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【アカペラで歌ってみた】風味堂「愛してる」

 風味堂の「愛してる」をアカペラで歌ってみました。

 この歌を元に書いた短編「二度と来ない夜」は【切ない恋愛短編集 9】の90話になります。

【切ない恋愛短編集 9】の「はじめに」を引用します。

 第八十一話「思い出の坂」は、主人公の母親の切ない恋愛になります。子どもの頃、母と手を繋いで歩いた坂道。一年に一回だけ、必ず通るこの道。幼い頃はわけもわからず、母についていっただけでしょう。

 坂の上の大きな屋敷に着くと、まずは使用人が出迎えて奥様に取り次ぎます。上品な奥様は、顔はにこやかにしながら目は笑っていません。その場に冷たい空気が張り詰めます。母は下を向いたまま。

「はい、今年の分です」

 そう言って奥様は、幼い彼に分厚い封筒を渡します。彼はわけもわからずそれを受け取り、母と一緒に礼をしてその屋敷を後にします。

 彼は、奥様にとってみれば「愛の恩讐おんしゅう」です。夫と家政婦の間に生まれた彼を、正妻である奥様が許せるはずがありません。しかし、婚外子とは言え、代々続く名家のあるじの子どもを存外に扱う事は出来ない。それゆえに一年分の充分な生活費を渡している。それが彼女のプライドなのです。

 きっとこの屋敷の主人は、奥様の目を盗んで彼ら母子に会いに行ったに違いありません。それは一年の間に数回だったでしょうが、彼の母にとってはそれだけで充分でした。彼もまた、父親の愛情を感じていたのではないでしょうか。

 やがてこの家にも男子が誕生し、彼の「後継ぎ」としての役割も終わります。その頃には彼も自分の出生の秘密を知らされ、父と母の立場を理解するようになります。最後に、大学進学までのまとまった費用を渡されて、それ以降はこの屋敷との関わりはなくなりました。

 父も母も亡くなり、彼にとってこの屋敷は何の関係もなくなったでしょう。ただ、この坂を母と歩いた思い出だけが、彼の心に深く刻まれています。

 妻と子どもと一緒にこの坂を歩いている彼の心には、何の恨みもないように感じます。父、母、奥様、それぞれに人生の辛い「坂」があった。でも「最終的にはみんな幸せになった」と彼は感じています。

 この本を読んでいただいている皆様も、いろいろな人生の坂をのぼっていらっしゃる事でしょう。皆様の人生に幸多き事をお祈りしております。

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