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エンタメBtoCから業務系BtoBにきたPMのアンラーニング集 〜ぼくのかんがえたさいきょうのサービスじゃだめなわけ〜

こんにちは、かこもえ(@kakomoe3)です。
株式会社カミナシ🐐でPM(プロダクトマネージャー)をしています。

さて今日は、タイトル通りBtoC企業からBtoB企業へ転生転職した私のアンラーニング集と題して、以下の問いに自分なりの結論を出していきたいと思う🗒

🤔 BtoC PMは、BtoBでも活躍できるのか?

まあこんな名前の記事を書いているので察しのいい方はすぐにわかると思うが、結論は「Yes」だ。

なんで「Yes」なん?具体的にどこが活かせるん?逆にアンラーニングせなあかんとこは?

そんな細かい話に興味がない方はここで終わってもらって大丈夫。な、泣かないもんね😂

BtoCとBtoBのプロダクトの違いと共通点

さてBtoC PMがBtoBでも活躍できるのかを考えるために、まずはBtoB PMになって感じたいろんな違いについて、6つの観点でまとめてみる。

ぼくのかんがえたさいきょうの…..


1. プロダクト開発・デリバリー

🔵 プロダクト戦略

プロダクト戦略は、BtoBはMarket Inが多い。すでに課題が顕在化しているところにプロダクトとして課題解決しにいくもの。
一方で、BtoC、特にエンタメなどは「課題」が顕在化していないことが多く、潜在的な「想い」「願い」のようなものを実現できる武器を与える。
「何者かになりたい」という潜在的な想いをカタチにしたPocochaのようなサービスも然り。
本当に欲しいものを顧客は知らない、と言うけれど、BtoCの方がよりその傾向は強い。

有名なプロダクトの分類として、薬に例えるものがある。

BtoCはビタミン剤的プロダクトが多く、逆にBtoBは鎮痛剤的プロダクトが多い。ビタミン剤的プロダクトは、基本的にはProduct Outでしか作れない(と思う)。

あなたのプロダクトはどのタイプ?


🔵 デリバリーの単位

BtoBに関わり初めて「MSP(Minimum Sellable Product)」という言葉を知った。
これは顧客が購買してくれる最小の価値を指すもので、顧客が最小の価値を感じるMVPとは少し違う。

基本的にBtoCサービスはMVPで出し、失敗を許容し小さく検証せよというのが鉄板だが、BtoBは基本的に無料で使えないものが多い。

そのため、MVPで売りに出そうとすると

「んーまあ便利そうやけどお金を払うだけの価値はないわ。だってあの機能もこの機能もないんしょ?業務これだけで回らんから余計手間かかるで?お前ほんまに私らの業務理解しとんのか?」
とある営業先の部門長

ということが発生する。
実際その通り言われることはほぼなく、なんとなくテンションが上がらず購買に至らない結果となる。


🔵 新機能デリバリー時の連携

ここも大きな違いがある。
BtoBの中でもSaaSは、継続的にサービス(プロダクトやサポート、サクセス)を提供する前提で作られているものが多い。そして、実際カミナシはCS(カスタマーサクセス)がお客様とめちゃ密につながっている。

BtoCでは、プロダクトをリリースさえすれば、価値があるものであれば即時にお客様が買ってくれる。

BtoBは、もちろんサービスにもよるが、数ヶ月のスパンでお客様に対してアプローチし、購入していただくこともざらだ。

そのため、プロダクトをリリースした後にお客様に営業活動をし出すと、数ヶ月単位での機会損失になりうる。
また、既存のお客様の業務を止めてしまってはいけないため、事前にお客様に丁寧に変更点を伝えるなどする必要がある。

