上達への階#7

前回の記事

前回の振り返り

前回、形勢判断の評価軸として、以下の4つがあるという話をしました。

・駒の損得
・駒の効率
・玉の固さ
・手番

細かいことは前回の記事を確認してください。

以下は個人的な意見を多分に含みますので、鵜呑みにすることなく自身の考え方に合わせてカスタマイズしてもらえると良いかと思います。

この評価軸だけでは判断できない

いきなり前回の記事を否定するようですが、この4つの評価軸だけで局面を判断することはできません。

極端な図で説明しましょう。

画像1

左図は将棋を指したことあれば誰でも見たことある形ですね、そりゃそうだ。駒の損得:互角、駒の効率:互角、玉の固さ:互角、手番:先手ですが、先手が良いかといえばそんなことはないでしょう。

右図は後手が遥かに駒得をしていますが、互いに必至が掛かっていますので手番のほうが勝ちなのは明白でしょう。

要するに、局面の進行度(手数ではない)に応じて形勢判断の評価軸の重みが変わってくるということです。

序盤の形勢判断

序盤はどこまでかというのは難しいですが、本格的な戦いが始まっていない、歩の交換程度の駒交換のみが行われているくらいでしょうか。

序盤では駒の損得が起きづらいですが、例えば初形から相手の駒を一枚自分の持ち駒に加えていい、となればかなり有利だと感じるでしょう。序盤で駒得できれば、ほかの評価軸で差がでてないことを考慮すると大きなポイントになります。
森下卓九段の名言に「駒得は裏切らない」というのがありますが、これは序盤~中盤入口にかけての言葉と受け取るのがいいと思います。

初形では完全に互角の駒の効率や玉の固さですが、中盤戦に向けてこれから整えていくという段階です。手が進むにつれて考慮する必要はありますが、序盤では駒の損得ほどの重要さはないと言っていいでしょう。

手番はあまり影響はありません。局面が進んでも先後同型になっていれば(他の評価が互角なら)手番を持っていたほうがいい、というくらいでしょう。

序盤では、【駒の損得≫駒の効率≧玉の固さ≫手番】の順で形勢判断をすることになります。

中盤の形勢判断

中盤は戦いが始まってから、寄せに入るまででしょうか。序盤とも終盤ともいえない局面のことを中盤ということが多い印象です。

中盤では互いの攻め駒を効率よく配置して、相手の守りを突破することが主題になりますね。
駒得することができれば、多少の効率の悪さもカバーすることができたり、玉の固さを向上させることもできますので、局面をわかりやすくすることができることが多いです。

一方的に攻められる展開などを避けるためにも手番も考慮する必要のある評価軸になります。

中盤ははっきりしない局面が多いので、それだけ形勢判断も難しいことが多いですが、おおむね【駒の効率≧玉の固さ≧駒の損得>手番】のような順で形勢判断することになるでしょう。

終盤の形勢判断

終盤はお互いに寄せに入って、詰む詰まないを読む必要がでてくる局面ですね。

終盤の考え方はまた別の機会に解説しますが、最初の極端な図で表したように、お互いの玉に詰めろが掛かっている状態であれば手番を握っているほうが勝ちなので、手番こそが最も大切な評価軸になります。

逆に、いくら駒得をしていても玉が詰まされてしまっては負けですので、駒の損得はあまり重要ではありません。攻めが切らされてしまってもダメですが、駒を損していても相手玉に迫ることのほうが大切です。

詰みや詰めろをかけることが終盤の目標になりますが、かけられないことも同様に重要ですので、玉の堅さが2番目に大切な評価軸になります。
自玉に余裕があれば、多少効率の悪い攻めでも構わないのです。

というわけで終盤では、【手番≫玉の固さ>駒の効率≫駒の損得】の順で形勢判断をすることになります。

まとめ

まとめ(コピペ)
序盤→【駒の損得≫駒の効率≧玉の固さ≫手番】
中盤→【駒の効率≧玉の固さ≧駒の損得>手番】
終盤→【手番≫玉の固さ>駒の効率≫駒の損得】

ざっくり言うと、序盤は駒の損得、中盤はすべてをバランスよく、終盤は手番を重要視して形勢判断することになります。
局面というのは上記のように簡単な三分割できるものではありませんから、中盤の入り口では序盤・中盤を合わせたような、終盤の入り口では中盤と終盤を合わせたような考え方も必要になります。

また、駒の効率が悪いまま中盤戦に入ってしまったような場合、局面を落ち着かせて序盤のような局面を目指すことで駒の効率の重要度を下げるような指し方をすることもあります。

終盤では手番が大切と書きましたが、詰む局面を詰ませられないとそれだけで1手遅れますので、読み・詰将棋の力も重要になってきます。

棋譜並べや観戦するときには、形勢判断をするとともに局面の進行度、なぜその手を指したのかを考えると棋力も上がってくると思います。

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