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40代目前にして再婚を決意した、その『世界一恥ずかしい』理由

離婚を経験した男子の平均寿命は5年短くなるという調査を発表したアメリカの学者がいたが(ちなみに女子の寿命は変わらないそうだ)、そりゃそうでしょう、女子よりぜーんぜんメンタル弱いから、男子は。自分もかなり凹みましたよ。

30代半ばで初婚→2年もたずに離婚。しかもその離婚がかなりの壮絶かつハードランディングなやつだったので、正直当時は引きこもりになり、もう生涯ソロで行くぞ!とさえ思った私だが、しかし!......である。そんなときにかぎって人生二度目のモテ期が到来してしまうのである。

私がそれまでまったく信じていなかった『モテ期は3回やってくる』と『離婚直後はモテる』というこのふたつの都市伝説は、まさにリアルと化したのである。このへんは、別のnoteにて綴るとして.....

とにかく、もう二度と結婚なんかしねぇぞ!と決め込んだ『37(歳)の夜』だったはずだったのに、結局その3年後にはなぜかしれっと再婚していた。これには、とてもくだらないあの‘’夜‘’の出来事が関係している。

その‘’夜‘’は、窓をあけただけで心地よい乾いた風が部屋を吹き抜けるエアコン要らずの季節だったので、おそらく39歳の秋頃だったと思う。

一人ソファーでボーッとテレビを眺めながら、ハーパー12年のロックを優雅に呑んでいた時である。外で一瞬ちょっとした時つ風が吹いた。まくり上がったレースのカーテンは、棚上を浚って、置いてあった小物入れを自分の頭に落としてきた。イッテーなぁと思いながら散乱した小物を広い集めていたところ、ふとこんな思いを自分は頭の中で巡らせていた。

ソロで生きていくと決めたものの、例えば、今みたくひとりで家にいて、突然の落下物が頭を強打して、運悪く『死んで』いたら、なにか不都合があるだろうか?

ということで、いつも通りじっくり考えてみた。『39歳独身男子・孤独死したら発生しうる不都合なことシミュレーション』

2014/10/24日曜日23:30

心肺停止。永眠ー享年39歳。酒のアテにつまんでいたカラムーチョが、結果的にオフィシャルな‘’最後の晩餐‘’となる。死に際は香辛料で右手の指が真っ赤に染まっていた。これを聞いた知人らは『死に際まで食べてたってあいつどんだけカラムーチョ好きなんだよ!』『あのメタボの原因は深夜のカラムーチョだな』『そもそもバーボンにカラムーチョってあうわけ?』『離婚がショックでアル中になって味覚障害になってカラムーチョかも』『さっさと嫁さんもらわないからそういう荒れた食生活になるんだよ』と死因よりも、最後の晩餐の内容の方できっと炎上する。なぜか最後は‘’独身×アラフォー×独り暮らし×男性‘’と‘’カラムーチョ×荒れた食生活×メタボ‘’を無理にリンクする奇怪な方程式がなりたっている。これは不都合な事態ではないか?

(独身=不健康が世間のイメージか?!)

2014/10/26水曜日18:30

家宅捜査。会社の上司、緊急連絡先に登録されていた母、地元警察の立ち会いのもと、アパートの大家さんが鍵をあける。遺体発見。救急車が呼ばれる。2DK・4戸のアパートは、自分以外の3戸は全て小さな子供がいる世帯だったが、その主婦らが一斉に騒ぎ出す......『あの独身アラフォーさん、なにか事件にまきこまれたのかしら?』『いや、やらかした方じゃない?あの年齢で独身で独り暮らしってかなりヤバくない?』『そうよ、典型的な極悪犯罪おかすパターンよ、それ。ニュースでよくあるじゃない?あの人うちの上に住んでたけど何か物音ひとつ立てずにいたから怪しいなぁって思ってたのよ』『私はずっとうちの娘になんかイヤらしいことしないか心配だったのよ、この前、目があったらあの人ニヤニヤしてたって娘が言ってたし』と盛り上がる。夜は隣家の子供が起きないように静かに階段登り降りしたし、家の中でも足音立てまいとした。挨拶は欠かさず、子供には笑顔(確かに普段からあまり笑わないから、少しぎこちなかった可能性はあるが...)を振り撒いたが、‘’独身×アラフォー×独り暮らし×男性‘’というだけで極悪犯罪者扱いされてしまうのは、かなりの不都合な事態ではないか?

(独身男性は近所の子供にこう見えるのか?)

2014/11/4金曜日18:30

通夜。死因は『心不全』とされた。よりによってFRIDAYナイトでかつ場所が都心の実家近くてかつSNS拡散もあり、不幸にもたくさんの暇な同期・同級生が集まってしまう。『あいつやっぱ離婚してから鬱っぽかったから自殺じゃねぇ?』『お供えがスナック菓子だらけだったけど、メタボと糖尿とかじゃない?』『だから俺は早く再婚しろっていってたんよ、生活リズムが狂うから』『もう一回所帯持ちになって、今度こそ子供を育てて、幸せになってから死んでいたらよかったのにな』『前の奥さんとは子供がいなかったの?そりゃ残念だわ。人生の喜びの半分も得てないじゃない?』『あぁ、そうだ。ご両親も孫の顔をみたかったろうに』と、やはり死因を‘’独身×アラフォー×独り暮らし×男性‘’にリンクさせ、なおかつ不幸であったとする論調が蔓延してしまう。これはかなり不都合な事態である。

(例えば、こうなれば男は健康で幸せになるのか?)

シミュレーション、完。

なんか被害妄想が大半を占めているかもしれないが、当時の自分の結論としては、世間一般のアラフォー像のデフォルトがあまりに所帯持ちに‘寄り過ぎ’であるため膨大な、目に見えない、または耳に聞こえないー『ソロ・ハラスメント』が社会に蔓延しているという現実をさらりと受け流せる=ソロ適格で、受け入れられない=ソロ不適格と仮定した場合、メンタル弱い自分は圧倒的に後者の『ソロ不適格者』であって、こりゃこれ以上のソロ生活は無理!なのであった。

(さらば家賃が安かったアパートよ)

ということで!

たしかに20代から30代の半ばくらいまでは、『ソロで生きていく所存である!』と強がることは誰でも可能だが、40代が見えてくると一億総‘’皆婚主義‘’日本!の目を忖度せざるを得ない局面がくる。自分はその壁に立ち向かう術なく、あえなく敵前逃亡した謂わばチキンである。

冒頭に戻りますが、自分の頭に落ちてきた棚の上の小物入れにしまってあったモノとは...。

金に困ったら売ろうと思って隠しておいた前嫁との結婚指輪でした。

こういうのを『背中を押してくれた』というのでしょうか?

ー文中でご紹介した私の一番好きなお酒ー

I.W.Harper 12年(キリン商品情報)
バーボンは苦くて雑味があって嫌い!という人はこれを呑んでから再考ねがいます!

この記事は以下に集録されています!

『アラフォーの卒業論文』

40歳は二度目のハタチ...というが、実際はどんな数年間だったのか?書き下ろした10のエッセイ集 by 叶田(kanaita)