気付けば私も、貧困女子。(前編)


人から聞いた話だが、内閣府か何かの統計によると、現代でも、約4割程度の女性が、「専業主婦になりたい。」と思っているそうだ。

私には無縁だと思って生きてきた。

私は学歴も申し分ない。

容姿だって、平均的。

後は、私が真面目に横道それず働きさえすれば、私はそこそこのキャリアウーマンなのだ。

結婚には目もくれず、
男性のように働き、
そこそこ貯まったお金を、旅行にお酒に語学、
貴族のような趣味に充てて、生きていけばいい。

幸せそうな人生じゃないか。

2017年4月、初めて入社した職種はサービス業で、
私は法人営業の担当になった。

大学時代の同期と比較すると、圧倒的に安月給のサービス業。
それでも営業担当という事で、社内の別部署よりは、多少は給料は高かった。

それに加えて、実家住まいだった私は、
生活にかかる費用が圧倒的に少なかった。
社会人になったということで、いくらか家にお金を納めてはいたけれども、家賃と比較すれば、何の事はない。
その他、水光熱費は勿論、細々とした生活に関わる用品を買う事もない為、自動的に自由に使えるお金が増えた。

今思えば、独身の実家住まいは、貴族のような生活だ。

そんなに沢山稼いでいなくても、使えるお金がそこそこある。

実際私も、働き始めて2.3年の間、旅行に服、韓国語教室、ダンス、栄養学の講座や宝石等、沢山の自己投資と浪費を行った。

そのクールにおける私の営業成績や、会社の業績により、ボーナスは多い事もあれば少ない事もあったけれど、そもそも生活に関わる費用が少ないので、そんな事ぐらいで、財布の紐を絞めるような事もなかった。

ところが昨年、コロナの影響により、
会社が危機的な状況になった。

特別休業と名の付く休みが増え、
基本給がカットされ、ボーナスは出なかった。

そして何故か、このタイミングで、
私は家を出る事を決めた。
会社が異動になったわけでも、ましてや会社を辞めたわけでも、結婚でも、彼氏との同棲でもない。
ただただ、自立の為に、自分自身の力だけで生活がしてみたく、1人暮らしを始めた。

「今じゃなくても良いんじゃない?」という母からの至極真っ当な声掛けを完全に無視し、
自由を手に入れた。
流石に痛い出費だと思っていた引っ越し資金も、「貴方は公立高校で国立大学、ずっと実家から通ってくれてお金がかからなかったから、
引っ越し資金は出すよ。」と両親が言ってくれたお陰で、心配せずに済んだ。

そうして約1年と少し前、実家から車で約20分ちょっと、静かだけれど街中へのアクセスの良い、エレベーターのない、築20数年のマンションに住み始めた。

壁紙が、前の住人の好みか、元々全部屋そうなのか、片面だけレンガ調になっており、天井もワンルームにしては高かった。
自転車で行ける距離にオーガニックスーパーもあり、実家で十分に発揮出来なかった、食への拘りも実践出来た。
引っ越し資金を捻出せずに済んだ分、ちょっと良い調理器具も購入した。


でも欲を言えば、自炊をする私には、1口コンロだけのキッチンは、やはり狭い。
運動不足解消にはなるけれど、真夏の暑い日、
4階までのぼるのは、少々キツい。
洗面所とお風呂場が同じ場所にあるのも、ちょっと微妙だ。

だけど、仕方がない。

もう私は、独身貴族ではない。

贅沢と引き換えに、自由を手に入れたから。


少ない給料と、貯金を切り崩す生活を続ける中、昨年末に、もう1つの自由を手に入れた。

3年9か月勤めた会社を退職した。

ここから、僅かばかりの退職金を頼りに、私の長い冬が始まる。


(後編に続く)

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?