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「Joy, Inc」喜びを求める会社から学ぶこと

以前、別の記事でも紹介したアメリカのミシガン州にある社員と顧客の「喜び」を第一優先に考えるメンロイノベーションの話が本になって話題になっています。「Joy、Inc」というメンロイノベーションのリッチ・シェリダン社長が書いたものです。

リッチ社長が目指す「Joy」つまり「喜び」を求める経営とは何か、もうお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、経営者や企業のマネージャのあるべき姿を教えてくれる気がします。

リッチ・シェリダン社長の話の中で、今の状態を築けたのは、いろんなことを、とにかくまずやってみる。試してみて、いいものをどんどん取り入れた結果、今の状態になることができた。という話があり、とても大事なメッセージだと感じました。

この会社はソフトウェアの受託会社なのですが、いわゆる普通のソフト会社がやっていることとは真逆のことをやっています。いくつかの例を挙げると

1) 残業は一切やらない。

2) 誰にも喜ばれないソフトウェアは作らない。

3) プログラムの内容は、手書きの紙に書かなければ始めない。

4) 定期的な進捗確認はお客様が主体でデモをやって確認する。

5) スケジュールは一人週40時間の限られた時間からお客さんが組み立てて決める。

6) プログラミングは必ず2人1組で実施。

7) プログラムそのものを作る工数よりも、プログラムの検査プログラムの作成を先に、重点を置いてやる。

これらのことを、試してみて、いい結果を自分たち自身で確認しながら、一つずつ積み上げて作った組織だということなのです。

そこには、「喜び」という哲学があり、新しいものに取り組む謙虚さがあり、壁を取り払ったチームワークがあり、失敗が許される風土があり、ずっと続けられる確信があるのかもしれません。それぞれのことは、言葉で言う人はたくさんいます。大企業のトップ方針などでもよく見かける言葉でもありますが、大事なことは、それを成し遂げた事例がここにあるということなのです。

アメリカ国内のTV番組などでもこの会社の話が取り上げられ、見学者が後を絶たないのだそうです。余談ですが、1人500ドルの見学料を取り、今ではこの会社の大きな収益源にもなっているそうです。
この会社の話は、今までに私もいろんなところで話をしたり、伝えたりしています。私以外でも、雑誌等で取り上げられたりもしていますが、話を聞いて「面白いね。」と答える経営者やソフト開発部門のマネージャはたくさんいますが、だれも真似することができません。(私の知っている限りですが)

つまり、出来上がった形を真似しようとしてもだめで、自分たちが一つ一つ取り入れて、試してみて、いいものを自分のものとして取り入れることでないと、結果的にうまくいかないのではないかと思うわけです。
また、既存のやり方とはまったく違うので、今の考え方を全部ひっくり返すくらいの覚悟と心構えが経営者やマネージャになければ、絶対に実現できないことだと思います。

しかしながら、難しいとばかり言っていると誰も挑戦してくれないので、敢えて言うと、実際に成功した事例を目の当たりにすると、やっていること自体はどれも難しいことではない気がします。つまり、マネージャが覚悟を決めて号令をかけさえすれば、実現するのはそれほど難しくないということです。
現状を壊す勇気と、成功事例から必死に学ぼうという姿勢だけが、多くの企業で足りないものなのかもしれません。

メンロイノベーションの事例の7)で、検査プログラムを先にという話があります。製品開発の世界では、テストファーストという考え方で先進的な人たちや企業では当たり前の考え方であって、これが出来ている企業は少なからずありますが、出来ていない企業はもっとたくさんあります。

テスト(検査)プログラムを先に作れるということは、開発する対象をしっかり把握できているという証明にもなるということで、開発者自身が設計作業の前にテストプログラムを作ることは、十分に設計対象を理解したうえで設計することができるので、製品設計の品質を大幅に向上させることができます。

目先の功を焦るマネージャは、検査は後回しで、早くモノを作ることが最善だと考えて、作る対象の定義が完全に終わっていないまま設計作業を優先させ、バグだらけの製品やプロトタイプを作り、その修正、後戻り設計に莫大な時間をかけるという失敗を犯してしまいます。

非常に単純なロジックなのですが、これくらいの話も、だれも今までやっていないからという理由で変えられない企業や組織がどれだけたくさんあることでしょうか。

最近、改めて思うのは、成功事例を知ってそこから感じること、どこまでその事例の本質にたどり着いているか、あるいは、そこから学ぼうという気持ちがどれだけあるかということが、人や企業によって違いすぎて、他者の成功について語り合ったり、議論したりしてそこから何かを学ぼうとする風潮が少なくなっているような気がしています。もちろん、違う意見があったり感じ方が違うのは当たり前なのかもしれませんが、せめて、何か学ぼうという気持ち、そこから少しでも実践しようという気持ちは共感したいものだと思います。

リッチ社長の、とにかく試してみて、いいものを取り入れるという姿勢こそ、真の変革への道だと思いたいです。

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