そういった性質もあり、BtoBではSalesやCSチームと、リリースに向けてかなり密にコミュニケーションをとり、

  • いつから営業資料に組み込むか

  • どこまでなら(営業フェーズの)お客様に伝えていいのか

  • 既存のお客様にトライアルで使ってもらいフィードバックをもらえるか

など、密に連携することでプロダクトの機会を最大化することができる。

ただそこにはまた、リリース時期をコミットしたくないプロダクトチームとリリース時期をコミットしたいセールスチーム以下略についてはまた別の機会に話したいと思う👋


2. 課題の発見・仮説検証

発見!👀

🔵 課題の発見手法

顧客の課題の発見のタネについては、BtoBの方がなにもせずとも得られる情報が多い。
それは、お客様がすでにいらっしゃるため、そこから直接的にVoC(Voice of Customer:顧客の声)を拾うことができるからだ。
逆に定性情報が非常に多いため、そこから真の課題を見つけ出す力が必要になってくる。

BtoCは固定の顧客と契約をしているわけではないが、顧客の反応はおおよそ定量データに表れる。
使いにくければすぐに離脱するし、気に入れば何度も立ち上げて使ってもらえる。
そういった意味では、わかりやすいのはむしろBtoCサービスかもしれない。

BtoBで価値が届けきれていないプロダクトは、数ヶ月後にチャーンとなるケースが多いため、プロダクトだけではなく、CSも含めあの手この手で先行指標を見つける必要がある。


🔵 (プロダクトに活かせる)生の声の得やすさ

上記と近いが、SalesやCSが線でお客様とつながっているため、生の声はBtoBの方が圧倒的に得やすい。
BtoCの生の声は、たとえば口コミやストアの評価がそれにあたるが、ネガティブな発言が匿名という防具をまとって表出するケースが多い。

そしてそういった顧客に、「すみません、プロダクトよくしていきたいんですけどインタビューを受けてもらえません?」と伝える手段もあまりなかったりするし、その顧客が実際にヘビーユーザーなのか、それともただの荒らしなのか判断も難しい。

そういったこともあり、活かせる生の声を得るための労力はBtoCの方が大きくなる。


🔵 仮説の検証手法

BtoBでMVPという考え方がないわけではないが、一度出した機能をなくす、というハードルはBtoCサービスよりも大きい。
そのため、機能の必要性の確度を上げるために、事前にプロトタイプテストやユーザーインタビューを念入りに行う。

BtoCは上述の通り「顧客に直接聞く」というハードルが高いし、一度出した機能をなくすという判断もBtoBよりはまだやりやすいため、MVPで小さく出して、それが受け入れられたかを定量的に判断しイテレーションを回していく。


3. 課題解決

結局課題解決は全員野球⚾️な気もする

🔵 課題を解決するチャネル

特筆したいのは、BtoBはプロダクトだけでお客様の課題を解決をしなくてよいケースも多々あるということだ。
例えばサービス導入をしていただいたお客様に、新入社員よろしく「オンボーディングプログラム」を提供したり、日々困っていることを解決するために問いかけたりすることができる。

本来プロダクトで全て解決できるのがよいのでは?と思いがちだが、お客様がITサービスに馴染みのない方々の場合、それだけで解決できないことも多い。
また、BtoCサービスと違い、「分からないと離脱する」ではなく「お金を払っているから、分からなくても聞いて解決しようとする」というお客様側の行動の違いもある。

そのため、プロダクトだけではなく、ビジネスチームも一緒にお客様の課題を解決していくことが基本の振る舞いとなる。


4. UI/UX

✨わかりやすさはいずれも正義✨

🔵 わかりやすく明瞭なUIUXの必要度

BtoCは、顧客の頭に「?」が浮かんだ瞬間に離脱という結果になるので、わかりやすさにこだわり切る必要がある。

BtoBもわかりやすさは必要で、私はむしろ圧倒的なわかりやすさはプロダクトの優位性になると考えているのだが、事実としてBtoBは人による教育ができたりする。
初見でわからない複雑なUIでも「こういう使い方をするんですよ」とCSから教えてもらい、学ぶことができる。
むしろ、最初から有料サービスとして利用するケースが多いので、使い方がわからないから使うのやめました、とは口が裂けても上司に言えない(笑)

