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【お店を作る④】ゴミを売りつけるな!と言われた話


2010年春から、創業の話を順を追って書くシリーズ④。


今回は、お店のリニューアルのために「福袋」という名の在庫処分を盛大にやっていたら、購入したお客様から「ゴミを売りつけるなんて最低!」とメールが来た話を書く。



前回まではこちら。

初めてスタッフ募集をかけたら、つけまもネイルもバッチバチの二日酔いのギャルが面接に来て、見事合格した話。↓



前回からの続き。



①1,000万円分の「いらない」在庫


無事スタッフも決まって、少しずつ「お店にいる日常」が普通になってきた頃。

私はずっともやもやとしていた。


「mignon」は、可愛くてみんなに人気のお店だ。

インテリア雑貨からステーショナリー、アクセサリーや帽子などのファッション雑貨、服もあるし、アンティークの食器もある。

そんな場所を今まで作り上げてきた、元スタッフさんたちを尊敬する。


だけど、正直なところ、商品が自分の趣味とは少し違っていた

そもそも私は「雑貨」をほとんど買わない。


「雑貨を飾る」とか「かわいい雑貨をプレゼントする」という習慣がなかった。

(雑貨屋をやるのに・・・・)


毎日掃除したり、ディスプレーを変えながら

「なんでこんなものあるんだろう。。。」とか

「これなんのためのもの・・・?」とか

「不思議・・・・」

と、思うことも多くて、自分が全然雑貨に対して身が入ってないことが明らかだった。


なぜ私は自分で理解できないものを「かわいいですよね」なんて売らないといけないんだろう。


それに加えて、「自分で選んで仕入れていない」という気持ちがいつもどこかにあった。

その雑貨に対して、私は責任を負いたくない。

私が選んだのではないから。


お客様に「このバッグとこのバッグ、どっちがいいですかね?」なんて聞かれても、どっちも自分の趣味じゃないし、自分で仕入れてないからわかんない。。。

なんて、失礼すぎて言えない。

でも本心はいつもそうだった。



定価で1,000万円近くの「招かざる在庫」がある。


これを全部売ってしまうのにどれくらいかかるんだろう。

私は何年も「趣味じゃない雑貨」「自分で選んでない商品」に囲まれてそれをお客様に売らないといけないのか・・・?

・・・地獄・・・!



②福袋で一気に在庫処分!


とにかく悶々としていた。


この在庫たちを早くなくしたい。

そうじゃないと気持ち悪くて、気持ち悪い病で死ぬ。。。


いや、雑貨自体は気持ち悪くない。

むしろかわいい。

自分で選んでいないからもやもやするだけ。



売ることは責任なんだ。

ただ、売ればいいってものじゃない。

これから自分で仕入れるものは自分で納得がいく、本当に自分で良いと思うものを入れたい。

そこからやっと、お客様に笑顔で向かい合える気がする。


お店を始めてすぐに、「自分で選んで自分の責任で売ることの大切さ」を強く意識した。


それならやっぱり、まずは過去を清算しよう。

「在庫を早めに売ってしまって、自分で仕入れたものを中心としたお店作り」をしよう!と決めた。


とにかく在庫処分や!と「福袋」を作り始める。

(発想が安易〜〜〜〜〜)



在庫処分=セール

と、思っていた私だけど、ちまちま一つずつセールにしてたら永遠に終わらない。

雑貨屋の商品点数なめんな!

ということで、ガサッとまとめて一袋に入れる「福袋」をとにかくたくさん、毎日毎日作っていくことにした。


とはいえ、私にもそれなりのポリシーや、経営者(新米やけど)として社会的責任(?)はある。

いい加減なお店作りはしたくないので、福袋の中身はかなり厳密に調整した。


・人気商品と不人気商品をうまく組み合わせる

・金額は販売価格の30%を下回らないように

・見た目をかわいく



大抵、まず「①目玉商品」を決める。

例えば、かわいい柄の食器やカトラリーのセット、人気のメーカーのアクセサリー、綺麗な柄のストールやブランケットなどなど。

入ってたら嬉しい!という人気商品や個人的にかわいい!と思うものは必ず1つ入れることにした。


その後に、「②万人受けしそうな定番アイテム」を加える。

ハンカチや靴下、入浴剤やステーショナリーなど、メインにはなりにくいけど、手元にあっても困らない、使えるね!というもの。


その次に「③とにかく在庫をなくしたいもの」をたっぷり加える。

不思議な人形、キャラもののグッズ、用途がわかりにくい雑貨、著しく自分の好みとかけ離れているグッズ、高すぎて誰も買わないアンティーク食器、など。

申し訳ないけれど、これは、もう金額無視でとにかくなくしたい一心で入れ込んだ。


ボリュームをつけたいからと、サービスだ!くらい、③をたくさん入れることもあった。

もちろん、そういった私にはよくわからないものでも、今まで売ってきたものである以上きっと「嬉しい!」と思う人はいるんだろう。

それくらい、自分を正当化しながら袋詰めしていた。


基本の金額計算は守りつつ、それよりもお客様が袋を開けたときの「納得感」を大事にして、中身を増やしたり入れ替えたり工夫した。


さらに、見た目がかわいいと買いたくなるだろう!ということで、中が見えないよう紙袋に入れて可愛らしくリボンをした。

全く中身がわからないのも不安だろうから、メインになるものや目安の金額も書いて、「Happy Bag」と名付けて店頭に出した。

例えば、「〇〇というブランドの大皿と小皿のセット、△△のハンカチなど入り、定価10000円相当を5000円で」など。


それが毎日毎日どんどん売れる。

素直に、これはやっていける〜〜〜!と、嬉しかった。



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(2011年 リニューアル後の店内)



