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里山暮らしの魅力とは?

山本堪|Kamino Wallet

ベルリンの芸術大学を卒業後帰郷し、現在は高知の里山で山仕事とものづくりを営む筆者が「里山暮らしの魅力」について考察してみました。

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こんにちは。高知の里山で、森林管理や炭焼などの山仕事をする傍ら、Kamino Wallet というひとりブランドとしてものづくりをしている山本と言います。2011年にドイツのベルリンから帰郷し、現在は高知県の旧土佐山村という里山で家族三人で暮らしています。

noteでの最初の投稿となる今回は自己紹介も兼ねて、里山の持つ可能性と、ここで暮らす魅力について書いてみたいと思います。

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フロンティアとしての里山

林野庁の森林・林業白書によると、山村は日本の国土面積の約5割、林野面積では約6割を占める一方で、そこに暮らす人々は全人口の3%でしかないそうです。

過疎・高齢化が一番の課題となっているのが現在の里山ですが、逆に言えば、人は少ないけれど面積は広大で、掘り起こされるべき資源が数多く眠っている、という意味で里山は現代の日本におけるフロンティアとも言えるでしょう。

ただ、僕にとっての里山は、まっさらな入植地というよりは、古くから続く山の民の営みが今なお受け継がれる場所として、そして、それらの営みを今を生きる自分たちの手で更新していける場所として、という意味合いの方が強いと感じています。

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里山の資源を活かすために

里山の資源として、真っ先に挙げられるのは豊かな自然環境でしょう。しかし、里山の自然は人の暮らしとの関わり合いの中で育まれてきたため、手つかずの自然ではありません。ですから、代々手を入れてきた田畑や山などの土地を持っていない僕のような新入りは、例え里山で暮らしていたとしても、この土地の人たちとの積極的な関わりなくしては、自然の恵みを活かす事はできません。

そこらに沢山生えているからと言って、木を勝手に切って良いわけでは無いのです。それに、何世代にも渡って受け継がれてきた暮らしの知恵や技は、とても理にかなっているものが多いので、僕たちの世代が自然を活かそうとするならば、自分一人で一から始めようとするよりも、その土地の長老達からこれらを学んだ方が遥かに効率が良いです。

現在では大部分の山や田畑が個人名義の土地となっているとはいっても、里山の自然は個々の住人が独立して管理してきた訳ではなく、この地に暮らす人々が「結」(ゆい、土佐弁では”いぃ”)と呼ばれる相互扶助の仕組みを築いて共同で活用してきたという歴史的な背景があることから、新入りでも信頼関係を積み上げていけば、その恩恵にあずかる事ができる可能性が一気に拡がってきます。

(この点は、それぞれの地域の気質に依るところが大きいので、例えばある地域への移住を視野に入れる場合、少数派だとしても地域に外の人材を受け入れる人たちがいるか、またはUターンして来た人や先輩移住者など、つなぎ役となる人がいるか、を見極める必要があるでしょう。)

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鍵は社会関係資本の蓄積

一般的に里山暮らしというと、豊かな自然環境や温かい(そして密な)人間関係、というイメージが思い浮かぶと思いますが、この二つは実は密接に関わっていて、決して切り離せるものではありません。

里山の地域社会には、自分達の生産活動の土台となっている自然をみんなで管理していくための仕組みとして、上述の「結」の繋がりが根底にあるので、それを無視して自然のみに重きを置くと、人と自然との関わりの中で育まれてきたという里山の本来の姿が失われてしまいますし、逆に人の繋がりのみに焦点を当てると、その人間関係の濃さを精神的な重荷として感じてしまうという可能性も孕んでいます。

つまり、里山には活かされてない資源がまだまだ沢山あるけれど、これからの世代がそれを活かせるかどうかは、どれだけ信頼関係+暮らしの知恵=社会関係資本(social capital)を蓄積できるかにあるということだと思います。

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暮らし+社会+自然=しごと

里山で暮らしていると、ここでは「自然」と「暮らし」と「社会」の3つがほとんど重なり合っていて、その重なり合う部分の真ん中に「しごと」があるという構造が見えてきます。

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この場合の「しごと」というのは必ずしもお金を得るための労働だけを指しているわけではなくて、自らの生業はもちろんのこと、日々の暮らしの中の仕事や、集落の共同作業や自治活動、消防団といった、地縁コミュニティの中での仕事もありますし、NPO活動のような少し広い意味での社会活動も含まれます。

同じ事は都市でも言えますが、里山ではそれぞれの要素の重なりあう部分が大きいため、社会関係資本の蓄積においてとても効率が良く、負荷が少ないと僕は感じています。

里山の魅力

色々と書きましたが、社会関係資本の重要性や、ライフスタイル、持続可能性といったテーマは、里山だけの問題ではなくて、社会全体にとっても普遍的なテーマだと言えます。

これを踏まえ、里山の可能性、そして魅力として、僕が最も大きいと感じているのは、自分の暮らしと(地域)社会を変えられるという実感が持てる、この規模感だと考えています。もちろん思い通りにならないことも多々ありますが、地域社会に深く関わり、試行錯誤しながら、自然の恵みを活かしたライフスタイルを自由に設計できる環境は、僕にとってとても魅力的です。

そんな環境の土台となるのが、地域での信頼関係と豊かな自然環境であり、それが「ここにいれば、何とかなる。」という自信、そして安心感につながっているのだと思います。そしてこれは、「何世代にも渡り、暮らしに必要なものは自分たちの知恵と技で自然から生み出してきた。」という山の民が持つ自分達の生活文化に対する誇りに通じるところがあるのではないでしょうか。

この安心感はお金とは別のところにあるので、ある種のセーフティネットとして制度化し、社会全体に適用するのはすぐには難しいかもしれないですが、少なくともこれからの生き方、暮らし方へのヒントは多く含んでいるのではないでしょうか。僕がこうして拙い文章を記すことによって、里山暮らしの感覚を少しでも身近に感じてくれる人が増えたら良いなと思います。

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読んでいただきありがとうございます!
高知の里山で山の仕事をする傍ら、Kamino Wallet というひとりブランドとして、シンプルな紙の道具を製作しています。興味のある方は、こちらも併せてご覧いただければ嬉しいです。


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