9月27日は「世界観光の日」
「はい、では今日は教科書の23ページ。今は消えた言葉というのをみなさんで勉強していきましょう。それでは……イマイ君、例文の会話を読んでもらえるかしら」
先生に指名されたイマイ君は緊張気味に椅子から立ち上がり、教科書を読み始めた。
『今度、観光へ別の国に行くことになったんだ』
『へーそれは楽しみだね。飛行機でどれくらいかかるの?』
『そうだな、8時間くらいかな』
『そんなにかかるんだ! 世界って広いね』
『向こうに着いたら自由に羽を伸ばすんだ』
読み終えたイマイ君は安堵の表情で席についた。
「はい、イマイ君ありがとう。上手に読めました。では、今の会話から現在では消えた言葉がいくつかあります。分かる人は手を挙げて」
はいっはいっと教室からたくさんの手が上がった。
「それじゃ、アンドウさん。どの言葉か分かりますか」
「はい、観光だと思います」
自信満々にアンドウさんは答えた。
「はい、素晴らしい。正解です」
「では……他にわかる人は」
「はい、リュウくん」
「うーん、世界だと思います」
「はい、素晴らしい。正解です」
「もう一つ、消えた言葉があります。それでは……モモキさん」
「それは、自由だと思います」
「はい、素晴らしい。正解です」
そうして、先生は「観光」「世界」「自由」と黒板に書き、その上から大きく✖を書いた。
「皆さん。間違ってもこんな言葉を使ってはいけません。この言葉は昔の人たちが使っていた言葉です」
そして先生は最後に質問した。
「実はさっきの例文の会話の中に一つだけ現在も使われている言葉があります。皆さんもう変わるかな。じゃあ、せーので言ってみましょう」
「せーの」
「羽!」
「はい、正解です。今の時代は皆さんの背中に素敵な羽が生えているので、瞬時に好きなところに飛んでいくことができます。だから好きな時に好きなものが見られるので観光という言葉は消えました。同じく国境は意味をなさなくなったので、国という言葉は消えました。そして、自由が当たり前過ぎて、いつしか自由という言葉自体が消えてしまいました」
そうして終業のチャイムが鳴り、次は休み時間。
皆窓から飛び出し、校庭まで飛んで行った。
9月27日は「世界観光の日」