見出し画像

【韓国・NELL】NELL'S SEASON 2018 《THE COLORS》 IN TOKYO〜夏の夜の酔いが冷めるまで〜

夏のタイムリミット

日本各地で日常生活に支障をきたすほどの豪雨・猛暑はいつまで続くのか。

夏とともに終わってくれるのならば、秋が待ち遠しくて仕方がない。夏のタイムリミットがあとどれくらいかは、気象庁の発表を待つしかないのだろうか。それならばまだまだ先になりそうだ。

"平成最後の夏"と謳っていつもよりどこか特別なものにしてしまいたいのは、どこか情緒的で名残惜しい時代のたたみ方を人は求めるから。そうするのに夏はちょうどいい季節なのだろう。いつからか蔓延している"エモ"は私にとっても大好物だ。

四季が春から始まっているように見えるけれど、別に夏を起点にしたっていいし冬を起点にしたっていい。そもそも日本の季節はいつも循環している。ひとが決めた始まりと終わりが隣り合わせになる必要もないし、季節の変化に乗っかって気分を移ろわせるのは何かと都合が良い。

ひと夏の恋を楽しむも秋風が立つのも、人は都合よく季節を言い訳にしている。だとしたら、ドラマティックな恋が1シーズン限りで閉店してしまうのも、恋人との中に不穏な亀裂が生じはじめるのも、誰のせいでもない。きっとそれぜんぶ、気象庁のせいだ。

冗談。

ワタシは冬の匂いを知っているけれど、夏の匂いを知らない。季節はいつもすんとした表情で姿を変える。匂いなんてないのかもしれない。今年2018年は7月20日を夏の始まりと決めていた。

チケット即日SOLD OUT

最速先行チケットに申し込みをして既に当選・入金済みの知らせを受けていたから、ツイッターで即日SOLD OUTの知らせをみてひどく安堵した。

『NELL'S SEASON 2018 《THE COLORS》 IN TOKYO』

会場:渋谷WWWのキャパは450人、去年11月の恵比寿リキッドルームの約半分だ。そんな数的要因を考慮できるほどのライブハウス感覚がワタシにはない。皆無だ。

この規模での即日SOLD OUTは想定内もしくは必須事項だったとしても、ここ日本で、大きな注目を集める存在になったという喜びや期待と焦りが混在していた。ワタシが知っているのはNELLのほんの一部に過ぎなかったのだ。それでもなお、一般発売まで悠々としていたなら、待望のNELLに再会するはずの予定がすっぽり抜け落ちていたに違いない。私に許された夏は、始まりもしなければ終わりもしないとても空虚なものになっていただろう。

6月16日に保証された平成最後の夏というやつが、この日ワタシのところにも無事に来てくれた。

ちょっぴり汗の滲むいつも通りの渋谷の街を走るほどに、こみ上げる期待感

18時30分はまだ昼間のように明るかった。

いいや、そう見えていただけで脇を固める店の多くは夜を迎える準備ができていた。ライブハウスに向かう途中にNELLがいる渋谷の街を撮っておいたのだが、写真を見て気がついた。心の準備ができていないのは私のほうだ。

耳にはイヤホンをつけて渋谷駅ハチ公前まで来た。「습관적 아이러니(Habitual irony)」や「51 」に頼って、19時00分に全ての照準を合わせようと分単位のスケジュールを組んだ。もう既に開場時間を迎えて、少し焦っていた。

そうだ、今日は金曜日の夜なのだ。スクランブル交差点の人混みがやたら鬱陶しかったし、歩くのが早い東京の人を小走りで追い越すことで、はやる気持ちを落ち着かせた。整理券番号は3ケタだが半分よりはずっと前の方だし、慣れない会場のルールはまるでわからない。開場時間前には到着して待っているべきだった。

自信無く右手の小道に入り込むと、細い坂道と階段に人が規則だたしく長い列をなしていた。ここだ。やはり、出遅れた感が否めない。韓国ファンさんらしき女性陣が多く見受けられて、本当にNELLを待つ人の列だろうかと疑う理由は一つもなかった。

大人しく最後尾に4列で並び、被っていた帽子で風をおこして涼んだ。いや、あれでは風をおこしているフリをしているだけの人だ。ここは全く涼しくならない。

今宵はNELLと、様々な事情を抱えるNELLの観客が集う。NELLを"仁川の夏の夜の幻想"などと表現するのは私に他ならない。ファンは同じ夜を過ごしても、時間の解釈は自由であっていい。ここにたどり着くまでの山手線の強い冷房さえも、自分に都合よく記憶の一部に変換していいのだ。

희망고문(Vain Hope)が聴きたい

昨年11月の公演でお目にかかれなかった희망고문(Vain Hope) に自ずと期待感を強めた。期待でありながら確定事項のようにその時を待つ。

「やっと聴ける」

セトリの予想もまともにできないが、この日聴きたい曲はこれだけあった。희망고문(Vain Hope)日本初お披露目は今日であってほしいと思うのは、出してもいい欲ではないか。

