【本の話】相手をよく知るということ、の一つの実践例

今日も、ブックカバーチャレンジから1冊紹介します。
大学時代にお世話になった先生の本から。

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(もうアマゾンで新刊売っていないようで、Kindle版のリンクを貼ってます)

キミは文章を書いていいよと認めてくれた最初の人

阿川(尚之)先生は、作家の阿川弘之さんの息子さんで、阿川佐和子さんのお兄さんです。私の通っていたSFCのキャンパスでは日米関係史や米国憲法史を教えておられたのですが、私自身は先生の専門の授業は一度も履修していません。

私と先生とのつながりは、SFC Reviewという学生が作る学内広報誌のいち編集委員と、顧問(担当教授)という関係です。

当時、学生の記事レベルをチェックするのに、同じ題材から全員が記事を書いて先生に見てもらうという機会があり(感じ悪くないように一応説明をすると、学生の側から提案した企画だった)、そこで先生が一番よく書けているのはこれかな、と自分の文章を挙げてくれました(確か同率一位みたいな感じで2人いた)。まあ、たまたまいた数人の中で、ということなんだけど、何となくその出来事でお墨付きをもらえたような気分になって、この道に進めたし、その後も支えの一つになっている気がします。

その阿川先生がSFCを退官されることとなり、編集委員で阿川先生特別号というのを作りまして、先生の著作の書評コーナー(先生は多作で著書が20冊位あります)でこの本を担当させてもらいました。下記がそのテキストです。

人が誰かを嫌いだと思う時、それは単に相手をよく知らないからだということは案外多い。ひとたび腹を割って話し、相手を知れば、そんな印象は簡単に変わる。この本は、相手を知る(国であっても人であっても)とはどういうことか教えてくれる。知識として知ること、精神面に触れること、同じ場の空気を身体に入れること。それから、問題が起きた時にどう対処するかに、その人の本質は多く現れる。本書には、著者が留学や仕事を通じ、そうやってアメリカを深く知っていった過程が書かれている。その過程を追体験することで、読者である私たちもまた、これまで知らなかったアメリカを発見することになるだろう。『アメリカが見つかりましたか(戦前篇)(戦後篇)』へと続く、著者のアメリカ論の原点となった一冊。

短く紹介するとこうなりますが、この本の魅力は色とりどりな出会いのエピソードと、阿川家に流れる血脈を感じさせる文章にあります。よければページをめくってディテールを体験してくださいね。

この本の中には、先生がジョージタウン大学留学中に受けた英作文の授業(Exposity Writing)の話があり、文章のテクニカルな書き方を叩き込まれたことが後の人生でも役立ったと書かれています。私が大学で先生から文章について教わったことの中には、きっとこのエッセンスが含まれているのだろうなと思います。

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