少年ジャンプで考える物語の4大テーマ
物語は、私は作者の思想が色濃く現れていくモノだと思っています。
それが名作を生み出す最大の必勝法だと思っていますし、全てのクリエイターはそうあるべきだと思っています。
私は、作者の性格によって、物語は、大きく分けて4通りのパターンに分類されると考えています。
イデオロギーが衝突する「王道」の物語。
唯一無二の勝利を目指す「覇道」の物語。
マイノリティが光り輝く「邪道」の物語。
完成された世界を目指す「求道」の物語。
ちなみに、この4パターンですが、ちょうどロシアの性格類型論「ソシオニクス」の4つのクアドラと合致していると考えています。
「正誤と良し悪し」で「可能性」を探る「アルファ・クアドラ」
「正誤と良し悪し」で「目標」を目指す「ベータ・クアドラ」
「優劣と好き嫌い」で「目標」を目指す「ガンマ・クアドラ」
「優劣と好き嫌い」で「可能性」を探る「デルタ・クアドラ」
私は、ゲームシナリオのプロットを書くときに、毎回同じパターンになってしまうことに思い悩んでいたのですが、その原因が「作者の性格が、物語の方向性を決めるから」という結論になりました。
ちょっと何言っているかわからないと思うので、ジャンプ作品を例にあげつつ簡単にご説明します。
イデオロギーが衝突する「王道」の物語。
(アルファ・クアドラ)
「鬼滅の刃」「キン肉マン」 など
物語の王道は、やはり、正義と悪の戦いだと思います。
「友情・努力・勝利」です。
ただこの、正義と悪の戦いというのは、結構難しいです。
物語の構造上、正義の理念、悪の理念が、勢力ごとに一貫している必要があるのですが、「理念」は勝敗に直結しません。
ですので、大抵の場合、正義側の理念は彼らの最大の「弱点」として、悪側の理念は彼らの最大の「欠陥」として描かれます。
これは、物語の構成を大きく縛ってしまう、かなり制限のある作劇です。
ですので、王道といいつつ、実はあまり存在しないタイプの物語です。
それゆえに、型にはまった時の爆発力はとんでもないです。
記録的な大ヒットと、歴史に名を残す名作として語られ続けます。
「生」に執着する鬼と「希望」を繋ぐ鬼殺隊。
このテーマに正面から挑んで、そして描き切った鬼滅の刃は、稀代の大傑作だと思います。
唯一無二の勝利を目指す「覇道」の物語。
(ベータ・クアドラ)
「ハイキュー」「黒子のバスケ」 など
唯一無二の勝利そんなのもあるの?
と、思われるかもしれませんが、とても身近にテーマがあります。
スポーツです。
スポーツは、明確に勝利があり、その最大目標に向かってあらゆるキャタクターが様々な手段を講じます。
このタイプの最大の特徴は、ルールがはっきりしている。
ことです。
このルールですが、言い方を変えると色々な物語が当てはまります。
「ルフィがひとつなぎの財宝を目指すワンピース」
「孫悟空が最強を目指すドラゴンボール」
正直な所、ジャンプの歴代ヒットマンガは、ほとんどここに該当すると思います。
ジャンプにおける真の王道は「覇道の物語」です。
マイノリティが光り輝く「邪道」の物語。
(ガンマ・クアドラ)
「僕のヒーローアカデミア」「デスノート」 など
持たざる者、はぐれものにスポットライトを当てたストーリーです。
梶原一騎先生が原作の「巨人の星」「あしたのジョー」など、60〜70年代の、劇画黎明期には、一番メジャーなジャンルだったと思います。
「スポーツだから、ベータ・クアドラじゃないの?」
と、突っ込まれそうですが、明確に違う場所があります。
それは、強者と弱者の物語、判官贔屓の物語である所です。
判官贔屓
「弱い立場に置かれている者に対しては、あえて冷静に理非曲直を正そうとしないで、同情を寄せてしまう」心理現象
今はあまり言われていませんが、一昔前までは、日本人は判官贔屓が大好きと言われていました。
日本が第二次世界大戦の敗戦国であること、そして戦中〜戦後を体験したクリエイターがマンガ業界を牽引していたことが、大きな理由の一つだと思います。
ちなみに、この邪道の物語、作劇としてはあまり長続きができない手法です。
マイノリティーに、光が当たり続けたら、それはマジョリティです。
安心院さんではありませんが、邪道の物語は10巻前後で終焉を迎えるか、他のタイプの物語へとシフトチェンジを行います。
「僕のヒーローアカデミア」では、最初は主人公のデクが担っていたこの要素を、今ではヴィランが担っており、ヒーローとヴィランの王道物語にシフトチェンジをしています。
完成された世界を目指す「求道」の物語。
(デルタ・クアドラ)
「食戟のソーマ」「ToLOVEる」 など
「求道」の物語の最大の特徴は、世界を救わないことです。
世界はすでに構築されており、その世界の中で、登場人物は、研鑽を積んだり、趣味に生きたり、恋愛をしたりします。
ジャンプ・・・というか、少年漫画には比較的少ないのですが、このタイプには、現在のマンガの一大派閥が存在します。
それが、
趣味×キャラ萌え
です。
身もふたも無いですが、そのテーマだけで、数多くの雑誌を出版なさっている会社もあります。
そもそも、少女漫画の大半は恋愛漫画ですし、マンガ界の最大派閥といってもいいと思います。
最後に
さて、長々とこんな記事を書いた理由ですが、それはズバリ、この記事を描きたかったからです。
アクタージュ は、稀代の傑作マンガになる・・・と思っていました・・・。
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。 サポート戴けたら、とてもとても喜びます。