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デザイナーが解説するNYのアートディレクション・トレンド2019

NYの美容業界でグラフィックデザイナーをしているKanaです。フォント・トレンド2019のnoteが(私の中で)好評だったので、2019年のアートディレクション・トレンドも振り返ります。アートディレクションとは、美術・芸術を用いた総合演出のことをいうのですが、実際には「モデルや商品を撮影するときの演出」という意味で使われていることが多いので、今回はその前提で紹介していきます。


トーン・オン・トーンで際立たせる

まずは日本未上陸のエッジの効いたビーガンコスメブランドMilkから。「トーン・オン・トーン」とは「トーンを重ねる」という意味で、同系色のを用いた配色のこと。質感や濃淡を変えることでデザインの奥行きとメリハリを出す。Milkでは、背景をメインの商品と揃えることで逆に商品の色を強く前面に押し出すことに成功している。

この手法は、白・黒・ベージュなどのベーシックな色で行うと高級感や洗練さを出すことができる。Milkのようにカラーバリエーションが豊富な商品を扱う場合も効果的で、インスタグラムのフィードでうるさくなりすぎず、すっきりと映える構図である。


ダイバーシティでミレニアルの心を掴む

年齢、性別、肌の色を越えて多様なモデルを起用した広告も2019年に多く見られた。私のnoteにも何回か登場しているGlossierは、ダイバーシティ(多様さ)広告の先駆けである。ターゲットを限定しないという企業理念と、それに基づいたリアルな広告が、結果的にミレニアル世代の心を掴んでいる。

上のインスタグラムにもあるFeeling like Glossierキャンペーンは全て「リアルな人々」に焦点が当てられ、「商品を超えて人々を繋げる感じ」がコアにある。このキャンペーンには様々な人種、性別、年齢、職業のユーザーが登場している。徹底的にナチュラルで作り込まない(ように見せた)写真が、ダイバーシティというテーマに合致している。


テクスチャーでミニマルに伝える商品の魅力

日本未上陸のジェンダーレス・ボディケアブランドのNecessaireから。テクスチャーのクローズアップも2019年のトレンドと言える。オンラインでの購買が増え、実際に触れたり匂いをを嗅いだりすることが難しくなった。そんな中にあって、少しでも商品を身近に感じてもらい、「商品そのもの」で勝負するという狙いがある。

更に、2019年は引き続き「ミニマル」=「必要最小限」がデザインのトレンドでもある。パッケージさえも排除して中身そのものだけにスポットを当てるという究極のミニマリズムがアートディレクションにも反映されている。


光と影が作り出す生感

ブルックリン発のプラントベース・ミールデリバリーサービスSakara Lifeから。自然光で撮影し、光と陰で写真を演出するディレクションは、ニューヨーカーのナチュラル志向と、インスタ映えの両方を叶えるディレクションとして2019年も大人気だった。自然光の良さは偶然が作り出したような揺らめく光の美しさだが、商品の色味などは正しく映らないことも多いので、公式ウェブサイトなどではスタジオ撮影の写真を使用するなど、用途によって使い分けることもある。

私自身、自社ブランドのインスタグラムの反応を見ると、スタジオ写真よりも圧倒的に「光と影」のレスポンスがいいと感じている。スタジオ写真は完璧だが「商用」感が強く出るので、よりパーソナルな繋がりを求めるソーシャルメディアでは「今そこで撮ったら上手に撮れた(本当はものすごい計算している)」生感が大切なのだ。


スーパー・ニートでギャップを演出する

ニートとは無職のことではなく「きちんとした、整った」という意味である。NY発のセレクトショップとしてスタートしたKITHは、有名人の愛用者も多くオリジナルアイテムも人気があるブランド。KITHでは商品を「ニートに」=「きっちり」と置いて魅せるディレクションを行なっている。ストリート系のアイテムをあえてきっちり整列させるギャップが印象的である。

スーパー・ニートは、シンプルな背景で行うことが多くアニメーションなどへの応用もしやすい。きちんと感がありながら、思わず「かわいい」と反応してしまう親しみやすさも持ち合わせたディレクションである。特にKITHのパーカのようにカラーバリエーションがあるアイテムと非常に相性が良い。


Photo courtesy: Working Not Working


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30歳でNYのParsons School of Designに留学。卒業後はNYの現地企業に就職し、美容業界でグラフィックデザイナー。留学から現地就職、デザイン、美容ウェルネスのトレンドをnoteにまとめています。
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