始まってほしい、始まらないでほしい

始まらない限り終わることはない

NELLに限らないが、何度か今日のように特別な公演を経て得る教訓があったりする。その極みがこれだ。

照明が暗転してしまえばもう後戻りはできないが、それまでは始まってほしいと願うリトルワタシと始まらないでほしいと願うリトルワタシのせめぎ合いに、ワタシ本体はいてもたってもいられなくなる。単なる緊張だ。

定時に暗転する照明は授業終了のチャイムと同時に“今日はここまで”と言い放つ先生のように。板書き写し終えていないこちらの事情はお構い無し。だけどそれでいい。大人の事情で授業を延長される方がずっと困る。今日だって、定時に始まってくれればいい。

リトルワタシは大抵ちょろい。

遠ざかればまた近付く準備ができる

멀어지다(Drifting Apart)で今夜限りの夏がはじまった。

1人ずつステージに現れるNELLを、ファンはそれぞれの想いを込めて拍手で迎えた。멀어지다(Drifting Apart)から始まったのは意外だった。同時にワタシもまだまだNELLのファンになりきれていないと悟った。

何度も歌った曲だ、嬉しくないはずがない。一瞬にしてフロア全体を静かに惹きつけ包み込んだ。開始数秒後にはメンバーを直視するのが恥ずかしいほどに涙を流した。幸い、光はこちらには当たらない。安心でも感動でもない、目の前にまた彼らが立っているのは疑いようのない事実なのだから。ならば一体何か。

そこは、全てを解放できるワタシの非日常だ。

-------------------------

【Set List】 머러지다(Drifting Apart) / 지구가 태양을 (Four times around the sun) / 습과전 아이러니(Habitual Irony) /유령의 노래(Song Of A Ghost) / 오늘은(Today) / Dream Catcher / 어떤 중에 그런 (One of Those Days) / 기억을 걷는 시간(Time walking on memories) / 타인의 기억(Memories of a Stranger) / Sing for me / Tokyo / Stay / 3인칭의 필요성(Lost in perspective) / Fantasy / Starshell / 소멸타출(The great escape) / Ocean of Light / Let the hope shine【Encore】 청춘연가(Green Nocturne) / Home(Acoustic Ver) / 믿어선 안될 (Words You shouldn't believe) /全21曲

-------------------------

ファン歴が浅いワタシでも口ずさむことのできる曲が連なって、日本のライブハウスの空気を揺らし続けた。ステージから目を離して見上げるとミラーボールの表面の凸凹を巧みに使いながら、白い雨光が揺れるフロアに降り注いでいた。ワタシも浴びた。

これは冷たくない。

オーディエンスに向けられたマイクは、大合唱ではないけれど、狭い箱を優しく満たした。NELLにも届いただろうか。一番遠いところにいるドラマーはシルバーの長いネックレスを揺らしながら微笑んでいた。

믿어선 안될 말(Words You shouldn't believe)には説得力がある。終わりのこないサウンドに頭の先から足裏まで仕上げられると、思い残しがなくなる。あれだけ待ち望んだ희망고문(Vain Hope)をスムーズに見送った。

音の振動で痺れた脚が今日という日の現実味を一層強める

この日はじまったのは私の夏だけではない。

NELL'S SEASONを皮切りにNELLの日本活動はより加速することを彼ら自ら口にしてくれた。誰かが、《THE COLORS》はアソートのようにNELLの名曲を取り揃えたと解釈するのならワタシはこうだ。地下から地上へそれぞれの事情によって脚を進めるファンは、《THE COLORS》のごとく一夜にして渋谷の街の色を染め上げた。そんな風に言うのはライブハウスの中からふらついた脚で出てきたワタシくらいだ。アルコールに不慣れな肝臓は今夜もシラフだけれど、酒がなくても酔うことを覚えた。しじみ汁は普通に美味い。

「酔うんだ」

ぜんぶ現実だったことを裏付ける証拠を残そう。今もなお、余韻ならぬ酔いとともにワタシの季節は続いている。

「ずっと酔っていよう」

新たな発表がもうすぐそこにあると言った。新しい季節の訪れとともに終わるとするならばそれは始まりの合図だと、どこかで聞いたことのある言葉をコピーして新たなNELLを待つ準備を始める。ワタシはNELLを少しも知らない。

1999年7月31日に結成したNELLは2018年7月31日の今日、19年目を迎えた。来年は記念すべき20周年を迎える予定だ。今日も昨日までのように、蝉の羽の音がめまぐるしくこだまする日常の一部にNELLがいる。

結成19周年おめでとう。

カミ子より。

 

↓↓↓前回note↓↓↓

【韓国・NELL】存在自体が美しい夜の幻想であってほしい

↓↓↓ Kstyle・NELL関連記事 ↓↓↓

ロックバンドNELL、7月に東京公演が決定!「NELL'S SEASON」をついに日本で披露

ロックバンドNELL、日本公演のチケットが即日ソールドアウトに!メンバーからコメントも

ロックバンドNELL、チケット即完の東京公演「NELL’S SEASON」大盛況にて終了!今後の日本活動に高まる期待