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行動経済のビジネスへの実践書! /人を動かす行動経済学26の切り口 トリガー(著)楠本和矢

・人間の非論理的な心理作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ
・マーケティングに活用できる27の行動経済学理論
・行動経済学を活用するための5つのステップ

上記は、「人を動かす行動経済学26の切り口 トリガー(著)楠本和矢」にかかれている内容です。
行動経済学をwikipedia で調べると、「経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れた研究手法」とあります。簡単にいうと「人間の非論理的な心理作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ」と本書には書かれていますが、たとえば、「生存確率90%の手術」と「死亡確率10%の手術」では、同じ結果にも関わらず前者にはポジティブな印象を、後者にはネガティブな印象をうけます。こういった人間の非論理的な判断のことです。

とはいえ、「予想通りに不合理」など、有名な書籍もあり、一度は行動経済学について聞いたことはあると思います。そして、その行動をビジネスでも活かせるんじゃないか?と考えた人は多くいるのではないでしょうか。私も、そう考えていましたが、実際にはどのように活かせばいいかわからず、知識として活用されることなく読書をしただけになっていました。

本書は、行動経済学の理論を検証したり、体系立てて解説することではなく、具体的なマーケティング施策のアイデアとして、落とし込む方法論を提示してくれています。掲載されている行動経済学理論は、27をピックアップされていますが、それらはマーケティング施策につながりそうなものに絞られ、マーケティング施策の活用を目的に分類されているため、これを見るだけでも学びになりそうです。

マーケティング担当者や新規事業の立ち上げに関わられている人であれば、人を動かすためのテクニックについて、学びになると思いますので、ぜひ、ご一読ください。


マーケティングに活用できる27の行動経済学理論

本書では、参考情報として、行動経済学理論のなかで、マーケティング活用できそうなものを著者がピックアップし整理してくれています。本書の本丸はこの理論をマーケティング施策に分類しているところなのですが、行動経済学がマーケティングに活用できそうだと実感するにはとてもよい整理だと思いました。

特に、マーケティングの戦術として、ノウハウとして活用されていたものが理論として名前をつけられることで引き出しとして利用しやすくなると思いました。(本論の活用するための5ステップに繋げやすいと感じます)

1:限られた情報で短絡的に判断してしまう
自分の経験や記憶をもとに、深く考えずに即座に判断してしまう理論の紹介。(ファスト&スローのシステム1のようですね)

▼ 一部の目立つ情報だけで短絡的に判断する
バンドワゴン効果:興味がなくとも、人気なものには興味を示してしまう傾向
ハロー効果:目立つ特徴に引きずられ、評価がひっぱられる傾向
希少性の法則:入手しにくいものが価値が高いと感じる傾向
ジンクピリチオン効果:凄そうな名前・言葉の響きで良さそうと判断してしまう傾向
▼ 情報の「与えられ方」だけで短絡的に判断する
・ ザイアンス効果:繰り返し接触することで新規感をもつ傾向
・ ウィンザー効果:直接よりも第三者から間接的に伝達されるほうが強く信じる傾向
・ 返報性の原理:人から施しを受けると、お返ししないといけないと感じる傾向
▼ 元々の「自分の考え方」が働き、短絡的に判断する
・ 確証バイアス:自分を正当化する情報にのみ注目してしまう傾向
・ 一貫性の法則:自分が決めたことを守ろうとし、反する行動を避けようとする行動
・ ヴェブレン効果:自分をアピールしたいという欲求から、高額なものを購入しようとする傾向

2:得することよりも「損しないこと」を過大に重視してしまう
人は得をすることよりも、「損」をすることに過剰に反応してしまう理論の紹介

▼ 得られるものよりも、損失やリスクを課題に評価する
・ 損失回避性:得よりも損に過剰に反応する傾向
・ 保有効果:自分が保有してる物の価値を、通常以上に高く評価する傾向
・ 最大効用でなくても、目先の利益を優先する
・ 現状維持バイアス:メリットがあっても、変化のストレスをさけるために現状維持をする傾向
・ 現在志向バイアス:目の前の価値を高く評価し、将来の価値を低く評価する傾向

