見出し画像

東海道徒歩旅[15日目]

朝、電車の音で目が覚めた。いや、もしかすると、目が覚めた瞬間に電車の音が聞こえただけかもしれない。電車の音は、そんなにうるさくはなかった。不思議な夢を見た。目が覚めた瞬間、見ていた夢の記憶はすぐに薄れてしまって、私の頭の中には、水彩絵の具をさらに水で溶いたみたいな、淡い色しか残らなかった。その夢は私をノスタルジックな気持ちにさせた。ふと横を見ると、そこには誰もいない。窓から部屋に向かって、白い光が一筋伸びているだけだった。
朝、少しだけ寂しかった。多分、あの夢を見たせいだろう。寂しさを振り払うようにして宿を出る。今日もまた歩かなければならない。

画像1

7時頃宿を出発する。まずは箱根峠を下りていく。

画像2

画像3

約1時間半かけて坂道を下っていくと、箱根湯本駅に到着。

画像4

画像5

この辺りは撮り鉄と思われる人が結構いた。私も何枚か電車の写真を撮ってみたが、詳しくないので、何か珍しいものでもあったのかよく分からない。
みんなが立派なカメラを構えている中で、私だけiPhoneで撮っているのは少し恥ずかしかった。

画像6

そこからは旧東海道に合流して先を進んでいく。途中道を間違いかけたが、合流できた。久しぶりにちゃんとした道路を歩いている気がして、少し安心した。



ファミレスで休憩+早めのお昼。朝を食べてなかったので、空腹だ。あと4時間くらい歩けば宿に着くので、少しゆっくりしようかな。

ファミレスを出たらもうすっかり昼も過ぎてしまっていて、暑い。完全に春の気温だ。欠伸が出た。1号線に沿ってしばらく歩く。

画像7

子供の頃、同じ色のタイルしか踏んではいけないという遊びをしながら歩くことがよくあった。自分の想像の中のタイルの下には、人間なんて一瞬にして溶かしてしまうような高温のマグマや、人間を喰い殺してしまうような凶暴なサメがいる海があって、その色のタイル以外のタイルを踏んでしまうと、そこへ落ちて死んでしまう。その交互に並んだ色彩の、一方だけを踏んで歩く自分の頭の中には無限の可能性が広がっていて、自由に街を旅することができた。
大人になった今でも、無意識のうちに同じ色のタイルを踏みながら歩いていることが往々にしてある。歩きながら、そんなことを考えていた。成長した自分の中にも、まだ子供の部分があって、今はもうタイルの下にはマグマも海も広がっていないけれど、無意識はまだ同じ色のタイルを踏み続けている。
見上げると空が綺麗だった。「自由」を広く定義付けると、私はまだ「自由」だと思った。もしかすると、そう信じてみたかっただけかもしれない。

画像8

遠くに海が見える。水色の海を見ながら歩く。


ふと空を見ると、まだ昼の2時半にもかかわらずうっすらと白い月が見えた。空の明るさに負けないくらいの光を反射している時、月は昼間でも見えることがあるらしい。
そういえば、小学生の時はこうして空を見上げているのが好きだった。小学生の時は朝9時くらいに休み時間があって、いつもグラウンドに出てサッカーをしていた。その時、ふと空を見上げると、太陽とは真逆の方向に月が出ていて、不思議な気持ちになったことを今思い出した。夜ではないのに月が見えているのが不思議で、太陽と月が両方見えて得したような気持ちになったことを思い出した。

画像9

画像10

宿に到着。
毎回毎回、国道1号線などの普通の道路ををひたすら歩くのがなんだかんだいって一番キツい。峠とか、山道に比べると断然こっちの方がしんどい。しんどい以外に特に書くこともないので、書いていない時間が一番しんどいかも。
明日は普通に観光するかも。とは言え、移動手段は全て徒歩にする予定なので、たくさん歩くことに変わりはないはず。


箱根→平塚
歩いた距離ー34キロ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?