焦るオカマ

10年ぶりにコントレックスを買った。コントレックスとは美容にいいらしいヨーロッパの硬水である。よく知らんが美容に気を遣ってるおねーさま方がよく飲んでた。今も飲んでる人多いんだろうか？

私はコントレックスはあまり好きではない。硬水という名の通り、なんか硬くてのど越しが悪いから。今回買ったのはパン作りの為。美味しいフランスパンを焼くために硬水が必要なのだ。

ドラッグストアでコントレックスを見つけ、レジに持っていく。レジの店員さんは黒髪を後ろでまとめた可愛らしい女の子。名札を見る。「まえだ」ちゃんかぁ。

私はレジなどでは極力しゃべらない。オカマなのは見た目と体格でバレバレなのだが、それでも女の服を着て野太い低音ボイスはなかなかキツイものがある。夜の街だと気にならないんだけどね。お昼のドラッグストアはね。そんな嫌なら女声出るようにボイトレすればいいのだが如何せんめんどくさい。努力が死ぬほど嫌いなのよ。うふふ。

そんなわけで今日もレジでは無言。「レジ袋はご利用ですかぁ～？」にもジェスチャーで返答。

そこで思った。私、めっちゃ態度悪い客になってないかしら？

前からそうなんだから今さら気にすることでもないのに。なんで急にそんなこと思ったんだろう…。そうか、コントレックスか。

こないだツイッターで「ヨガマットもってるババア客、全員態度悪くて草」というコンビニ店員さんのツイートを見たのだ。もちろん爆笑した。

（コントレックス。これはヨガマットと同等か、それ以上の「愛想悪くて鼻につく美意識アイテム」ではなかろうか？私は今、自分が嘲り笑ったヨガマッターたちと同類に見えているのでは？いや、同類どころかどっからどう見てもオカマだぜ？ヨガマッター以下。しかもヨガマッターたちは身体動かすだけまだいい。私はパンを焼くんだぜ？そんですぐ食うんだぜ？動きもせずにだぜ？大丈夫かおい！オカマ！しっかりしなさい！！）

まえだちゃんがお金を取っておつりを出すまでの数秒間にこんな感じのことをぐるぐる考えていた。わずか数秒の間の出来事。この頭の回転力が仕事では一切発揮されないのはなぜかしら。

一人で勝手に恥ずかしくなった私。早く帰りたい。一刻も早くこの場を離れたい。自意識過剰でごめんなさい。

おつり受け取って立ち去ろうと思ったら、

まえだ「こんなこと言うと失礼かもしれませんが…お綺麗ですねっ！」

おいおいおいおい。

ちょっとやめてよ。

これ返事したらしたで恥ずかしいしさぁ、無言で立ち去ったらヨガマッターだしさぁ。詰んだじゃん。ちょっとまえだちゃん。やめて。ウインクでもすればいいの？いやいや、どんなオカマやねん。欧米帰りか。うぜえわ。

私「これねっ！パンをねっ！焼くの！コントレックス！」

は？なにを言っているんだ？大丈夫か私？あたま生きてるか？

まえだ「そうなんですかぁ～！すごい！」

私「ありがとっ！」

いや～、、、死にたい。