3:何が基準になるかで、評価や判断の内容が変わってしまう
商品やサービスを購入する際に、絶対的な価値判断ができない場合に、あるものを起点とし、相対的な比較で判断を下してしまう理論の紹介

▼ 基準からの距離そのものが、判断に影響を与える
・ 参照点依存性:価値判断を絶対水準ではなく、自分が設定した基準からどれくらい変化したのかで測る傾向
・ 感応度逓減性:利益や損失が定めた基準から離れるにつれ、満足感や不満感が減少していく傾向
▼ 最初に与えられた情報が、判断に影響を与える
・ アンカリング効果:事前に与えられた情報が「基準」となって、後の判断に影響をもたらす傾向
・ プライミング効果:先に与えられた情報が無意識に後の行動に影響を与える傾向
▼ 過去の自分の行動が、判断に影響を与える
・ サンクスコスト効果:投資したコストに気を取られ、損失を拡大させてしまう傾向
・ エンダウド・プログレス効果:ゴールに向かって前進したと感じるとモチベーションが高まり、続けたくなる傾向

4:見せ方や並べ方を変えるだけで、判断が変わってしまう
内容がまったく同じでも、見せ方・並べ方で判断が変わってしまう理論の紹介

▼ 表現の角度を変えるだけで、印象が変わる
ポジネガフレーミング:同じ内容でも、ポジティブとネガティブの表現で印象が変わる傾向
強調フレーミング:同じ内容でも、意味合いを強調する表現で印象が変わる傾向
単位フレーミング:同じ内容でも、数値の単位を変えることで印象が変わる傾向
▼ 選択の提示方法によって、判断が変わる
決定回避の法則:選択肢が多くなると、選択に伴うストレスを感じ、選択を回避する傾向
極端回避性:両端に位置付けられるものにリスクを感じ、中唐にあるものを選択する傾向
おとり効果:明らかに選ばれない選択肢が加わることで、特定の選択肢を選んでしまう傾向
デフォルト効果:現状を変えたくない意識が働き、初期設定の状態で結果が異なる傾向

行動経済学を活用するための5つのステップ

本書では、27の行動経済理論を26の切り口で整理されていますが、その切り口毎に、事例、解説、理論、適用条件、活用イメージまで記載されています。そして、最終章では、その26の切り口を活用して、実際にマーケティング施策に落とし込むまでのフレームワークが紹介されています。

26の切り口を活用して、自分たちの事業やサービスの改善アイデアにつなげる方法を「アナロジカル・シンキング」と読んでいます。アナロジーとなる各事象からの抽象化・一般化部分が26の切り口となっており、あとは自らの事例にあてはめて考える部分という状態になっています。

わかりやすい「アナロジカルシンキング」の手順

ステップ1:前提条件の整理
- アイデアを検討する上で、前提条件を整理しておく
ステップ2:「顧客価値の掘り起こし」
- 検討対象となる商品 / サービスのそもそもの便益を棚卸しをする
ステップ3:「阻害要因」の探索
- その商品 / サービスを利用するうえで、阻害している要因を探索する
ステップ4:「26の切り口」を使ったアイデア導入
- ステップ2、3でリストアップした顧客価値と阻害要因を踏まえ、26の切り口から有効な切り口を絞り込む
ステップ5:アイデアの絞り込みと精緻化
- ステップ4でリストアップされた切り口を、ステップ1の前提条件とあわせて絞り込む

手順としては、簡単なものになっていますが、前述したとおり多くの理論、切り口があるためそこと結びつけようと思考するだけでも多くの施策が考えつくかと思います。

参考になる施策がでてくると思いますので、ぜひご一読ください。





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