後の世界を生きる私たち。さっきも書いたけど、「誰がやっても同じアウトプットなのだから、我慢してそこにいた時間の分だけ、我慢料としての給料ね」という仕事は、どんどん成立しなくなってきています。

「あなたにしかできない仕事」をつくる。これから本格化する「AI時代」にはそんな適応をしていかないと、なかなか生き抜きづらくなるのだと思う。好きで好きで仕方ないことなら、いっぱい工夫も生まれるので、いつかタイミングが合えば仕事になるかもしれないよ。


2020年も、元気出していこうぜ! 
リベルタ学舎、いつでも遊びに来てね。


湯川カナ
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生きる延びる知恵を高めるリベルタ学舎 / 兵庫県広報官
http://lgaku.com



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