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帰れない正月は、じいちゃんのお雑煮が恋しくなった

ここ数年は、正月に実家へ帰らなかった。

飛行機代は高いし、人も多いし、正月にわざわざ帰らなくても少し時期をずらして帰れば良いか、ってそんな感じで。

今年の正月は、初めて「帰れない正月」だった。
帰らない正月と、帰れない正月は、なんだか気持ちが少し違った。
(どうせ帰れたって帰らなかったくせに。)

元旦、マンションの同じフロアに住む友人がお雑煮を作ってくれた。

「宮城が地元なんだけど、雑煮は鶏出汁で凍み豆腐を入れるよ。あと、一晩凍らせたゴボウとにんじん、彩りにセリも」

へえ!
友達の説明に、いちいち関心した。
初めて食べる、地元とは違う地域のお雑煮。

「香菜ちゃんの家ではどんなお雑煮食べてたの?」

私が地元の北九州で正月を過ごすときは、じいちゃんがお雑煮を作ってくれていた。
鶏とかまぼことお餅が入ってた気がする。
野菜はなんだっけ。

大晦日に夜更かしをした次の日、朝ごはんなのか昼ごはんなのか分からないくらいの時間に食べる、あのお雑煮が好きだった。
けど、どんな味だったっけ。甘めの出汁だったような。

曖昧になってきた懐かしいお雑煮の味を想って、少し切なくなった。

じいちゃんはもう、認知症が進んで料理ができない。
危ないからキッチンのガスは切ったらしい。
あの雑煮は、もう食べられない。
そっか、食べられないのか。
正月に地元へ帰らない間に、大好きな味とお別れしてたんだな。
今考えると、高い飛行機代よりも、もっと価値があるものだったと思う。

お母さんにLINEした。
「あけましておめでとう!じいちゃんの雑煮って何が入っとったけ?」
すぐに返事がきた。
「鶏と椎茸で出汁をとって、かしわ、かまぼこ、おもち、彩に青ものとかの野菜を入れとったよー!」

初めて、お雑煮を作ってみたくなった。
じいちゃんのお雑煮、曖昧な記憶を頼りに作ってみようかな。

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