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「人生のわからない、を増やす」を企業理念にした理由

2020年1月20日。

株式会社Huuuuを設立して丸3年経過し、気づいたら4年目を迎えることができました。これもお仕事で関わってくれている皆さんのおかげです。ありがとうございます。噂によると起業3年後の生存率は約50%らしいので、なんとか半分の世界で息できていてラッキー。

昨年、法人としてのビジョンを明文化すべく、とある人にお願いして企業理念を考える時間を設けました。Huuuuは、一体どんな会社なのか。何を成したいのか。零細企業ながら社員も増えた。私個人の意思と判断だけで推し進めることの難しさや限界を感じつつあったので、みんなが疑いなく動けるような旗を掲げる必要があったのです。

じっくり時間をかけて言語化した結果・・・

「人生のわからない、を増やす」

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これがHuuuuの企業理念になりました! 

めちゃめちゃしっくりきてるぞ〜。 でも「人生のわからない、を増やす」がわからない人も多いだろうなと思います。それでいいんです。そこが目的なんです。

※この記事を最後まで読んでも「わからない」可能性が高いです


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わからない=好奇心の原資

この世がわかりきったことであれば勉強もしないし、人とも積極的に出会う必要もないし、自分みたいに馬鹿みたいな旅を続ける必要もありません。

思い返せばこの世に生を受けて、少年から青年、学生から社会人、気づけば経営者になっている現在でも「わからない」ことだらけ。社会人一年目のわからなさは尋常じゃなかったです。名刺の渡し方、ビジネスメールの書き方、電話の対応方法など…。飲みの場で知らないネット有名人のおじさんから「おい、おもしろいこと言ってみろよ」と無茶振りされたのも、いまだによくわかりません。なんなの。覚えてろよ。

「わかった感」全盛期だからこそ…

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そもそも今の時代はスマートフォンの普及につれて、山盛りのインターネットコンテンツを浴びていますし、Googleで検索すれば大概のことはわかった気になれます。Wikipediaがすべて真実じゃないことは承知の事実かもしれませんが、流行りのYoutubeにもミスやエラーは紛れ込んでいる。SNSを介したフェイクニュースは世界的な社会問題として顕在化しています。

この「わかった感」はなかなか厄介です。

僕自身もわかった感で済ませていることが多々ありますし、社会課題や地域の問題も一回取材をして、一本の原稿にしただけでわかった気になっている可能性も…。実際は、一歩目の取材を通して知れば知るほどに「わからない」が増えているのが正直なところです。

ローカルに詳しい人として話す機会もありますが、心の奥底では「いやいや、表層しか知らないので何も断言できないよ…」と念仏みたいに唱えています。

この厄介な「わかった感」を乗り越えて、元々の「わからない」に対して素直に行動できるのかどうか。「わからない」を放置せず、きっちり「理解できる」ところまで落とし込む。正直、効率もまったくよくないし、近道の数字目標を立てて難なく乗り越えられるような姿勢ではありません。

それでも必要だと思うので、目先のわからないに甘えるのではなく、社会や生活に貢献できる「人生のわからない、を増やす」ような提案が大事になってくるんじゃないかなと思っています。


ジモコロで学んだ「わからない」の面白さ

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ジモコロきっかけでローカル取材を始めたときの「え、どういうこと?」「自然の循環ってそんな仕組みなの?」「なんで72歳のおじさんが馬みたいなケツ筋してるの?」この驚きの連続が37歳の好奇心の原資としてまだ燃え続けています。

たとえば農業や林業、漁業といった一次産業の世界は最後のアウトプット(例:スーパーの野菜、ニトリの家具、居酒屋の刺盛り)は身近にあったけれども、いざ仕組みや技術、人類が積み上げた叡智を目の前にすると点と点が繋がる快感が何度も訪れました。日本の現場はなんて面白いんだろうか。

お米の作り方ひとつにしても、木の育て方にしても、魚の獲り方にしてもそう。自然の一部を手にして、加工し、流通させる。このシンプルな言葉の中に一生かかっても理解しえない情報がパンパンに詰まっています。

