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「介護サービスを使いたくない」親の説得は、前向きにあきらめる。

『どうしたら、高齢者施設に入居したがらない親を説得できますか?』

という相談に、たびたび乗ることがあります。

80代を過ぎた親御さんの中には、家族が献身的に介護をすることを正しいと感じていて、それを子どもたちにも求める....ということも。

夫に介護が必要になったとき、自分の生活や体調を後回しにして献身的に支える妻の姿も珍しくはありません。

だけど一方の子どもたちは共働きも多く、働き盛りの40代。都心で働き親は地元である地方にいるという遠距離介護も少なくなく、簡単に仕事も休めません。

高齢の親だけでの暮らしに不安もあるでしょうから、「なんとか人の目が行き届く施設に入ってもらえないだろうか」と思う子どもさんの気持ちも分かります。

でも、「説得」の先にいい結果が得られるケースは残念ながらあまりありません。「説得」を考える時点で、親御さんの気持ちがどうしても見えなくなってしまうからです。

だから私は、親御さん自身からSOSが出ない限り、無理に施設入居や介護サービスを押し付けなくてもいいんじゃない。と、そう思います。(もちろん、ケースにもよるんですけどね)

親の介護、すれ違う親子の考え

『親の価値観を押し付けないでほしい』

そう話を聞かせてくれたのは、40代の女性。受験生の子どもを育てながら、大企業の管理職として働いている方でした。少し事例を紹介しますね。

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夫は40代。出張も多く、家事や育児には積極的に関われていないそうです。

両親は80代。父は認知症を患い、ふら〜っと屋外に歩いて出かけてしまうことも。自宅まで帰宅できないことはないものの、昼夜関係なく出歩くため心配も尽きません。

母は良妻賢母として、介護が必要になった夫を献身的に支える。まさに、家族に尽くして生きてきた人。

子どもたちや友人が「迷子にならずに帰宅するんだから、家で寝て待っていたらいいのよ」と言っても、父の後を追いかけて夜の町を歩き回ることもしばしば。

ある時、母にガンが見つかり、1ヶ月間の入院治療が必要になりました。

でも自分の体調のことより、父の生活のことが心配で入院中も落ち着かなかったのだそうです。

退院後、体調が思うように戻らなかったため、母は子どもたちに相談をしました。

「お父さんのお世話ができないから、あなたが泊まりに来て手伝って」

子どもたちにとっては、耳を疑うような言葉でした。

「家族を犠牲にしてまでお父さんの介護をしなければならないって考えられない」、と。

「お母さんも自分のことをそろそろ考えた方が良い。もっと自由に出かけたりしたらいい。お母さんと同じ考えを、私たちに求めないでほしい。今は便利な介護サービスもあるんだから、プロにお願いしたらいいじゃない」

母の体調も心配だから、父のお世話は介護サービスに頼ってほしい。そう伝えたそうです。

ただ、母は気持ちを切り替えることなく、子どもたちの力や介護サービスに頼らず、父の介護を続けています。

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いかがでしょうか?

親の体調を気遣いつつも、自分と母親との価値観のズレに悩む。そんな経験をしたことがある人も、多いのではないでしょうか。

自分の体調をあとまわしに、懸命に父の介護をする母。
無理に説得してでも、母から父の介護を取り上げる必要はあるでしょうか?

介護をすることを実は生きがいと感じているし、使命だとも思っている。

だったら、気の向くままにやったらいいんじゃない、というのが私の考えです。

介護のカタチは、家族の数だけ答えがある

この家族の場合、母親自身が今の生活に満足していて不自由はないと考えていました。

それなら、本人がSOSを出すか、住む場所に対して執着を持たなくなり、自己判断しづらくなった時に、高齢者施設への入居を提案してはとお伝えしました。

それから、安心できる自宅の環境整備について、

1. 火事にならないように調理器具、暖房器具が整備されている。
2. 冷暖房の空調管理が本人もしくは第三者管理ができている。
3. 食事、水分が常に補充され、服用がリモートでも声掛けできる環境である。
4. 防犯体制が整っている。

この4つのポイントを押さえておけば、介護を受ける父も、そして介護を抱え込む母も安心できます。

介護をする人が、いかに満足できるか

これから介護を迎える、80代を超える親御さんたち。

戦中、戦直後に生きてきた世代は、家族の中で介護を切り盛りしていた時代もありました。

その時代に生きた人にとって、介護を家族でやり遂げるというのは、当たり前だという意識が刷り込まれているのは当然のことだと思います。

ただ当時は平均寿命も短く、介護する期間は今と比べ物にならないくらい短かったんですよね。今と昔。介護する期間も、家族形態も、社会の状況も全く違うので、40代の現役世代が親御さんの感覚についていけない...のも当然のこと。

だから、親である父母からSOSが出ない限り、無理やりに介護サービスを押し付けなくても良いのではないでしょうか。

説得をしたり、考えを押し付けるほうが、お互いに「気持ちを受け入れてくれない」という感情が生まれて、不幸になるかもしれないですから。

介護は、2-3年の短期間で終わるのではなく、長いと10年以上続きます。人生の一部と言えるくらいの時間を費やすからこそ、介護する人がいかに満足するかがカギです。

今回の方であれば、母が父の介護を「やりきった」という気持ちを満たすことが、残されたときに後悔で苦しまなくて済むはずです。

親の介護について、親御さんと考えが対立したとき。

真正面から説得するのではなく、安心できる自宅の環境を整備した上で、あとは「考えは変わらない」と前向きにあきらめる(笑)

SOSがでるまで気の向くままにやってもらうーーというのも一つの手ですよ。

介護にまつわる悩みやお願いごとは、わたしの看護婦さんにご相談ください。

介護保険でカバーしきれない病院付き添いや単身で暮らす親御さんの見守り、介護相談などを行っています。

家族に代わって親御さんや親戚の介護をできる人を探している方、遠距離のため思うような介護ができないとお悩みの方、ぜひ私たちまでご相談ください。

「わたしの看護婦さん」は、東京・伊豆・愛知・岐阜・大阪・鳥取・島根・広島など各地に拠点があります。お気軽にお問合せください。


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