九月の空蝉(うつせみ)


その日失った季節の感覚
気がつけば乾いた秋風が
抜け殻の僕を包みこんで
空蝉の声が遠くなった

彷徨う僕はまだ夏に
取り残されたまま
漂う金木犀がまた
記憶を掻き乱す

空になった僕は
繰り返す時の中で見つめていた
陽の当たる場所
楽園のような
陽だまりを求め声を枯らす

その日失った季節の感覚
憂いを帯びた目に映った
夏の残像が僕を騙す
空蝉の声が僕を救う 

永遠に続く蝉時雨が
追憶の夏に降る
終わりを告げる彼岸花が
咲く頃に消えてく

空になった僕は
落ちていく
木漏れ日の中見つけたんだ
陽の当たる場所
僅かでも僕は満たされた
九月の空蝉

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