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総選挙:雑感(2)野党共闘の限界と自民党の底力

次に、野党について思うことを書いてみたいと思います。「野党共闘」は、一定の成果を挙げることになるでしょう。しかし、政権交代には至らなかったのも事実です。

私は、立憲民主党や共産党などの野党が、数合わせの「共闘」に選挙がギリギリまで必死にならざるを得なくなり、政党として選挙を戦うために最も大事なことのはずの「政策」をつくることを、「市民連合」なる外部の組織に丸投げすることになってしまったのは、実は「自民党の底力」だったのではないかと思います。

野党は、とにかく共闘して小選挙区の候補者を一人にして、自民党と闘うしかないところに追い込まれたのだと思うのです。

それは結局、政策で自民党との違いを出すことができない。出そうとしたら、自民党に盗られてしまって、予算つけて実行されてしまう。そのために、野党は生き残りのために、とにかく政策をそっちのけにして、数合わせをして「反自民」として戦うしかなくなってしまったのだと思います。

今回、野党共闘の「痛さ」を象徴する出来事だったのは、トヨタ労組が、労組専従職員から出ていた立憲民主党所属の現職議員の立候補を取りやめさせたことですよね。その背景はいろいろ考えられますが、基本的には共産党と組む政党の支持はできないということだったと思います。

労組が雇用、賃上げを経営に要求していても、それはあくまで企業の発展に協力するするのが前提ですからね。同じ「トヨタの共同体」の一員だということです。大企業が悪だと言い続けてきた共産党は共同体の敵なのです。支持するわけにはいきませんよね。

一方、私が海外メディアに説明したように、自民党とは、英国の二大政党「保守党」と「労働党」を合わせたような政党だ。保守政党であると同時に、労働者の雇用、権利拡大を守る政党でもあるのです。だから、自民党がトヨタの労組と組むことがあっても、なにもおかしなことはありません。

自民党は、社会民主主義的な政策を実現してきた、世界に類を見ない保守政党です。古くは、1960年代の国民皆保険・皆年金制度、70年代の環境政策、福祉政策、近年では教育無償化、全方位社会保障など、他の民主主義国ならば、保守政党から社会民主主義政党(労働党)に政権交代した際に実現した北政策を、政権交代なく、野党のアイディアを奪って実現して、支持を拡大して長期政権を築いてきたのです。

自民党と労組が組むということは、自民党が、野党の岩盤支持基盤を崩したという大きな意義があります。共産党が主導する野党共闘が続けば、トヨタ労組の動きは、次々と他の大企業の労組に広がっていくことになるでしょう。ますます、野党は「万年野党」になっていくことになります。

そもそも、野党共闘が国民の支持を得られないのは、政策をめぐって内部分裂し、混乱の果てに崩壊した民主党政権のことを、国民がしっかり覚えているからです。「寄り合い所帯」では政権は務まらないと国民が不信に思っている以上、政権交代を実現するような勢いを得ることはできません。

要するに、野党共闘では限界があり、政権を取ることはできないということです。そうすると、野党は別の戦略を練る必要があるということになります。




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