忘れられないラスト-東野圭吾「秘密」-
はじめに
今回の投稿では、東野圭吾「秘密」のことについて書こうと思います。
※ネタバレを含んでしまいますので、未読の方や今後ドラマ版を観る予定の方などはここから先は読むことをお気を付けください。
(“ストーリー”というタイトルのところまではネタバレはせずあらすじのみ)
読了後(視聴後)、また訪れてくだされば幸いです。
東野圭吾「秘密」について
趣味に読書と書いている私。というわけで、そろそろ読書の話をしてみようと思います!
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私には、ずっとずっと忘れられないラストがあります。
それが、東野圭吾「秘密」
読んだのはもう何年も前で、確か小学生だったか中学生だったか…
そこから長く経ちましたが、この作品に隠された最後の「秘密」がずっと忘れられません。
それほどまでに衝撃で、苦しくて、切なくて…。
「東野圭吾さんはやっぱり天才だ!」と幼い私は生意気ながらにそんなことを思いました。
なぜ今…?
そんな昔に読んだ作品をなぜ今更語る?
そう思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回私がこの「秘密」という作品をテーマにnoteを書こうと思ったのは、ドラマ版の「秘密」を観たからです。(TVerにお世話になりましたm(__)m)
結末を知っているからこそ、途中から涙が止まらなかった。
食い入るように画面を見続けた時間。それは、時間を忘れ食い入るようにページを見つめたことを思い出させました。
小説の内容について、読んでから月日が経っていると忘れてしまっていることはありませんか?
私は(大変お恥ずかしいですが)度々あります。
ただ本作においては、何年も前のことなのに鮮明に覚えていました。
それくらい、私にとって“忘れられないラスト”が「秘密」にはあります。
そんな東野圭吾「秘密」について、僭越ながら少し書かせていただこうかと思います。
ストーリー
まずは簡単にストーリーをご説明!
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主人公杉田平介の妻子を乗せた夜行バスが事故を起こした。運転手の居眠り運転が招いたというこの事故は、多くの死傷者を生む大事故だった。
平介の妻・直子は大けがを負いその後病院で死亡。娘・藻奈美は仮死状態。そんな中、藻奈美が奇跡的に目を覚ました。
しかし目覚めた藻奈美の中に宿っていたのは、妻・直子の魂だった。
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ここまで読んで下さり、もしも作品について気になった方がいらっしゃったら是非原作を手にとって見てくださいね(^^)
(※以降ネタバレ含みます)
「秘密」というタイトルについて
「秘密」とは何なのか。
きっとここが、タイトルだけ見たときに一番気になる部分であり、キーとなる部分だと思います。
途中までは、見た目は藻奈美・中身は直子というこの現象こそが「秘密」なのかと思わせる展開です。
また、バス事故の真相は何かという点で「秘密」ととらえることもできるかもしれません。
心と体が一致しないことへの苦悩を抱える杉田家。
直子は妻として生きるのか、娘として生きるのかといった板挟みにあい、平介は妻も娘もそばにいるような、あるいはどちらも失ってしまったような感覚に襲われます。
そんな平介と直子は「秘密」を抱えながら暮らす家族として描かれていました。
しかし、タイトルの示す「秘密」は物語の中腹に隠されてはいませんでした…
本当の「秘密」は、物語の最後にあります。
これが私の忘れられないラストです。
忘れられないラスト
奇妙な生活を続ける中、藻奈美の中から直子が消え、藻奈美の魂が一時的に戻ってくるという現象が起こるようになります。
日に日に藻奈美である時間が長くなり、直子が藻奈美の身体の中から消えていく…
そしてとうとう、直子が完全に藻奈美の中からいなくなる時がやってきます。ある時を境に、直子の魂は二度と藻奈美の身体に戻ってくることはありませんでした。
そこからの藻奈美は、様々なことを経験しながら一人の女性として立派に成長していきます。
そして最後に待ち受けるのが、結婚式のシーン。
しかしひょんなことから、平介はある事実に気付いてしまいます。
それは、「藻奈美の中には今もずっと直子がいるのではないか」ということ。
しかし花嫁姿の藻奈美を前に、自分が悟ってしまった事実をあえて伝えることはしませんでした。
おそらく壊れかかってしまった家族を前に直子が下した、自分が“本当の意味で“藻奈美として生活をするという決断。
平介は、自分の知ってしまった事実を伝えなかったのではなく伝えられなかったのだと思います。
直子の選択を知った時、私は自分の脳が麻痺したような感覚を覚えました。
まずは全く予想していなかったこの展開に、そして直子の胸中を思って。
夫の前であっても、妻としての自分をひた隠し娘の藻奈美として生活をする毎日。
自分は確かにここに存在するのに、その存在が決して人に知られることはないという事実。
そしてその胸のふさがるような選択は、自分だけでなく夫を思ってのことだということ。
読者もその全てを悟り、ぐるぐるぐるぐると頭の中を様々な想いが駆け巡ります。
そんな彼女が“藻奈美として”結婚をする。
その出来事の重大さに気付いたとき、物語はもう終わろうとしていました。
平介にとってこの挙式は、娘の結婚ではなく妻の結婚だった。
自分の愛する妻を、バージンロードの先に待つ新郎へ差し出すのです。
そして直子にとっては、夫への伝えられない愛を秘めながら、もう一人の愛する人と結ばれるという結婚でした。
こうして一組の男女が夫婦として結ばれる時、一組の夫婦が終わりを迎えます。
この物語の本当の「秘密」は、ずっと直子のみぞ知るものだったのだということ明かされたラストでした。
「絶対に藻奈美ちゃんを、直子さんを幸せにしてあげてください」
私は新郎に心の底からそう願います。
父と娘の物語となったかに思われた本作は、本当は最初から最後まで夫婦の物語でした。
そんな苦しく切ない「秘密」が、私の忘れられないラストです。
かめこ
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