#2 マンツーマン

昨夜(9/19)はベイスターズが敗れて、ヤクルトの優勝マジックが6になった。
どういう種類であっても、数字が減っていくということにそわそわしてしまう。

昨夜で稽古4回目、いまは次の稽古のために沖縄に来ている。
今回のキャスト数は4人だが、そのうち1人は沖縄在住である。

通常、というか一般的に言えば、どこか一ヶ所にキャストが集まって稽古するものだが、今回はそれをしないことになった。
つまり、演出の立場である僕だけが移動し、それぞれマンツーマンでの稽古をする、というもの。
いままでの創作を振り返ると、たとえば5人キャストだとして、だいたい5時間の稽古を30日程度やって本番を迎えていた。つまり、稽古は合計150時間になる。
だが、それをキャスト数で割ると、一人当たり30時間となる。逆に言えば、5時間のマンツーマン稽古は5人キャストの稽古5日分に相当する、という計算(そんなわけないが)。

で、それを元に、各キャストそれぞれ1日5時間×8日間の稽古+初演の那覇で本番直前に合同リハーサルを数日行なうというプランを立てた。
合同リハーサルまではスタッフにも非公開で(ただし、全プロセスは録画しているため共有可能)、一対一の対話中心で進めている。

元々これは予算的理由から考え出したアイデアだった、あとコロナっぽいという理由で。半ば冗談のようなアイデアだと思っていたが、いまはどうやってうまく進めるかを考えることに夢中になっている。
今回の成果がよく出れば、今後もこういう作り方は選択肢に入ってくるかもしれない。

たとえば会話が主体の作品の場合、俳優の掛け合いの練習を繰り返すうちに、よいテンポ、リズムを獲得していく一方で、
しゃべり方や呼吸、雰囲気、もしかしたら(演技の)癖みたいなものまで、徐々に全体が似通っていくかもしれない、と思う。
もちろん、それが必ずしも悪いことではないと思う。
だが、
「それぞれが持ち寄った好きなものをテーブルの上に出してみたら、食べ物だったり服だったりおもちゃや機械だったり、物体ではなく思い出話だったりバラバラだった」みたいな状態、状況を僕は好む。好むというかそうなりたい、と言うほうが正確かもしれない。
違うものがたまたま同じ場所に居合わせている場面に、僕は憧れる。いろんな出自、趣味、嗜好、意見の人たちがギリギリ同じ社会を形成している、という場面や世界。
その点において、今回の稽古方法は効果があるのではないか。

また、一対一だと、対話の深まり方も複数人いるときとは違ってくる。
誰かがしゃべるのをずっと黙って聞いている、という状態も回避しやすい気がする。キャッチボールは複数でやるより2人のほうがしっくりくる、みたいなこと(?)。
もちろん、演出の立場として、しゃべりすぎないこと、主張しすぎないことを意識しないといけない。
それをしてしまうとせっかくの期待する効果が損なわれてしまうだろう。

今回は特に、キャストによってやり方(演出方法や現場の雰囲気)を変えることを意識したいと思っている。同じ台本でも、みんな、感じ方も捉え方も全然違うだろう。その違いをひとつの地点に集約させずに同時に成立させる、というのにトライしたい。
その違いによって引き起こされる奥行きの、深さを見つめられたらいい。

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「イミグレ怪談」
2022/10/28(金)-30(日)@沖縄那覇、2022/12/15(木)-19(月)@東京池袋、2023/1/28(土)・29日(日)@京都
https://okazaki-art-theatre.com/kaidan/ (9/22公開)

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