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幸せを分け合うイスラームの祝祭:パレスチナの歳時記シリーズ①

現地ではこの時期だけ特別に、イード・ムバーラク!と挨拶するらしい。イード(という今回主役になる祝祭)、おめでとう!くらいの意味合いだそうだ。

というわけで、昨日から世界中のイスラム教徒の人たちはイードに突入しています。

イードって?

Wikipediaによれば、イードには実は2種類あり、私たちのカレンダーでいう5月頃にあるのがイード・アル・フィトル、今まさに迎えているのがイード・アル・アドハー。

イードという言葉が祝祭の意味なので、先にあるのがフィトルの祝日、今やってるのがアドハーの祝日といった具合になる。いや、ややこしいです。

アドハーの祝日(あるいは日本語で犠牲祭)を祝うようになったきっかけは、聖書にさかのぼります。

イスラム教・キリスト教・ユダヤ教すべての祖先とされるアブラハムが神様に命じられて息子を生贄に差し出そうとしたことを記念する意味で始まりました。

イスラム教徒といえばサウジアラビアにあるメッカまで巡礼に行くイメージがあるかもしれませんが(黒い布に覆われた四角いものを囲んで人がごった返している写真がよく教科書に載っている)、まさにその一番の盛り上がりがこの祝日に当たります。

ハッジという特別な体験

アドハーのイードに欠かせないのがハッジ。先ほど触れたメッカへの集団巡礼のことです。

なんだか段々見知らぬカタカナが増えてきたので、ごく簡単に(私も経験したことがないので)お話すると、イスラム教という宗教を信仰している世界中の人たちーどこの国の人だろうが、若かろうが年を取っていようが、肌の色がどうであろうが、お金があろうがなかろうがーがこの時期、100万人から200万人規模で聖地メッカに礼拝をしに訪れます。

(そんなにたくさんどうやって宿とか割り振ってるんでしょう?)

4日間の祝祭の期間中は、メッカに留まり、祈りを捧げたり、生贄の動物を貧しい人に配ったりするそうです。最終日までを終えると改めて別れの挨拶をし、それぞれの帰路につきます。

イードの過ごし方

私自身は現地でイードを経験したことがなく、イードだから歳時記を書きたいと思ったものの、何ていうんでしょう、祝祭の温度感のようなものがわからないので、現地の人に「どうやってイードをお祝いするの?」と聞いてみました。

曰く、
①ハッジに行かない人は、イードの初日の早朝、初日の出とともに礼拝をしに行きます。

②その後金銭的な余裕のある人が、ヒツジなどの動物を生贄に捧げ、貧しい人や近隣の人、身内に配ります。

③家に帰ると、イードの晴れ着を着て、カアックという定番のスイーツを食べながらアラブコーヒーを飲みまくるんだそうです。

④それから、みんなお互いに挨拶回りです。「イードムバーラク」と言い合いながら、親戚の家なんかを訪ねるのですが、子どものお目当てはお年玉。両親も、親戚も、彼らの為に用意してくれているのです。

というわけでイードで一番大切なのは初日。でも、今年はコロナの影響でお互いを訪ね合ったりするのは難しかったそうです。

イード定番スイーツ「カアック」を食す

写真にある鮮やかな黄色をしたお菓子が謎のカアックです。

このお菓子の歴史は紀元前の古代エジプトにまで遡ります。お墓や遺跡に残された壁画に人々の生活の様子が描かれているのですが、そこにカアックを作る人の姿もあるのです。お墓からレシピも発掘されたとか。この形は太陽神のシンボルなんだそう。

カアックのイスラム文化との融合が起こったのは、9世紀にこの地方(エジプトからシリアにかけて)を治めていたトゥールード朝の時代。

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その当時、カアックの鋳型が作られ、そこに「食べよ、感謝せよ」という言葉が記されていたそうです。

続くファーティマ朝の時代、革新推進チームなるものが編成され、60種類のカアックの鋳型が生み出されました。そしてイードの期間に統治者から民衆へと配られたのでした。

*余談ですが、広大なイスラム文化圏にはイスラム教徒とキリスト教徒とユダヤ教徒(そのほか様々な宗教信仰者)が暮らしてきました。基本的な母語アラビア語や習慣をともにするものの、宗教ごとにお祝いする行事って違いますよね。Kaakで調べると、レバノンのキリスト教徒の方のレシピも出てきました!

キリスト教の文化では、イースターの定番として親しまれているようです。

カアックの作り方でポイントになるのがマハレブというチェリーの一種。ナッツのような香りを持つ中東では古くから使われるスパイスだそう。あとは家庭それぞれのレシピになりますが、ごまやピスタチオをトッピングしても良し、なかにデーツピューレを包んでも良しです(^^♪

おまけ:イードの様子

We Are Not Numbersというパレスチナの物語を世界に発信している団体が写真に収めていました。

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金ぴかの天井に深い青が美しいドームはイスラム教徒の聖地。エルサレムの観光客が必ず訪れるスポットです(といいつつ礼拝日と被り一度も近づけていない筆者)。お祝いしている雰囲気が伝わってきます。

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なんじゃ??って顔してますが、風船はしっかり握りしめていますね。

おまけその2:PAL流イードの過ごし方

パレスチナの難民キャンプから生まれた動物の保護団体、パレスチナアニマルリーグ。伝統的なイードでは動物の肉を貧しい人に配るのが徳のある行為だとされますが、こんな風に色んな過ごし方があります。

いずれにせよ、世界で何億人(もっと?)もの人が同じ祝日を祝っているってスケールが大きい。

カアックを右手に、コーヒーをもう一方の手に。イードムバーラク!


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架け箸はこれからも継続的にパレスチナを訪れ、日本に出回らない生の情報を発信したいと思っています。いただいたサポートは渡航費用や現地経費に当てさせていただきます。