勘違いしてほしくないのは、BtoBではわかりやすいUI/UXが不要だと言っているのではなく、それが即時離脱には繋がらない、ということだ。


5. グロース

穴あきバケツをふさぐぞ🪣

🔵 利用顧客を増やす役割

プロダクトの利用顧客を「直接的に」増やす役割についても違いがある。
BtoBの場合は、「マーケティング⇄インサイドセールス⇄フィールドセールス⇄CS(カスタマーサクセス)」というTHE MODELに代表される鉄壁のセールス・CSチームが顧客をナーチャリングし獲得していく。

お客様も大きな投資をするわけなので、勝手にプロダクトを使って、よし、君に決めた!とはなりづらい。営業によるサポートがあり、価値を納得し、購買していく。

プロダクトチームがすべきは、お客様への価値を高めるプロダクトにすること。
それにより「受注率を上げる」「獲得のフックになる」「新規の市場を開拓する」ための武器をセールス・CSチームに提供する役割を担うことが多い。

一方でBtoCは、それを販売してくれるセールスチームがいるわけではない。
そのため、デジタル・コンテンツマーケティングやプロダクト起点での拡散、コミュニティの形成など、むしろプロダクトを起点としてグロースするためのモデルを構築する。


🔵 利用顧客を維持する役割

もう本当にCS様様という感じなのだが、BtoBで利用顧客の維持に欠かせないのがCSだ。
カミナシのCSチームは、これでもかという丁寧なサポートでお客様に寄り添っておりとても驚いた。

残念ながらBtoCはそういう直接的かつ継続的な接点が持てるようなものではないため、プロダクトを中心に利用顧客を維持する。
最近では、プロダクトだけでなく、コミュニティを活用し顧客のロイヤリティを上げている、むしろそこも含めた体験を設計しているサービスも多い。


6. PMとプロダクトの関わり

ぼくのかんがえたさいきょうの…

🔵 プロダクトを顧客として使えるか?

ここは大きな違いだ。
BtoBの開発者は、プロダクトを顧客として使えない場合が多い。
例えばカミナシは食品製造業やホテル、物流業などさまざまな業界にサービスを提供しているが、では自分が顧客になって毎日業務でカミナシを使えるか?でいうと、使えない(体験レベルはできる)。

BtoCの場合は、自身がターゲットではない可能性もあるが、基本的には顧客としてプロダクトを使うことができる。
どれだけ圧倒的に自分のサービスをイチ顧客として使い倒すか?ということが、PMとして成果を出す一番の近道だったりもする。

ちなみに本当にどうでもいい話だが、私の夫は、婚約した翌月に自分の開発していたサービス(ゲーム)に月30万もの課金をしており、会社からもらった給与の大半を会社に還元していた。


🔵 プロダクトに対する主観の入り方

つまりここに「〜ぼくのかんがえたさいきょうのサービスじゃだめなわけ〜」という副題の回収が入るのだが、BtoBサービスは「自分個人の主観」はほぼ的を射ておらず「対象の顧客に憑依した主観」を入れなければならない。
それってつまるところ客観やん、という話ではある。

客観的に顧客を観察して理解して深掘りつくして、はじめて憑依した主観を用いることができる。

BtoCも同様のことをする必要はあるが、特にエンタメ系のプロダクトはロジックで説明できない面白さや楽しさが顧客を引き付ける。そして、人の「感情」を揺さぶる体験をプロダクトで作っていく。
それは突き詰めると主観であり、主観をどう周囲の人間に説明し理解してもらうか?というスキルが必要だったりする。


BtoC PMがBtoBにきてアンラーニングしたこと

さてここまでBtoBとBtoCの違いについて書いてきたが、自分で書いていて結構違うなと思った。
私がBtoBの世界に来てアンラーニングしたことを、3つ挙げてみようと思う。

🙅‍♀️1:PLGが正義ではない

BtoCはプロダクトが価値のど真ん中に存在するので、PLG(Product-Led Growth)が正義という思考になりがちで、事実私もそういう思考を持っていた。

