スタートアップにミッションは本当に必要なのか改めて考えた

はじめまして、技術と心でスタートアップの事業を立ち上げるマン、かじです。noteデビューしました。

スタートアップにおけるミッション論は大先輩によりたくさん語られていますが、あえて「必要ないんじゃないか」という視点から考察した話をあまり聞かないのでまとめてみました。

・けんすうさんのミッション・ビジョンはいつ決める?
・Goodpatch土屋さんのカルチャー崩壊と再構築の話
・メルカリ小泉さんのミッション・バリューに託した想い
・Airbnb CEOのミッション・コアバリュー追求の話

ミッションは必要ないと言い切られた日

もう半年は経つだろうか。イベントでお会いしたスタートアップのCEOに、未だに忘れられない衝撃的な一言を浴びせられた。

「ミッションなんて必要ない」

ひととおり事業内容を伺ったものの、その方がどんな世界を描いているのか見えなかった僕は、会社のミッションを聞いてみた。すると彼はこう教えてくれました。

「ミッションなんて必要ない。仕事の価値観は人それぞれなのにミッションや組織文化なんてものを作るから、それに合う人合わない人が出て組織がバラバラになっていくんだ。変に色をつけずに、それぞれ好きなものを目指して働いてくれれば組織は一番効率的にまわっていく。」

採用面接でミッションから語り始めることもあるミッション野郎の僕は、必要ないと言い切られて衝撃を受けたことを覚えている。

とはいえただでは引き下がらない。しつこく聞いてみたところ、その時は○○○○業の免許取得を唯一の目標としているということだった。

なるほど共感はしないが理解はした。高いハードルである免許取得にまず全力で向かっている彼にとって、僕の質問は足元が見えていない稚拙な質問だったろう。

ミッションが必要ない条件を考えた

僕はこの話をきっかけに、ミッションないしミッションの明文化が必要ない条件を考えた。そうすれば、どういう場面で本当に必要となるのか逆説的に理解を深められると思ったからだ。自身の経験をもとに以下の3つに整理した。

1. メンバーが5人以下であること
2. 短期的なプロジェクトベースの仕事であること
3. 足元の売上が絶好調であること

1. メンバーが5人以下であること

5人か3人か7人かはメンバーの集まった経緯や関係性によって変わるが、トップがメンバー全員と日々話したり、普段の企画会議や行動を見るだけで想いが伝わるサイズでは不要だろう。また、そもそもミッションを一緒に作っていく初期メンバー内においては不要だろう。

一方、遅くとも9人にでもなったら、明文化して語らないと想像以上に伝わらないものだ。「社長は何をしたいんだろう」という声が出始める。

遅くとも9人というのは、2ケタになる前に、ということを意図している。だいたい9人になるのはシリーズAで数千万後半〜1億くらいの調達をし、全くつながりのなかった人をエージェント経由で採用し始めるタイミングだと思う。そして15人くらいまであっという間に人が増える。アクセルを踏む前にどこに向かうのかは明文化しておきたい。

2. 短期的なプロジェクトベースの仕事であること

先の例はこれに整理した。短期的というのはせいぜい6ヶ月かなと思う。目の前の「目標」を達成するために一時的にメンバーが集まり、息切れすることなく走れる期間なら、高尚なミッションも長期的な理想像も会社の存在意義なんかも語る必要はない。

一方、メンバーが息切れした時に大義がないプロジェクトにはほころびが出始める。「この目標ってそもそもなんで達成したいんだっけ?」

チーム形成のステップで有名なタックマンモデル(形成期→混乱期→統一期→機能期)にあてると、短期プロジェクトの中で起こる1度きりの混乱はKey Goal Indicatorで統一できるけど、長期プロジェクトの中で何度も起きてくる混乱はPurposeによる統一が必要だと思う。

3. 足元の売上が絶好調であること

絶好調のときと絶不調のとき、どちらも経験するとミッションの大切さを身にしみて感じる。絶好調のときはミッションなんてなくたってチームは活力に溢れ、元気に酒を飲み、万能感に浸りながらスーパーポジティブに新規事業にチャレンジし、新しいメンバーもどんどん入ってそれが加速する。

一方、上がらない売上、にも関わらず下げられないバーンレート、そして減ってゆく口座残高を見ながら、飲み会もデートも断り夜も土日も仕事詰めにしていると、深夜にふとネガティブな思考が頭をよぎる。「あれ、俺なんのためにこんな頑張ってるんだっけ。つら。何がしたいんだっけ。疲れたな。」

それでもみんなで頑張って実現したいと思える未来がないと、その絵にわくわくしないと、たいていは優秀な人から辞めていく。残酷なほどに。八方塞がりでも踏ん張るエネルギーの源はミッションだと僕は信じてやまない。

ミッションと採用基準の掛け算

同時に語られることは少ない2つの要素だけど、採用基準はミッションにも定義される。例えば。

「世界中の」という言葉を入れるかどうかで、外国人やグローバル人材の採用を行うか、求める言語レベルや異文化理解力などが規定されるだろう。

「ナンバー1」を目指すなら、ナンバー1になったことがある経験を重視するだろうし、多少の離職率の高さを織り込んでも好戦的で競争が好きな人を採ったほうが良いかもしれない。

「機械学習」など具体的な領域を限定するかどうかで、特定の専門家(=機械学習以外をやれと言ったら辞めるけど機械学習においては超プロフェッショナル)を集めるのか、適切な技術があれば迷わず選択できる柔軟性を重視するのかが変わる。

当然、採用基準が変われば彼らに合う組織形態や評価制度も規定されてくるだろう。それらの整合性が取れたとき、事業は勝手にできてゆく。スタートアップにおいては事業に人をあてるんじゃない、人が事業を作るんだ。

一番大切なこと

ミッションを策定することよりもそれを浸透させ続けることのほうが1000倍大切だ。釈迦に説法とは思うもののこれは本当に実行するのは難しい。

だいたいミッションなんて最終的には誰にでも美しく聞こえる抽象的な言葉や概念に落ち着くはず。

そこにどんな意味を込めたのか、どんな未来を描いているのか、僕らの存在価値は何なのか、誰を幸せにするのか、語り続けないとミッションは生きた言葉にならない。

企業のオフィスに形骸化された「経営理念」の額縁が飾られていて誰も目にとめない光景を見たことがある人もいるでしょう。

少なくとも月1回は全体MTなどで語り、1on1でも採用面接でも評価面談でもMVP表彰でもチームランチでも会社紹介資料でもslackのスタンプでも、あらゆる場面でしつこいくらいに繰り返すことが必要だ。そうすることで言葉に霊が宿っていくのだろう。

さいごに。

今僕がほとんどの時間を賭けているLayerXで新しいミッションを策定したので紹介させてください!

LayerXのミッション

すべての経済活動を、デジタル化する。

ブロックチェーン技術をもとに、「新たな経済基盤」をつくりだす。
それは、信用や評価のあり方を変え、
業務や生産をはじめとした経済活動の摩擦を解消し、
この国の課題である生産性向上を実現する。
私たちは、そう信じて行動し続けます。

ブロックチェーンが実装された社会、
そこには、これまでの延長にはない、まったく新しい可能性が広がっている。
LayerXは、デジタル社会への発展を後押しすることで、
経済史に新たな1ページを刻んでいきます。

今回のミッション策定プロセスや込めた想いはCEOであるfukkyyが綴っているので是非ご一読ください。

絶賛採用中ですので少しでもワクワクした人はTwitterでDMください!