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6月3日は「測量の日」

『道路での測量のお仕事! 誰でも資格なしで出来ます!』

◎道路での測量のお仕事です。測量機材を使いますが、機材の使用方法など先輩のスタッフがいるから安心丁寧にお教えします。

◎未経験者歓迎! 誰でもできる簡単なお仕事です。さぁ、あなたも明日から測量の仕事にチャレンジ!

◎詳しくは、GNH総合研究所まで、電話03-xxx-xxxx


測量って、あの道路でおじさんが望遠鏡みたいなの覗いているやつだよな。そうか、資格がなくてもできるもんなんだな。よし、応募してみようかな。そんな気楽な気持ちで、その測量の会社に応募してみた。

すると、案外簡単に面接をしてくれることになった。

当日、面接の部屋は会議室のようで、一人の面接官が目の前の長机に座っていた。恰好は作業着で、僕もこの仕事がはじまったら、あんな感じの恰好をするのかなと想像してみた。

「では、よろしくお願いしますね。面接官のカメダです」

「はい、よろしくお願いします」と急に声を出したもので、変な声になってしまった。

「えーっと、我が社は測量専門の会社ですが、測量ってご存じですか?」

「はい、えっと街中でよく見かける、土地の高低差や距離などを測ることですか?」想定内の質問にすらすらと答えることができた。

「はい、その通りです。大変お詳しくてらっしゃる。まぁ我が社の測量するものは、おっしゃったものとは少し違うんですけどね」

「は、はぁ」と微妙な返事をしてしまった。

「では次の質問です。あなたは今幸せですか?」

「……」え? と思い、言葉がでなかった。なんだその怪しい宗教みたいな質問は。やばいぞ、これは変な会社に来てしまったかもしれない。

そんなことを考えているのが顔に出たのか、少し笑顔でカメダさんは「あ、別に変な意味ではなくてですね、少し質問を変えましょう。幸せつまり、幸福とは誰がどのように判断しているのか? ということです」

「そうですね、自分で判断して幸福だと思っている……んだと思います」

「はい、皆さんだいたいそうおっしゃいます。しかし、幸福度は客観的な数値として測らなくてはいけないんです。GNHという言葉をご存じですか? 我が社の社名にも入っていますが、日本語で国民総幸福量といいます」

「国民総幸福量? 国民がどれくらい幸福かということですか?」

「そうです。もうお気づきかと思いますが、我が社は日本唯一の国民総幸福量を測量する専門の会社です」

その後のカメダさんの話では、街中にいる望遠鏡みたいなのを覗いているおじさん達の一定数は、国民総幸福量を測定しているようだ。そして、測量の結果を政府に報告し、時にはその数値により重要な政治判断のタイミングや、法案のタイミングも決まるそうだ。

そして今日も僕は、地味な作業着を着ながら、街中の幸福を測量している。

「あれ、昨日より数値が低いな」

6月3日は「測量の日」

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