③「ゴミを売りつけるな!もう店に行かない!」


在庫は、同じものが大量にあるというよりは、いろんな種類のものが少しずつあるので、組み合わせる商品や金額、ボリューム感もまちまちだったけど、かえってそれがお客様が楽しんでもらえるきっかけとなった。

作る方も種類が豊富で楽しくて、毎日誰かへのギフトを作っている気分になった。



Happy Bagが好評で、これはいい調子で商品が入れ替わっていくぞ〜〜〜!と思ってた矢先。

1件のメールが届いた。


「楽しみにして買ったHappyBagの中身が、ゴミみたいな物ばかりで本当にがっかりでした。お客を馬鹿にしているのでしょうか。大好きなお店だったのにもう行きません。」


そんな内容のメッセージだった。


読んだ瞬間、ショックすぎて顎が外れそうになった。

(顎関節症気味なので)

さらに頭に血が上った。

(この頃の私は今よりもう少し人間らしい感情の持ち主だった)


隠れたいような逃げ出したいような、恥ずかしさと悲しさ

でもなんだかすごくイラッとした、怒りも含んだ複雑な気持ちでいっぱいになった。


あなたの「大好きなお店」のものを詰めたバッグだぞ?

なんで私が文句を言われないといけないのだ。

ゴミって言われても、、、。

そのゴミと言われたものたちだって、誰かが作って誰かが仕入れて、好んで買った人だっているんだぞ?


納得いかない気持ちもありつつ、このお店での初めてのクレームにドキドキしながら、すぐに今あるHappyBagを全部見直した。


・・・


確かに。

これは。

お客様の言いたい気持ちもわかる。


ゴミとまでは言わないけれど、結局は前のお店の売れ残りが中心だから本当に人気のものは定価で売れるわけで、そうじゃないものがたくさん入っている。

金額だけ見るとかなりお得に見えるけど、いらない人にとってはいらない。

それをゴミと言うなら、私はかさましのためにゴミばかり入れていたのかもしれない。


「たくさん入ってたらお得でいいでしょ」なんて発想は、お客様を馬鹿にしてる。

言われている通りだった。

とてもショックで、またレジの裏側で体操座りしたくなった

(スタッフがいなかったら多分していた)



④福袋にも透明性を!


「処分したい在庫」がある。

正直、金額無視して捨てるって手もアリかもしれない。


とはいえ「モノを安易に捨てる」なんてできない。

誰かが作って誰かが仕入れて、良いと思った人が必ずいるのだ。


そこで、今あるHappyBagを一旦全部中身を出し、「透明の袋」に入れ替えた。

中に何が入っているか全てわかるようにして、1点ずつの定価もわかるようにした。

可愛くリボンを結んで、このままギフトとして誰かにあげられるくらいのワクワクする雰囲気を作った。


ゴミかどうかはお客様が決めればいい。

ごまかさない。



お客様から「使い方わからない」「裏側が見てみたい」などと言われたら、わざわざ袋から全部出して説明した。

「違う色が欲しい」とか「こっちのこれとあっちのこれを交換して欲しい」なんて言う、要望にもできるだけ答えた。


とにかく、「絶対にお客様の言うことは聞こう」「納得した上で買ってもらおう」と努力した。

なんか、急に必死になった。



前の会社では、クレーム対応係をやっていたので自分では得意だと思っていた。

クレームは「理不尽なモノ」「話を聞いて欲しいだけのもの」などもあり、それらの対応はある程度パターンを決めてどうにかできる。

逆に実際に自分たちが悪いクレームも、「自分」ではなく「会社」の責任であるから、どこか他人事みたいな視点で粛々と対応できる。


でも今回のは違う。

明らかに、真っ当なご意見で、私個人に向けられたメッセージだ。

私はこのメールを送ってくださった方に、結果的にとても感謝している。

(当時はめっちゃイライラしたけど←)



自分のやろうとしていることは、誰のためのなんのためのことなのか。

「雑貨」を甘く見ているのではないか。

「お客様」をおざなりにして自分本位でやっていないか。

まだお店の経営を「他人事」と思っているのではないか。


すごく、反省した。



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(2011年2月 リニューアル前日のレイアウト替えの様子)



⑤本当の「自分のお店」へ


そうやって工夫しながらHappyBagを作り続け、それはきちんと売れ続けた。


その頃、自分で仕入れた商品たちも少しずつ入荷するようになり、緩やかに、商品の入れ替わりが進んでいった。



リニューアルを1年後の、2011年3月にしよう。


お店を譲り受けてちょうど1年経つ時に、店名を変え、商品も少し入れ替わった状態で、プチリニューアルする日を決めた。


商品はめどがついたので、まずは店名を考えなくては・・・・。

店名を決めたら、ショップカードや名刺も作ろう。

臨時休業してレイアウトも大幅に変えよう。

やることはたくさんある。


mignonから新しい名前へ。

私は、ノートにメモ程度にいくつか候補の名前を書き始めた。

まだまだ時間はある、じっくり悩もう。


ネーミングの方法を調べたり、似たような名前がないかチェックしたり、自分なりに深く考えて店名候補を書いている横で、、、


「この名前いいね!これにする!決定!」

と、夫が店名をほとんど勝手に決めてしまった話はまた後日。


続きはこちら↓




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