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麻雀放浪記1

時は10数年程前にさかのぼる。


私が通っていた大学は山奥にあり、学生たちの間では街に繰り出して遊ぶという習慣はあまりなかった。

講義が終わった後の集合場所は誰かしらの家であり

夜な夜な酒、ドラッグ、セックス・・・



ではなく酒、桃鉄、64に明け暮れていた。


大学2年に入る頃だったか、その愛すべき日常に友人が一石を投じた。



そう、麻雀である。


友人たちは数ある遊びの一つ、という感じで楽しんでいたが私はこのゲームにのめり込んだ。


近代麻雀が愛読書となり、ニコニコ動画の検索欄は雀鬼、MONDO21といった言葉があふれるようになった。


勝ち負けはもちろん重要だったが、何より気の合う仲間で麻雀をするあの空間が好きだった。



27時に牌をツモりながらすすったペヤング
なぜか嶺上牌に挟まる陰毛
夜明け、勝負が終わった後に食べた牛丼


どれもかけがえのない思い出である。



しかし4年を迎えた頃、声を掛ければすぐに集まる事ができた仲間達とはなかなか時間が合わなくなっていった。


彼女出来た奴、自主映画製作する奴、単位やばくてそれどころじゃない奴。


それに加えてバイトと就活だもの。
そりゃあ合わないよね。


当時のネット麻雀は天鳳というものが主流であった。
私はそれでしぶしぶ欲求を満たすことにした。


そうして最後に友人と卓を囲んでから
一週、二週、三週と過ぎていったある日。


いくら打っても満たされていない事に気付く。



牌をツモる感覚、牌を打つ感覚、牌を倒す感覚、それが離れない。


私は「仲間で麻雀をするあの空間」が好きだったはず


否、私は牌を使って麻雀がしたいのだ。誰とでもいい。牌を使って。




こうなってはもう遅い。


私は「牌の病」に犯されていたのである。



確か…最寄り駅の…あの怪しいビルに…







「あるじゃない。雀荘」



そして青年は一人バスに乗り込み夜の街へ消えていくのであった。


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