デジタル恐い
先日、早野にある「かつ庵」というチェーン店に初めて行った。
午後2時を過ぎた中途半端な時間だったが、けっこうお客さんがいた。
カウンター席につくと、目の前に大きな紙のメニュー表がある。
ロースかつ定食を食べたいと思っていたが、かつの量や、味噌汁のオプションなどが選べるらしい。
店員さんが水を持ってきてくれたので、メニュー表を見ながら、
「えーと、このロースかつ定食で、かつは・・120グラムにしよう。それで、味噌汁をとん汁に変えて・・。うん、それでいい。それお願いします」
と言うと、店員さんの指が私の背後から伸びてきて、目の前にあるタブレットを指した。
「注文はこれでお願いします」
周りの客が、肩を揺らして笑っている・・気がする。
なんだ、それなら、私の注文を聞く前に、注文はタッチパネルで、と教えてくれたらいいのに、とちょっと店員さんを恨んだ。
その数日後。
新百合ヶ丘駅前のケンタッキーフライドチキンに、開店前から並んだ。
オリジナルチキン5ピースが、通常約1500円相当のところ、1100円というセールだ。
ケンタッキーなんて、高いから滅多に行かないが、久しぶりに贅沢しようと思ったのだ。
開店の10時の15分前に、並んでいるのは私一人だったが、5分前くらいになると、後ろに2、3人並んでいた。
10時になり、私は入店し、一番乗りで注文しようと思ったのだが、店員さんは、私よりも、私の背後にある、開きの悪い自動ドアを気にしている。
私がとまどっていると、後ろに並んでいた人たちが、次々と店頭のタッチパネルの注文機で注文を始めていた。
(あ、タッチパネルで注文するのか・・)
ケンタッキーの注文の仕方が変わったことに、ようやく私は気づいたが、店員さんも、呆然と立っている私にようやく気づいて、
「ご注文は?」
と聞いてくれた。
横でタッチパネルを操作する客たちが、肩を揺らして笑っている・・気がした。
こういうことが立て続けに起こると、老人としてはヘコむ。
11月にオープンした新百合ヶ丘のヤオコーも、オープン当初こそ有人レジを大々的に開けて対応していたが、1週間もすれば、有人レジはほぼ閉じられて、セルフレジに移行した。
スーパーのセルフレジは、イオンで訓練されていたので対応できたが、それでも億劫であることは変わらない。
人間が対応してくれない・・。
老人としては、とくに私のような単身老人としては、買い物のときくらい人と話したいと思っているものだが・・。
そういえば以前、私は、「海外旅行に行きたくなくなった5つの理由」という記事を書いた。
それに、最近、「デジタルが恐いから」という理由がくわわった。
YouTubeで見ていると、最近の空港は、チェックインも、書類審査も、万事がデジタルで進行し、とても老人の手に負えるものではなさそうなのだ。
コロナを経て、非接触型のデジタル化がいっそう進行したらしい。
実は少し前、韓国に行きたかったのだが、デジタル化が一段と進んでいる国だと聞いて、行く気が失せた。
戒厳令よりデジタルが恐い。
コンビニとか行っても、ハングルのタッチパネルの前でアワアワするのが目に見えている。
YouTubeを見ていると、今やタイの屋台なんかでも、すべてスマホをかざしてバーコードで買い物をしている。
バーコードで買い物をする、という仕組みがいまだにわからない。
東南アジアの屋台で、デジタルがわからずにアワアワしたくない。
今にアジアの屋台にも、「ロボット」しかいなくなるだろう。
スマホがなくても、電波を気にしなくても、旅行できた昔が懐かしい。
No Country for Old Men という映画のタイトルが頭に浮かんだ。
<参考>