静かな夜明けに、過去の日記を。
私はたまに、別の場所で書いている日記を見返すことがある。元々書いているところは完全に自分の身元が分かる場なので、すべての日記をここに明かすことはできないが、その中でも自分自身では大切にしたいものを選抜して今後も載っけて行くことにする。
『離れていく』
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数日前久しぶりにアイツにあった。
彼女は厳しい状況の中でも楽しみを見出して、仕事をしている。
どうしてあんなに積極的に仕事に慣れようと頑張れるのだろう。どうして、たった一日しかない休みを精一杯楽しめるのだろう。
彼女はぼんやりした存在だったのに、今は生き生きとしていて、それでいてクラゲのようにフワフワと日常を過ごしている。
それに前にも増して可愛くなった。綺麗にもなった。
その裏には何か辛いことを隠しているのだろうか。
よく分からない。
私は、死から遠ざかっていくアイツの後ろ姿を見ている。
私だけがここに取り残された。あの時のまま、まだ死を思っている。
死から遠ざかるのは世間的に良いことだ。喜ばしいことのハズだ。私は彼女が羨ましい。
だけど、どうしてだろう。
たった一人だけ、私のものに近い人生観を持って隣にいたはずのお前が、私を置いて前へ進んでいくのが悲しい。
あいつは友人とか相棒とか恋愛感情とか(だとしたら私はバイかよ)、その手の存在とはまた別だ。
確かにあいつは今も大切な友人だが、それ以上に私の中では自分がこうして息をする理由にもなり得る支えだった。
あいつが生きているなら、しょうがない。私も多少は生きてやるかとも考えていた。
そのバランスが少し崩れた。
お前は無理をするなと何度も真剣に私に言った。別に無理などしていない。むしろ怠惰だ。
優しいその言葉がやけに胸に沁みて、痛くて、別れるときはわざと明るい声で適当に返事をしたが、その顔を見ることさえ出来なかった。
あいつは前へと自分の足で歩み始めた。でも私は色んなものが纏わり付いて引きずられて、元々ふたり立っていたところからさらに暗いところへ近づいた。
離れていく。取り残されていく。
その事実が胸にこびり付いて、切なくなった。
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