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インクスタンドが今のカタチになった裏側①

2021年1月10日(月・祝)

来月に、インクスタンドが移転リニューアルしますが、これを機会にインクスタンドのことを数日に分けて話したいと思います。


オーダーインクは、2005年にセーラー万年筆の石丸さんが「インク工房」を始めています。今のインクのムーブメントはこの辺りから始まったと言えます。パイロットの色彩雫が2007年の発売開始なので、石丸さんやセーラーが如何に早かったか分かります。そういった先駆者には、とても敬意を感じます。 

カキモリが、アメリカのプライベートリザーブ社のインクを使って、自分達で混ぜてオリジナルインクを発売し始めたのが2013年。百貨店のイベントで石丸さんと話した時に「あなたも、インクブレンドやったら?」と声をかけていただいたのを鮮明に覚えています。

自分達が切り開いてきたことを模倣されることは、一般的には嬉しくないはずです。多分、カキモリはインクブレンドをやりたいけど自分を意識してやっていないのでは?と先回りして考えて、石丸さんの方から言ってくれたのかなと思います。「優しい方だな」と感じたことをよく覚えています。

オーダーノートをやってきたカキモリとしては、オーダーインクはもちろん興味があったけど、石丸さんと同じサービスをやる訳にはいかないし、こんなお声掛けをいただいたら余計に敬意が増してしまって模倣するようなものになってはいけない、と思いました。

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インクスタンドが「自分で調色する」となった一つの理由は、石丸さんの存在が大きいのです。このことは、メディアからの取材ではあまり話してこなかった(文具業界の人じゃないと話がマニアックすぎるし)ので、殆どのスタッフは知らないかもですね。

もちろん、オーダーノートを先行して始めてた中で「自分で組み合わせを選ぶ楽しさ」に手ごたえを感じてたから、「自分で調色する」となったのがベースではありますが、石丸さんが「インク工房」をやっていなければ、インクスタンドは違う形になっていたかもしれません。

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その後、inkstand WITHを2019年に始めて、「インク工房」に近い形のオーダーインクを始めましたが、WITHの顧客層は「インク工房」とは全く異なるインク初心者をターゲットにしたことや、自分たちのブレンドするレベルが以前より上がったこともあり、自分なりに石丸さんへ敬意を表した形と考えて納得しました。(もし、石丸さんがそう思ってなかったらすみません。)

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ちなみに、2021年2月の移転再開時はinkstand WITHのサービスはなくなります。やはりインクスタンドの基本は「一滴ずつ自分で混ぜる」ところにあると思っており、WITHでやっている「コミュニケーションしながらスタッフが色を見つける」というサービスは、「スタッフが色を見つけるお手伝いをする」という形にします。もちろん、場合よってはスタッフが色を提案してもいいので、WITHとSELFが統合する形に進化します。

インクがプリベートリザーブ社からターナーに変わった理由は次の機会で話しますね。プリベートリザーブと始めた理由とか、私がアメリカまで行ったことや、その後供給不可になった理由とか。

蛇足ですが、今日は石丸さんとのことを少し触れましたが、こういった人と人の関係を無視して(気にせず?)、営利目的で模倣サービスを始めるところが多いのも現実です。特許や法律に触れなければビジネスは自由だと言われればそれまでですが、これからの時代は「モノの背景」や「届ける人」など感性的な要素がとても大事になります。「まるパクり」のものが世の中溢れてて、本物を見分けるのが難しい時代ですが、私達は本物を届けていきたいと思います。

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