一方で、日本のBtoB SaaSでPLGを実現できているものは、ほぼIT関連職を対象にしたものばかりなのではないかと思う。
アメリカでPLGを実現できているSaaSがあるのは、国全体のITリテラシーの差であることは想像できるし、
日本企業におけるITリテラシーが低い現状では、プロダクトとビジネスチームが両輪でこじ開けていく市場なのだと改めて感じている。

ただし、そこにプロダクトが甘んじるのはだめで、お客様がセルフオンボーディングでき、自力でサクセスできる体験を作っていきたいなと思う。


🙅‍♀️2:お客様の課題解決の手段はプロダクトだけではない

改めてBtoB SaaSに来て思ったことは、ビジネスとプロダクトは両輪であるということだ。

特にCSチームがお客様の課題をサービス実装という手段を用いず機動的に解決していく姿は見ていてとても心強い。
お客様はプロダクトが欲しいのではなく、課題解決をしたいのであって、その手段がプロダクトだけではないというのは目から鱗だった(厳密にいうとBtoCでもプロダクト主導のみで課題解決していないものもあるといえばある)。

逆に、CSチームがお客様の課題を解決するための武器を作っていくという目線もプロダクトチームには必要なのかな、と感じたりもしている。


🙅‍♀️3:MVPではなくMSPを見極める必要がある

BtoBでは、新規でプロダクトや機能を作る際「購買してもらえるだけの価値があるか」という考え方を持つ必要がある。

もちろんMVPで提供するケースも存在するが、BtoBの場合は、新機能や新プロダクト、つまり顧客に向けた新しい価値となるものをリリースする場合に

  • プライシングの見直しが可能となるか?

  • クロスセルやアップセルが可能となるか?

といったことを考慮しながらビジネスチームと連携していく。
この場合、MVPではほぼ上記に寄与しないケースが多く、またMVPではお客様の業務をより煩雑にしてしまうことすらある。

MSP(Minimum Sellable Product)を意識してデリバリーする必要があるというのは新しく学んだ考え方だった。


BtoC PMがBtoBにきて活かせる強み

こんなにも違うと、BtoCのPMは、BtoBにジョブチェンジするとLv.1からスタートなのかと言われる気がする。
いやいやそんなことはない。むしろ活かせる強みがあると思っている。

そもそも、お客様に価値を届ける。そのために七転八倒する役割は、BtoBだろうがBtoCだろうが同じ。本質は変わらない。
その上で、BtoBに転生したときに強くてニューゲームになるスキルがいくつかありそうだ。

  • 自然に顧客の行動を変えるために考え抜いてきた力やわかりやすく明瞭なUI/UXへのこだわり。BtoBはCSという最強のサポーターがいる。そこにUI/UXをこだわり切るプロダクトチームがいれば鬼に金棒だ👹

  • ゲーミフィケーションや行動経済学など、人の行動を自然に変えるための知見。これはゲームやエンタメだけに必要なものではない。複雑なBtoBサービスだからこそもっと活用の余地はある🎮

  • 定量データを見ながら素早くイテレーションを回す習慣。このあたりはもしかするとBtoCのPMの方が慣れている可能性もある(ここは有識者に聞いてみたい)🌀

  • コミュニティマーケティング。AWSなどBtoBでも有名な例はあるが、わたしの観測する限りBtoCのプロダクトの方がうまく使いこなしている例が多そうだ🤝

こんなかんじで、きっとBtoCからBtoBにジョブチェンジしてもLv.1からスタートにはならないし、むしろ固有スキルをもっている状態からスタートできるのではないかと考えている。

BtoC PMは、BtoBでも活躍できる!

つらつらと書いてきたが、BtoC PMの方がこれを読んで、BtoBにも挑戦してみたいかも、できるかも、と少しでも思ってもらえればうれしい。

そして逆に、BtoBのPMも、BtoCにジョブチェンジすると、今までと違った世界が見えて楽しいかも、と思ってもらえるとさらにうれしい。

わたしが見えている世界も限定的なので、他にもこんな違いがあるよー、とか、これは違うかも、というのがあったらぜひぜひ教えてくださいませ✨


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