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志をともにする人

ベトナムに来てみるまで、わたしはこの国のことをこんなに好きになるなんて思っていなかった。

ごはんがおいしいこと、美しい棚田の地域があること、刺繍や藍染の布製品が豊かなことももちろん大きな魅力だ。
だけど私にとってベトナムは、「同じ志を持つ人に、初めて出会えた場所」になった。

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はじめに

わたしは今、世界の紙を巡る旅をしている。
紙を好きになったきっかけは、4年前に高知の紙工房で紙漉き体験をしたこと。
木の繊維だけで紙ができることを目の当たりにして以来、手漉き紙に魅了されている。

「だいすきな手漉き紙をこれからも残すには、どうしたらいいだろう?」
その方法を知りたくて、300日の時間をかけて世界のいろんな手漉き紙の工房を訪問している。


Zo project との出会い

ベトナム・ハノイに到着した翌日、街なかの雑貨店や文具店を訪ね歩いた。
手漉き紙の盛んな地域だと、手漉き紙で作られたノートやメッセージカードをお土産屋さんで簡単に見つけられる。

ハノイでは手漉き紙を使った製品を全然見つけられなくて、やっぱり手漉き紙はあんまり作られてないのかな…と がっかりしていた矢先、1冊のノートを見つけた。

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商品の説明書には
「Zo Project は、ベトナムの伝統的な手漉き紙と製法を受け継ぎ広げるために活動しています」
と書いてある。

これは気になる!と思い調べてみると、ハノイに店舗があることがわかった。 


Zo Project のお店へ

翌日、ノートを作ったブランドZo Project のお店に行った。
お店にはベトナムの手漉き紙 do paper を使ったノートやグリーティングカード、カレンダーが並び、お店の奥では製本ワークショップをしている真っ最中だった。

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製本ワークショップを見学させてもらいながら、ブランドのなりたちやベトナムの手漉き紙事情を教えてもらった。

Zo Project では、製本ワークショップだけでなく、カリグラフィー体験や紙漉き工房を訪問するツアーも開催している。
ちょうど次の日曜日に工房に行くというので、わたしも参加させてもらうことにした。


紙漉き工房へ

日曜日の午前8時、バスに乗り込んで山道を1時間半移動し、工房に向かう。

(このワークショップが充実していたので、工房の様子や紙の詳しい作り方は別のnoteにまとめました。)

材料の木の刈り取りの工程から紙作りを見て、体験できる場所はなかなかない!

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今回の工房訪問には日本人グループの方も参加されていた。
そのうちのお一人が話されていた「紙って本当に木からできてるんですねぇ…!」の一言が印象的だった。


紙について話せる場

ハノイに滞在する最終日、Zo Projectのお店を再訪した。これまでの旅で集めたネパール、インド、タイ、メキシコ、ラトビア、そして日本の手漉き紙をプレゼントとして持って行った。

すると、代表の方だけでなく製品をデザインされている方や他のプロジェクトメンバーもお店にいて、5人で紙談義で盛り上がった。

「この紙の素材は?」
「どんな漉き方なの?」
「道具はどんな形?」

飛び交う質問に、拙い英語と身振り手振りで説明する。
同年代の人たちとこんなに手漉き紙の話を交わせたことがなかったから、とにかく嬉しかった。

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手漉き紙を残したい。
だけど、紙を漉く職人にはならない。
わたしは紙を作らない。
わたしの中でずっと引っかかっていたことが、少し和らいだ。

紙を残すために、街なかで紙の魅力を伝え、定期的にワークショップを開催し、新しい製品を作っている同年代の女性たちがいる。
紙そのものを作る以外のアプローチで活動している人がいて、そのおかげで紙漉きを続けられている工房がある。

その事実に、ものすごく励まされた。
わたしも日本で、覚悟を持って動き出そうと思えた。

ベトナム・ハノイで出会った大切な同志。
あなたのおかげで、ベトナムに来てよかったと心の底から思うよ。ありがとう。

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リンク

▽ Zo Project HP

http://zopaper.com/

▽ Zo Project を紹介している日本語の記事


こんにちは、kami/(かみひとえ)です。いただいたサポートは、「世界の紙を巡る旅」をまとめた本の出版費用に充てさせていただきます。今年の12月に発売できる…はず…!