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堀田善衛『定家明月記私抄』レビュー

kamakurah

堀田善衛『定家明月記私抄』正・続、読了。若い頃、『方丈記私記』に深く感動していながら本書は、恥ずかしながら未読だった。堀田善衛といえば『広場の孤独』が、読書に夢中になり始めた70年代中学生にとっては必読書であり、その勢いで、当時出版直後で話題になっていた『方丈記私記』を、自らが生きてある時代の中で、古典をどう読むべきかの一つの規範として受け止めたことを昨日のことのように思い出す。そのまま、『ゴッホ』や本書をなぜ追いかけなかったのかは記憶のどこを探ってもたどりつけないのだが、書名だけは刻まれていて、今の仕事で実朝と万葉集との繋がりを調べているなかで同書通読を思い立ち、古書サイトで購入し、少しゆっくりと読み通した。
頼朝出兵の年から書き始められ、承久の乱を経て『御成敗式目』が制定され,小倉百人一首
成立のきっかけにふれつつ仁治2年1241年80歳で没するまで続けられた『明月記』は、京都が鎌倉をどう見ていたかを知る第1級の資料である。京大派の学者たちが、本書を重視する理由がよく分かるものの、堀田善衛がそうしたように原典を読もうというところまでの勤勉さはすでになく、堀田善衛がどう読んだかをもってよしとしてしまった。
それでも、とくに続篇で語られる実朝像、泰時による『御成敗式目』が目指したものについての筆者観に教えられるもの多く、終始興味深く、一頁一頁をワクワクしながらめくる時間となった。品格高く、知識量豊富な語り口は、司馬遼太郎でも体感したが、やはり格別。間をおかず再読したい名品である。

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