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こども専用の鍬を作ったら、思ってた以上に楽しくて、気付きがあった

「やりたいやりたいやりたあああい!!!」


……また来た……。


2歳ごろから、娘は「お母さんと同じことを、なんでもやりたい」大魔王になっていた。この頃、娘をよく一緒に田んぼや畑に連れて行っていた。
娘の好奇心をくすぐる物事がたくさんの農業。

この日もやりたい大魔王となっていた。

当時、娘のやりたいものの1つに「鍬(クワ)ブーム」が到来していた。

「やりたい、やりたひ〜〜〜ん」

「やりたい、やりたひ〜ん」

「や、やりたい、やりたいーん・・・!!」(↑3歳になって無理矢理使いだす)


・・・・・。

「なんでやらせてくでないのっ!!!(プリプリ!!!怒」



母は気づいた。
私は師匠から失敗していいから挑戦しろ!とたくさん教えていただいていたのに、

できないから、危ないから、道具がないからと、娘の「やりたい気持ち」「挑戦してみたい気持ち」を抑え込んでいたのではないかと。


これはアカンのではないか。


そうして私は、ググった。

「こども、鍬、販売」ポチ。


ない。ないではないか。
おもちゃっぽいものではなく、子どもの力を信頼するような、子ども専用の本物の鍬はネット上には存在しなかった。よし。


ないなら、作ろうではないか!!!


こうして「こども鍬開発プロジェクト」が我が社内でスタートした。
娘は解読不明な置き手紙を当時の社員に託し、保育園に登園している間、

私たちは、娘の「やりたい」を叶えるために奔走するようになった。


作りたいのは

■子どもの感性を養えるような、「本物」であること
■子どもが熱中できるよう、身体に合ったフィット感があること
■ひとさじの「危険さ」があることで、「親子」でともに関わり合いながら作業できるものであること


なぜ本物にこだわるのか?
安全との両立はできるのか?

何度も話し合い、私たちはこう考えた。


「自分もチャレンジしてみたい」と沸き起こった気持ちを、大事にしたい。
その思いを叶えようとしたときに、こどもにはいつもごまかしはきかない。
本物を使って、安全・安心な環境でこどもたちがチャレンジできるように、大人たちは見守る役になると同時に、こどもと一緒に学び、一緒にチャレンジしよう」

その思いを北極星に、
まずは、子どものさまざまな身長に対する適切な柄の長さは何センチなのか、「本物」であること、「安全」であること、でも「ひとさじの危険さ」を持たせるようなバランス感のある鍬とは?と考えた。


ある程度自分たちのイメージができたところで、これを実現してくださる鍛冶屋さん探しが始まった。


実は!新潟には、世界に誇るものづくりのまち「三条市」がある。
江戸時代から続く鍛冶技術の伝統を受け継ぎ、現在は包丁や作業工具といった金属加工産業を中心に発展し続けている。その金属加工の技術は世界トップレベル!あのスノーピーク本社も三条市に拠点を置いている素敵なまち!

三条市にポイントを絞り、ネットで検索をし、フィーリングが合いそうな鍛冶屋さんに目星をつけ、飛び込み電話をした。

その中で出会ったのが、100年以上続く老舗鍛冶屋さん「近藤製作所」さんだった。近藤製作所はオーダーメイドの鍬と鍬の修理を専門にしており、全国から問い合わせが来るそう。


とても素晴らしい鍬専門の鍛冶屋さんだった!!!!

か、カッケェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!(涙)


近藤製作所さんは「こども専用の鍬が作りたい」という突拍子もない提案に、「いいよ!面白そう!」と気軽にOKをくださった。本当に工場の皆様、素晴らしく、温かいお人柄で私たちも感激…。神が現れた……。


それから、近藤さんの助言もいただきながら、設計をチューニングし、試作品が完成した。

めっちゃ可愛い!!!!!!


娘にも早速使ってもらった。

「やったー!私のだ!!!」

「これこれ!!」

「これこれだ〜!!」

娘は「誰のものでもない、自分のもの」というのが、ほんっとうに嬉しいらしかった。嬉しい娘の姿を見て、私もめちゃめちゃ嬉しかった。


そして4ヶ月後。



あなたは誰ですか!!


すっかり達者になってしまった娘…!


大人と違って、「仕事」と「遊び」の境界線が曖昧な子どもは、どこまでも羽ばたいていきそうなエネルギーがある。そしてその子の力を信じれば、どんどん、どんどんそのエネルギーで、水を得た魚のように遠くへ行く。

その事実に、私は感動した。


このワクワクを独り占めしないで、同じ思いの人たちに届ようと、販売を始めた。今も、いろんな声を集め、微調整をしながら、アップデートを続けている。

すると、

「こういうのが欲しかった!!」という声がたくさん集まり、ひとりひとりを思い浮かべながら、こども鍬とともにお手紙を書く時間が本当に嬉しく、楽しかった。


そして娘は、4歳になっても

5歳になっても

こども鍬とともに、私と一緒におんなじ時間を楽しんでくれている。
その時間は、本当にしあわせだった……



今、こども鍬は全国の森のようちえんへ旅立ったり、いろんな方へ発送させていただいている。そして去年からは思いがけず


アグリツーリズモリゾートをコンセプトに展開している

星野リゾート「リゾナーレ那須」様でも使っていただくようになった!(震える

畑から生まれる、このワクワクをたくさんの人へ届けることができて、本当に嬉しい…


危ないから、まだ小さいから、といろんな理由でなんでも「ダメダメ」していたけれど、それは意外と大人の都合が多かったのではないか。
「ダメ」と言った瞬間、そこでぷつんとこどもとの関係も途切れてしまっていたように思う。

「よし、一緒にやってみよう」と一緒に踏み出したとき、親子が共同体になれた感覚。このこども鍬から新しい親子の関係が生まれる。


親も一緒だという安心感の中で、「挑戦したい」気持ちを叶えた子どもたちは、どんどん、どんどん力を発揮していく。どんどん、どんどん遠くへ行く。
そして大人さえも気付かなかった場所へ、運んでくれる。


子どもの「やりたい!」を叶えたら、こんな世界が待っていたなんて。



新しい気付きや、知らなかった世界を教えてくれた娘、本当にありがとう。
私も負けずに、たくさん挑戦するぞ!










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