アインシュタインの孤独を理解するには相対性理論を理解しなければならないのか

アインシュタインの孤独を理解するには相対性理論を理解しなければならないのか。そうだと思うようになってきた。

聞き上手を提供してきて

聞き上手をサービスとして提供して、ひたすら人のおはなしをうかがってきた。自分史を700人以上作ったし、毎週お電話で世間話もしているし、いわゆるコーチングをコーチとして提供させていただいてもいる。いわゆる傾聴といわれる技術について学びを得る機会が大きかったと実感している。特にコミュニケーション技術としての傾聴については、人に教えることはさせていただいているし、まず間違いなく喜んでいただけるので、人が持っていない程度には技術を持っていると言ってよいと思う。

聞き上手で提供しているもの

そこで提供しているのは、狭義の聞き上手だ。狭義というのは、人の気持ちに関心を持ち、共感し、受容することを指す。カウンセリング、コーチング、営業トーク、コンタクトセンター、すべてのコミュニケーションサービスにおける核となる技術と言っていいだろう。相手の気持ちを理解することで信頼関係が生まれ、そのこと自身によって、話し手は自己肯定感を得ることができる。とてもとても奥が深く、やりがいがあり、毎回学びと自己有用感を得られる、素晴らしい職域だと思う。

不足を感じる

しかしながら、これで十分なのか、という思いが日々強くなってきた。お相手の気持ちを理解しようと努め、相手の声に耳を傾け、共感でき、受容できる状況が訪れるのを待つ。相手の気持ちを理解するための質問をし、誤解や予断を持たぬよう注意を払う。

そこで究極の「わかる」とはなにか、が気になってくる。気持ちを共感できるとは何か?人がそれぞれ異なり、人の気持ちを脳を開いてみることができない以上、まったく同じ気持ちを共有できるわけがない。

アインシュタインの苦悩を理解することはできるのか


そこでタイトルの疑問に至る。アインシュタインの気持ちを理解しようとしたら、彼の頭の大部分を占めている(であろう)相対性理論やそこから発展している物理学の諸問題を同じ理解をせずに、気持ちだけをくみ取ることができるだろうか?自分が相対性理論をアインシュタインと同じレベルで理解できていない(これは断言できる)から確定的なことは言えないが、おそらく気持ちも理解できないだろう。

だとしたら、それが相対性理論であるのか、半導体の設計技術であるのか、さらにいわゆる理論の世界でなくても、製造業の工場の管理プロセスであるとか、保険営業の神髄であるとか、そういうことを理解せずにその人の気持ちを理解することはできるだろうか。おそらくできない。

となれば、選択肢は2つ。
アインシュタインの苦悩を理解するために、相対性理論を理解する。あるいはアインシュタインの苦悩を理解するために、相対性理論は必要ないと言い切る。



仕事を理解する聞き上手を目指す



私は前者を選びたい。そして、多くの人の持つその人の仕事を理解する技術を身に着けたいと思う。もちろん真のゴールにたどり着くことはないだろうが。

つまり、聞き上手が相手の気持ちを理解するだけでなく、その人がいままで培ってきたバックグラウンドそのものを深く理解する技法も、取り入れていきたいと考えているのだ。


神山晃男 株式会社こころみ 代表取締役社長 http://cocolomi.net/