タイトル

唐 王朝 300年の基礎を築いたリーダーシップ / 座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」

- 出口治明氏が例外的にすすめる書籍
- 名君と呼ばれる人の2つの絶対条件「権限の感覚をもつ」
- 名君と呼ばれる人の2つの絶対条件「臣下の諫言を得る」

これは、「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」(著)出口治明」に書かれている内容です。出口氏は、立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者です。出口氏は、価値観の押し付けが大嫌いで、読書家ではあるのですが、他人に「本を読みなさい。」と言わないとあります。しかし、例外的に「貞観政要」については、何人かのリーダーに「これは読め」とすすめるほどの本として紹介されています。

本書は、中国古典「貞観政要」のマネジメントに活用できる部分を抜粋し、出口氏の解説がついています。


<貞観政要とは>

『貞観政要』は、唐の第2代皇帝、太宗・李世民の言行録です。「太宗」とは、太祖(創業者)に次ぐ功績のあった皇帝に与えられる廟号です。太宗と臣下(部下)の政治上の議論や問答が、全10巻40篇の中にまとめられています。「貞観」とは、当時の元号(年号/西暦627~649年)のこと。貞観の時代は、中国史上、もっとも国内が治まった時代(盛世)のひとつといわれています。「政要」とは、政治の要諦のことです

引用:出口 治明. 座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.16-23). Kindle 版.

1300年前から存在するマネジメント書ですが、リーダーである「太宗・李世民」と、部下とのやりとりは、現在でも変わらない本質的なことが書かれています。本書は、1300年前から変わらず語り続けられていたことが、原典とと、出口治明氏の経験・学びの2つのケーススタディとして学ぶことで、貞観政要の理解を助ける役割と、貞観政要をどう現代(自分)に転用するのかを考える補助線になってくれています。


<権限の感覚をもつ>

貞観政要の中で、リーダーの役割について説いた一節があります。「普の文公と漁師の逸話」を用いて、それぞれに与えられている役割を全うすることの大切さを説明しています。国のリーダーたる文公が、漁に夢中になっていては、国の運営が滞ることになります。これは「与えられた役割」を全員が全うすることで組織が成長できるということを説明しています。この「役割」は、リーダーに限ったものではなく、「漁師」などの、組織のメンバーにも言えることです。リーダーは、一度与えた権限は、たとえ、リーダーであっても口出ししてはいけないとあります。このリーダーが、自分の権限を活用して自由にふるまってしまうと、組織ではなく、個人商店になってしまいます。「組織」として機能するには、それぞれが責任をもって役割を行う必要があります。

僕は過去スタートアップで働いているときに、飛び抜けて優秀なリーダーがいました。そのリーダーは、事業を自分で大きくしてきたという自負と能力があるため、ことの大小に関わらず口をだしていました。結果、組織が大きくなり、時間が経過するにつれ、組織としての能力が弱くなっていくと感じました。

なぜなら、そのリーダーが口を出すと、すべてが決まってしまうため、いつしか、メンバーが思考するのは、「リーダーがどういっているか?」「リーダーはどうすれば承認するか?」になってしまったからです。そして、「優秀なリーダー」は、すべてを自分で抱え込み、事業が失敗したタイミングで組織から離れました。

画像1

<臣下の諫言を得る>

貞観政要の中で、太宗・李世民は、何度も部下から諫言(目上の人の過失などを指摘して忠告すること)を受けています。太宗・李世民は、皇帝という立場であったため、権限を使えば気に入らないものは、排除することは簡単だったはずです。しかし、貞観政要の中では、何度も指摘を受けており、指摘をする人物のことを称賛しています。そして、下記のような発言をしています。

「指導者は、自分が好むものに対して、慎重にならなければいけない。自分が望めば、狩猟に使う鷹も、犬も、名馬も、あるいは自分の好きな音楽も、女性も、ごちそうも、すぐに目の前に揃えることができる。しかし、それをすることは人としての正道を破るものである。さらに、君主がそれをすれば、自分の顔色をうかがうような部下ばかりになってしまう。もし任用する家臣に賢者がいなければ、国家は滅亡してしまうだろう」(巻第一政体第二第十四章)

出口 治明. 座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1095-1100). Kindle 版.

太宗・李世民は、自分が持っている権力の強さを理解していました。そして、それを諌めてくれる部下がいないと、国は滅んでしまうとまで言っています。自分が権力の強さを好き勝手に行使しないこと部下が自分が誤ったときには諌めること が大事だというのです。

リーダーやマネジャーになると、様々な本を読み「どうあるべきか?」というのは意識していると思います。おそらく、ほとんどの人は、リーダーとして役割を全うしようと努力するはずです。しかし、自分が気づかないところで部下が忖度していたり、自分のちょっとした態度や言葉で、組織や事業のためではなく、リーダーの顔色をみて動いてしまうことになっているケースはあるのではないでしょうか。

そして、部下は、リーダーが権限をむやみに使ってしまっているときに、覚悟をもって諌める必要があります。リーダーに対して、諫言を行うことができれば、僕のリーダーも失敗をしなかったかもしれません。

画像2

<まとめ>

貞観政要の一部を紹介している本書でも、色々考えさせられます。リーダーとしてどうあるべきかと、部下としてどうあるべきか、また本書は、太宗・李世民が、「守成」を根本としています。創業時の状況と、事業が安定した状況では必要となるものが代わります。しかし、共通する部分としては、リーダーとしての役割は何かを自問し、メンバーと共に組織を強くすることだと思います。


---
Twitter でも、プロジェクトマネジメント x リモートワークのノウハウや読書について、つぶやいていますので、よろしければ繋がってください。

https://twitter.com/kajyou

支援は、コミュニティ研究の取材、サービス開発などに費用にあてさせて頂きます。