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娘、健やかに育ったよ。乾杯しましょう

一昨年、ハタチになった

バイト先のお客さんに歳を聞かれた時、「ハタチです」って答えるのがちょっと嬉しかったし、成人式を控えて浮かれた1年を過ごした気がする

20歳じゃなくって、ハタチ。

何故か人生の大きな区切りと設定されたこの歳は、やっぱりどこか特別で、大人の仲間に入れてもらえたような、不思議な感覚



そんなこんなで成人になれたことにウキウキしてた私は、“それらしいこと”がしたかった


「成人のお祝い」してもらうんじゃなくって、「成人からのお祝い」してあげよう


すなわち、親から成人祝いをしてもらうんじゃなく、よくここまで育てました!おつかれさん!という私からの労いを。


形に残るモノが良くって、さりげなく欲しいものを聞いたりしたけど上手くいかず、(特に父は物欲が無い)

老後の楽しみにカメラでも買っちゃうかぁと思ってググってみたら何倍も高くて降参。(3万くらいで買える思ってた私です。)



検索履歴が「親 プレゼント 」「50代 欲しいもの 」などで埋まり、どのワードで検索してもページ一体紫の文字

(いっそヒラマサさんのように現金で感謝を表そうか…)
(いやいや、みくりさんそれ喜んでなかったもんな…) と頭を抱える日々


あぁ、プレゼント選びはいくつになってもうまくなれないなぁ
その人が何が欲しいかを考えるのは楽しいけど、好きな人になればなるほど考え込んでしまって、周り回って正解が分からんくなる
正解なんてないのにねぇ

「コレだ!」と思って決めても、やっぱり他にもっと良いのが...というのを何周もして、何周もして、疲れた


疲れた私は、最後の禁じ手、飯に頼ることにした。美味しいご飯は正義。絶対に失敗しないと20年生きてきて学んだのである。
逃げではなく方向転換だと自分に言い聞かせ、地元の美味しいと言われてる居酒屋を、自分の誕生日の次の週に予約した。


当日、私は大学の授業後に向かう予定だったから、お店で集合。

最寄り駅から少し歩いた路地にあるその店に向かう。



店に入ると2階の座敷に案内され、階段を上ると4人がけのテーブルにお母さんとお父さんが向かい合って座ってた。もう既に1杯目を飲んでいるらしい。

よっ と手を挙げて合図し、母の隣に座ってからグレープフルーツチューハイを注文する。



おでんが美味しいと評判のお店だったから、王道から変わり種まで、手書きのメニュー表いっぱいにおでんのネタが並んでる。
大根〜はんぺん〜こんにゃく〜ロールキャベツ〜卵にはイクラが乗っている〜 幸せな歌が出来上がってしまいそう...

値段が書いてないことに財布を少し気にしながら、けれど自ら率先して頼んでいく


ドラマで上司が部下に言う「よし、今日はおごりだから気にせず頼めよ! おいおい遠慮するなって。」ってやつ。あれをしたかったのかもしれない。

「お母さんこれ好きやん!あ、これもおいしそう~!」
「え?そんだけでいいの?もっと頼みぃよ」
「お父さん次何飲む?日本酒?」

と、気づけば新歓で後輩に絡む先輩と化している


大学生になった私はバイトか友達と遊ぶかの二択で、家で夜ご飯を食べるのは月に1,2回。
それに普段テレビを垂れ流しながら雑音の中ごはんを食べてるから、3人で向き合って何を話すんだろうと思っていたけれど、別にお父さんたちが二十歳だった頃の思い出話をするわけでも、わたしのこれからの話をするわけでもなく。
ただ美味しいご飯を食べながらいつも通り、本当に普段通りの夕食の時間だった。



ひとつ明確に覚えてるのは、おでんの出汁がそれはもう最高においしかったこと。頼む度追加される出汁を飲み干した気がする。


「なぁ、この出汁ごはんにかけたら天才的なおいしさになると思うねん」

と私が言ったら、お母さんもうんうんって頷いた。
「けどここ白ご飯とか置いてないよな~」
とダメ元でメニューを見る。やっぱりない。

「いや、あるかもしれへん」とお父さんが店員さんを呼んだんだっけな。近くの体育大だと思わしきバイトの男の子が元気よく注文を聞きに来てくれた。
白ご飯単品はやっぱりメニューにはないみたいで、けれど気を利かせて店長さんに聞きに行ってくれた。


年上かな~年下かな、同い年かもな と返事を待ちながら考えていると、「いけるみたいです!いくつにしましょう!」と戻ってきてくれた。


3人で〆として2つ頼んで、待ってる間に机の上の料理を食べきった。
残ってるのは、しっかりとっておいたおでんの出汁と、白米を待つ私たち。


ごはんはちょうどいいサイズで二つ運ばれてきた。

一口食べて、三人で顔を見合わせる。
「え…めっちゃおいしくない?」
"米が立つ"と、炊飯器のコマーシャルで芸能人が口を揃えて言うあのセリフは嘘じゃなかった。


その日食べたものはどれも美味しかったはずだけど、最後の〆にして間違いなくそこがピーク。
ごはんを口に含みながらおでんの出汁を飲む。


予想的中。大正解。
ちょっといい店で隠れねこまんまをしてしまったことに引け目をかんじつつ、初めての店でメニューにないものを頼むというツウっぽい行動に気分上々で、完食。

「おあいそお願いしまーす」

初めてバイトした日に、「おあいそで」とお客さんに言われて、おあいそ とはなんの食べ物かと困惑したのを思い出す。いつの間にか自分でも使うようになっているなぁと声に出しながら思う。


さっきとはまた違う、でもきっと同じ大学であろう男の子が伝票を持って来てくれた。
目の前に座ってるお父さんに向かって「~円です!」と伝える。やっぱり元気がいい。

私が財布から用意していたお札を満を持してをさっと出す。男の子は一瞬 おっ と向きを変えて、~円お預かりします!と降りていった。

二人から「ごちそうさま」、お母さんからは加えて「ありがとう」と言われたけど、ちょっと照れくさいので適当に「うんうん」なんて流しておいた





外に出ると思っていたより暗くて、少ない電灯が目立つ。2人はここまで自転車で来たらしい。2人並んで自転車に乗ってきたことを想像して笑ってしまう


3人いるけど自転車はふたつしか無かったから、試しに私がお母さんを後ろに乗せてみた。こわい!と言いながらちょっとはしゃいでる。
結局5mほどでギブアップして、歩いて15分程の距離を自転車に乗ったり降りたりしながら帰った。



私の頼んだグレープフルーツチューハイが到着して、3人で乾杯する時、2人は お誕生日おめでとう と言ってくれた
私からは 育ててくれてありがとう なんて恥ずかしくて絶対に言えなかったけど、感謝の意を込めてご飯に誘えるくらいには健やかに育ったよ、ありがとう。乾杯!

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明日も生きれちゃう
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1998年生まれ 読書作文が苦手やった人は文章を書いてはならぬという(自分の)勝手な呪縛を解き、noteをはじめてみました。好物はネギとアイドルです。本はそれほど読みませんが、作家の朝井リョウ(特に作家ではない部分)をこよなく愛してます。
コメント (2)
綺麗な誕生日の描写に感動しました。
Floatさん
なんと....嬉しくって踊り出しそうです....
わざわざコメント書いてくださってありがとうございます、私にとっても特別な記事になりました。
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