それこそ旅の価値は「わからない(=知らない)」ことの連続に身を捧げるからこそ生まれるのではないでしょうか。踏み入れたことのない土地に降り立ち、建物や自然の風景に触れ、文化的な施設や地元で愛される飲食店を巡る。

誰しもが同じ行動を取るなかで、人によって見て感じる解像度は違う。一瞬、一瞬に「選択」と「決断」が介在しているからです。駅の東口に出るか。西口に出るか。車でどこに向かって、途中どのお店に立ち寄るのか。

人生は日々、わからないロールプレイングゲームをしているようなものなのかもしれません。

前向きな「わからない」が生む力

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全国47都道府県を巡り、自然からの贈与経済に向き合った人たちと話をしていると前向きな「わからない」がどんどん積み上がっていきます。

日本人の知恵にはサスティナブルの正解が死ぬほど詰まっているんですが、前述のインターネット社会の膨大な情報量を前にしても、なぜかなかなかアクセスできません。

ヤフージャパンとご一緒している海のメディア「Gyoppy!」で真っ先に課題になったのは「現代は、人間と海の距離が遠くなってしまったこと」でした。海から生まれた人類、そして豊かな海の資源によってこれまで営んできた日本人。いまだに寿司はみんな大好きですが、家庭で魚を使った料理が出る割合は減っているようです。

魚食文化の衰退→漁業産業の縮小→漁師の減少と悪いスパイラルに入ってる。その根本の問題には、お金を出せば正解(完成品)が目の前に出てくる、利便性の蓄積な気がしてなりません。

ECで自宅に魚が届いたり、骨が抜かれてる魚の切り身は食べやすいし、地方の居酒屋で食べる魚料理ならではの醍醐味もありますからね。自宅で料理をするのも楽じゃない。キッチンがクソ狭い、冷蔵庫が小さい、そもそも仕事が忙しくて家は寝るだけ…。

現代の生きづらい仕組みの中で、必要な「わからない」の状態がショートカットされているのかもしれません。

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先日、初めて「寿司を握る」体験をしたんですが、「わからない」→「わかる」のアハ体験は最高でした。わからないを増やして、そこに向き合うことの体験は尊いな…。寿司を握るの楽しい…。

そもそも一次産業の問題は、簡単にはわかりません。何度取材をしてもわからないことが増えます。漁業は土地毎、港毎の文化が根付いてることは少しわかってきました。その変化がめちゃめちゃ面白いんですよね。

まずは「わからない」ことを認める。そんな「前向きな『わからない』の姿勢=わからないを増やす」の先に、いい未来が待っているはずです。

だからこそ・・・

人生のわからない、を増やしてこ〜〜〜〜!

ってことなんです。


一緒に「わからない」を増やしましょう

Huuuuの起業理念はそういう社会の流れにグッと踏ん張って、編集者としてわからないことはわからないと一緒に認めていくことからスタートしたいです。

同時にイヤなときはイヤだって伝えてる。その上でお互いの目的と実現したいことを一所懸命に擦り合わせて、同じ目線でフラットに仕事をしていきたいなーと考えています。仕事のミスマッチは誰も得しないので。

この企業理念を理解してもらえて「一緒にやろうよ!」と声をかけてくれる人は世の中たくさんいるはず!いてくれー! 世の中もこの方向に変わっていくと信じたいです。

Huuuuでは、社会貢献や文化育成、好奇心を刺激する面白い仕事を仕掛けたいクライアントを求めています。メディア運営、紙媒体、冊子制作から、商品プロダクト、イベント企画、行政・まちづくり文脈の手助けまで、これまで培った全国47都道府県との関係性と知見、そして貯まりに貯まった「わからない」の種 を活用したい。自分たちだけでは水をあげて芽吹かせません。また、この企業理念に共感してくれるライター、編集者を絶賛募集中です。お気軽にお問い合わせください。


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まぁ、ぼくも全然よくわかってないんですけどね!「わからない」をわかるように伝えるのってこんなに難しいだなって思いました!

