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静岡のK子

現地に向かうローカルバスは観光客で溢れ、K子の豊満な胸が背中、腕に当たるたびに体温が上がった。

#テレ東シナリオコンテスト
#あの恋

東京生活での疲れを癒しに箱根に一人旅に出た。

もっぱら一人旅をするときに利用するのはゲストハウスで外国人はもちろん日本中から色んな人が集まり、時にはお酒を飲んだりご飯を食べたり次の日一緒に出かけよう、と一期一会の機会が多い。

箱根湯本駅からバスに揺られて山道を15分ほど行った先にある宿は簡素だが日本中にあるオシャレゲストハウスの条件である居心地の良さを十分に感じることができた。

出迎えてくれた女性従業員はショートカットのよく音楽フェスに行っていそうな、感じの良いアクティブな女性だった。

宿のリビングには誰もおらず、まず近くの温泉に行こう、と彼女にオススメを聞いてみた。

温泉から上がり、お腹が空いていたが、良いご飯情報、またはご一緒してくれそうな方がいないか、と期待を膨らましてポカポカの身体で宿に帰った。

まだ宿には誰もおらず、
先ほどの従業員しかおらず、
彼女を誘うわけにもいかないので、また彼女にオススメを聞き、ひとりで韓国料理を堪能した。

満腹で宿に帰ると、ヨーロッパ系外国人数人と日本人の女性がいた。

特に盛り上がっている様子はなく、それぞれ自分のことをしており、自分もスマートフォンであいのりを観ていた。

途中でスマートフォンの充電が切れかけ、コンセント片手に電源を探していると、日本人女性の足元に指し口があった。

こんばんは、この電源使っていいですか

声をかける時に、すみません、ではなく、挨拶文句を使うと、その後の会話が続きやすい、とテレビのロケ番組を観て感じていた。

静岡住みのK子は東京での出張終わりに弾丸で来たらしく、先ほどの女性従業員とはこの場所で会い、意気投合し、頻繁に旅行に行く仲らしい。

年齢も近い2つ歳上の彼女たちと気付けばお酒を飲み、自分が誕生日だったのでここに遊びに来た、と話した後にはバレバレのケーキサプライズもしてくれた。

翌朝、女性従業員に作ってもらった朝食をK子と一緒に食べた。

自然と何の約束もせずに、今日はどこに行こう、と。

美術館に行きたかったのだが、天気が良く、ススキで有名な仙石原に行くことになった。

現地に向かうローカルバスは観光客で溢れ、K子の豊満な胸が背中、腕に当たるたびに体温が上がった。

仙石原に着くと、まさに見頃で、背よりも高いススキが一本道の両側にびっしり敷き詰められている圧巻の風景だった。

もうバスに乗っている時から、背の高いススキを分け入り、開けた中でキスをする、というイメージをしていた通りの展開になった。

頂上まで上がり、ゆっくり座って風景を楽しみ、下りる頃には手を繋いでいた。

ローカルバスを待つ仙石原麓のベンチでK子は最近別れた彼氏の話をし、1年くらい身体の関係もなかったと聞いた。

女性従業員とK子と3人でランチする予定だったが、たまたまチェックインの外国人で仕事が立て込んでいる様子を見て、K子と2人でランチに行った。

K子は女性従業員に会いに来たものの、ほとんど時間を作れず、残念がりながら、明日の仕事のため、帰る準備をする。

ゲストハウスからローカルバスで小田原まで1時間、静岡に帰るK子を送る。

宿から小田原までの途中の高速道路出口辺りにラブホテルが多いとK子が帰る準備をしている際に調べた。

バスの座席の小ぶりな詰め詰め感にK子の高い体温が左腕全体を通して伝わり、いつ言おうか、いつ言おうか、と機会を伺っていた。

夕方から夜に変わり、暖房の効きすぎた車内とヨガをしているK子のポカポカな身体にうとうとし、気付けば降りなければいけない停留所まであと少しだった。

今日、生理?

不意に出て来た言葉は全く色気もなく、ヌルッとしたドストレートな表現に自分でも驚きながら、違う、と返事を聞いた直後、止まりますボタンを押していた。

K子のスーツケースをガラガラと転がしながら、車を駐車場に入れるとすぐ横に部屋があるタイプのラブホテルに徒歩で入った。

久しぶりだから、と顔をしかめながらもヨガで鍛えられたしなやかな身体は鞭を打つようにしなった。

とことんイメージ通りに進んだ今日の出来事を箱根湯本駅すぐ近くにあるかっぱ温泉に入りながら、しみじみ耽っていた。

そんなのぼせた頭で考えたことはこの話をシェアしたい、ゲストハウスの女性従業員の方に聞いてもらいたい、そして調子に乗って彼女との関係も期待していた。

帰りのコンビニでお酒を買って帰り、事の経緯を全て女性従業員に話した。

K子の元彼欲求不満は当時から聞いていたらしく、この話に賛美してくれた。

あわよくばとチャンスを張り巡らさせていたこちらはさすがに発展はしなかった。

度々静岡から出張で東京に来るK子と池袋のラブホテルを逢瀬を重ねていたが、あの日の絶頂を超えることなく、情熱的な思い出は日に日に鎮火されていき、ようやく旅の帰路に着いた。

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