東海道徒歩旅[12日目]

実は、昨日はあんまり快眠できていなかったのだけれど、今朝はよく寝れた。もしかしたら、あんまり寝れていなかったのが精神的にまいっていた原因なのかもしれない。
私が泊まっていた部屋は、入り口がカーテンで仕切られていて、厳密には部屋ではなかったのだが、私の他には誰も泊まっていなかったみたいで、すごく快適に過ごすことができた。

今日は朝の6時半頃に出発。宿から旧東海道は少しだけ離れていたので、合流してからのスタート。合流するまでに道を迷ったりもしたが、とりあえずオッケー。

歩いていると、白色の野良猫が私の横を通り抜けていった。野良猫とは思えない、真っ白な、綺麗な毛をしていた。野良猫は私の横を通り過ぎる瞬間、私を少しだけ見つめると、逃げるようにスピードを上げて駆け出した。
私が前を向いて歩き出すと、踏切の音がした。ちょうど踏切が下りるところだった。
しばらく待つと、電車が凄いスピードで私の前を駆け抜けた。電車は私の方を見なかった。

富士山が見えてきた！
ズームしているので画質は悪いが、肉眼だとハッキリと富士山の形が見えた。

その後は20キロほど歩き、峠にさしかかる。
20キロほど歩いてからの峠だったせいか、宇津ノ谷峠(昨日越えた峠)の時よりも疲れた。すぐに息が上がる。

木々の隙間から、わずかに海が見えた。階段を登っていくと、ひらけた場所があり、そこからは見える景色は最高だった。絶景だ。

富士山がわずかに見えた。頂点が雲で隠れていて、見えているのは山の一部分だけだったけれど、それは圧倒的な存在感を放っていた。
カメラにはなかなかうまく映らなかったけれど、私の目には確かに見えた。期待通りの富士山だった。

思わず笑みが溢れた。そして、それと同時に、この景色を見て笑っている自分が何よりもおかしいと思った。

しばらくこの景色を見てぼうっとしていた。私はこの景色に感動しているのだ。周りには誰もいなかった。この旅の中で、私はずっと一人だった。この壮大な自然の中で、広大な海の中で、私はちっぽけな一つの粒でしかない。その事実が少しだけ寂しくて、けれども私はそれを笑えるような気がした。

下の方からわずかに波の打つ音が聞こえた。それは車の走行音と混じって、荒々しい音になって私の耳に届いた。コンクリートの壁に打ちつけられて、波が泡立っているのが見えた。

峠を越え、しばらく歩く。汗が引いてきて寒くなってきたので、おしるこでも飲むか。

実はこの3日間密かにずっとおしるこを飲みたいと思っていて、自販機を見つけるたびにおしるこ売ってないかなぁとなんとなく探していたのだが、今日やっと見つけた。あんまりおしるこ売ってる自販機ないんだよなあ。

峠を越えてからはゆっくりと宿まで歩いた。
疲れももちろんあったが、この街の感じがとても好みで、色々と眺めたり寄り道しながら歩いていた。
この辺りは建物も結構密集しているため、細かい道が多くて、裏路地のような道が線路に続いていたりした。建物と建物の隙間から見える海もまた素敵だった。

流石に2日連続で峠越えはなかなか体にきている。ただ、局所的な痛みは無いので、とりあえず大丈夫そう。足の全体的な痛みは疲労からくるものだと割り切って歩けるのだが、局所的に痛いと、これは怪我に繋がるやつではないのかと不安になる。今回は大丈夫そうなので、そのまま歩き続ける。

17時くらいに宿に着いた。なぜかベッドが２つある。
受付の人に、「どこから来たんですか？」と聞かれたので、「今日はさった峠ですね」と答えると、えらく驚いていた。東海道をずっと歩いていると言うと、「へぇ〜〜！」と驚いていて、なかなか嬉しいリアクションだった。

その後、風呂に入る。大浴場のある宿だったので、風呂場へ。これまで泊まった宿では、大浴場の無いところばかりだったので、足を伸ばせる風呂はやっぱり良いなと改めて思った。まだ早い時間だからか、客は私の他には誰もおらず、貸切状態だった。

体を洗っていると、「お湯が熱いから水出しとくねー！」とおばさんが入ってきて、蛇口を捻ってからすぐに出ていった。体を洗ってからお湯に手をつけると、お湯は熱湯のように熱い。これじゃあ入れないな、と思ってしばらく待つ。ボコボコと泡のようなものが下から噴射されているのをじっと眺めていると、沸騰しているように見えた。ここは地獄か？と頭の中でツッコミを入れる。

なかなか良い温度にならなかったので、しばらく掛け湯をしながら待つ。なんとか入れるくらいの温度になったので、ゆっくりと入る。まだ熱いが少し我慢しつつ入る。とろけそうな気持ち良さだった。私は風呂があまり好きではないが、疲れが溜まった状態での風呂は最高に気持ちが良いな。

今日はたくさん書いたな。昨日はあんまり書けなかったので、その分を取り返すつもりで書いた。
今日は良い1日だった。明日も良い1日にできたら良いなと思う。眠い。

静岡→富士
歩いた距離ー37キロ