だから、この企業理念に共感してくれた素晴らしい人たちにコメントをいただきました。客観的な視点と合わせて「人生のわからない、を増やす」を咀嚼していただけたら嬉しいです。

この本文に「わからない」は34回表記される。

「わからない」は、
「好奇心に立ち向かう」ことであり、
「簡単には結論をださない」ことであり、
「あなたと一緒に悩みたい」というプロポーズだ。
社会や企業が抱える問題は、どんどん複雑になっている。

聞き分けよく「わかった」と言ってくれる人より、
ビー玉みたいな目をして「わからない」と一緒に悩んでくれる人のほうが信頼できる気がする。
だから、「わからない」からスタートしてくれるパートナーは、心強いと思う。

※企業理念を一緒に考えてくれた中野友彦さん


大学生になりたての頃、意中の子とデートを重ねて、みなとみらいの観覧車のてっぺんで告白したのに『えっ?何言ってんの?』みたいな返事をその場でもらったことがある。僕の目に映るキラキラ輝くネオンやジェットコースターといった風景は一瞬で固まった。

それから10年以上が経ち、一冊の本を読んだ。「インサイト」と題された本は、現代における「自己認識」の重要性を説いた本だ。

ざっくり言えば「人は自分のことを100%理解していると勘違いしているが、全く分かっちゃいない」という趣旨の本だ。
10年前の観覧車のてっぺんにいた僕も、何も分かっちゃいなかった。
だけど「なんであんな反応をもらってしまったのか分からない」という出発点から(さらに失敗を重ねながらも)今は幸せな家庭を築けている。

そんな10年を振り返ると、あの観覧車のてっぺんで起きた「わからない」という体験がなければ、自分はアップデートされなかったはずだ。

自分の中の話だけではなく世の中は「わからない」ことだらけだ。より良い社会をつくるために真面目に学ぶほどに「わからない」ことは増える。

でも「わからない」と自己認識することからすべては始まるのかもしれない。Huuuuの新しい企業理念は、すべての人にとっての号令のような言葉だ。みんなで「わからない」ことから始めよう!

NPOグリーンズ COO 植原正太郎
人生の意味や目的やらが溢れ返りまくる世の中で、「人生の、わからないを増やす」ってことを胸を張って、拳を振り上げて言い放つ。とんでもなくかっこいいし、それを言ってくれてホッとする自分がいます。いや、だって、わからないことたくさんあるんだもん。

僕がかつて制作していた「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、プロデューサーに言われたことが忘れられない。「お前簡単にわかったっていうけどさ、わかったって言うなよ」。これ、放送2週間前の編集室で言われた一言。ディレクターとしては、わかったと言いたい。でも、わかったと言うなとプロデューサーはブチ切れてる。「そんなに簡単に人のことがわかるわけねえだろ」と。そりゃそうだ。簡単にわかるって言いませんって胸に言葉を刻みました。

それから10年以上の年月が流れて、僕もたくさんの経験を積んで、ときには若い人にアドバイスを求められることがある。「小国さんは、大学生の時、何を目指して、何をやっていましてか?」「働き始めて、自分を成長させるために一番良かったことはなんですか?」申し訳ないんだけど、考えたことなかった。大学の時はずっとウイイレやってただけだし。

でも、1つ言えるのは「試行錯誤」はおススメです。いきなり答えに向かわなくてもいい。意味も目的もわからなくていい。心の赴くままに思い切り試行錯誤をしていると、気づくと思いもよらない場所に行き着くことがあります。

今、僕はNHKを卒業し、肩書もない、何をやってるんだかよくわからない人になりました。あまりにもよくわからないから、自己紹介に15分もかかったりします。そんな時、少しは不安になったり、面倒だなと思ったりすることもあります。

でも、「人生の、わからないを増やす」って思い切り言ってくれる人がいるのなら、自分の不安や面倒を受け入れられると思うのです。

株式会社小国士朗事務所 代表取締役/プロデューサー
小国士朗
代表作:「RWC丸の内15丁目Project」「JリーグシャレンProject」「注文をまちがえる料理店」「delete C」ほか

1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!